共同研究

α線放射線核種であるBismuth-213あるいはAstatine-211を標識した抗CD45抗体を投与したマウスにおける生体内分布および骨髄抑制について
我々は以前、犬のモデルで全身放射療法に代わる造血器幹細胞の前処置として Bismuth-213 (213Bi)を標識した抗CD45抗体を用いた標的放射線療法の可能性について研究した。この前処置により持続した骨髄の生着を認めたが、汎用性の低さ、高いコストや 213Biの短い半減期などの問題から、別のα線放射線核種である Astatine-211 (211At) を同様の用途で検討することした。生体内分布と毒性の研究を 213Biあるいは 211Atと結合させた抗マウスCD45抗体、30F11を用いて行った。マウスに10μgの30F11に2から50μCi、2または40μgの30F11に20μCi 標識した抗体をマウスに投与した。生体内分布の評価では、211At 標識抗体投与後は167 ± 23% から417 ± 109% injected dose/gram (%ID/g)、 213Bi 標識抗体投与後は45 ± 9% から166 ± 11% ID/gと、脾臓に最も高濃度の放射線活性が認められた。211At 標識30F11においてより高濃度の集積が認められたのは、211At の半減期がより長いために、より多くのアイソトープが崩壊前に脾臓に集積しえたためと考えられた。211At は同量の放射線活性では、骨髄抑制はより効果的であった。20または50μCiの 211 Atを投与したマウスでは致死的な骨髄抑制が見られたが、同量の 213Biでは認められなかった。50μCiの 213Biにおいては、可逆的であるが重度の急性肝障害が生じたが、50μCi未満の 213Biや、すべての 211At 投与群では重度の急性肝障害は認めなかった。腎機能障害はいずれの群でも生じなかった。今回のデーターで 211Atを標識した抗CD45 抗体は213Bi 標識抗体と比較して、より少ない量の放射線活性で十分な骨髄抑制、骨髄破壊が、より弱い非血液毒性で認められることがわかった。

悪性リンパ腫に対するRIST:本邦における成人112症例のretrospective survey
1999年から2002年までに行われた成人悪性リンパ腫に対するreduced-intensity stem cell transplantation(RIST)の全国調査を行ったところ112症例が集積された。症例の内訳はindolent type 45例、aggressive typeが58例およびhighly aggressive typeが9例であった。患者年齢の中央値は49歳であった。40例(36%)が自家造血幹細胞移植後の再発例、36例(32%)が放射線療法を施行されていた。RISTレジメンはフルダラビンを基本とするものが95例、低線量の全身放射線照射を基本とするものが6例、他のレジメンが11例であった。急性移植片対宿主病(grade II-IV)の発症率は49%、慢性移植片対宿主病の発症率は59%であった。悪性リンパ腫が進行した症例は18%、悪性リンパ腫進行以外の原因による死亡率は25%であった。観察期間中央値23.9ヶ月において、3年生存率は59%であった。多変量解析を用いて進行に関する危険因子を抽出すると放射線治療歴、中枢神経浸潤およびGVHDの非発症であった。RISTは移植関連死亡を減少させ、GVHDは移植片対リンパ腫効果を誘導した。しかしながら、これらの有益と考えられる事象が本当に患者生存率を改善させうるのか否か、更なる検討が必要である。

急性リンパ性白血病に対するRIST: 33症例の後視方学的検討のretrospective survey
急性リンパ性白血病33症例に対するRISTの有効性を検討した(年齢中央値55歳)。ドナーはHLA一致20例、HLA不意一致5例、非血縁者8例であった。6症例は過去に移植歴を有していた。RIST施行時の状態は13例が第1寛解期、6例が第2寛解期、寛解導入不応例あるいは再発例が14例であった。全例、移植前処置に忍容、白血球の生着が見られた(回復期間中央値12.5日)。急性および慢性移植片対宿主病はそれぞれ45%および64%に生じた。6例がドナーリンパ球輸注を行った(1例が再発に対して予防的に、1例が再発に対して)。9例に移植関連死を生じた(うち6例が移植片対宿主病による死亡)。生存症例の平均経過観察期間は11.6ヶ月(3.5ヶ月〜37.3ヶ月)であった。1年無再発生存率および全生存率はそれぞれ29.8%および39.6ヶ月であった。再発時に移植を行った14例のうち5例が再発なく6ヶ月以上生存している。3年時における疾患進行死亡率ならびに疾患無進行死亡率はそれぞれ50.9%および30.4%であった。これらの結果より急性リンパ性は白血病に対する移植片対白血病効果の存在が考えられた。急性リンパ性白血病に対するRISTは更に検討を加える価値があるものと考えられる。

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