骨髄異形成症候群様の無効造血と骨髄増殖性腫瘍様の過剰な増殖の双方の性格を
併せ持つ症例の存在に対応するためにWHO分類第3版において初めてMDS/MPDのカ テゴリーが設けられました。WHO分類第4版においてMPDがMPNに変更になったために MDS/MPDはMDS/MPNに変更になっております。このグループにはchronic myelomonocytic leukemia(CMML)、atypical chronic myeloid leukemia、BCR- ABL1 negative(aCML)、juvenile myelomonocytic leukemia(JMML)、 myelodysplastic syndrome/myeloproliferative neoplasm, unclassifiable(MDS/MPN -U)の4病型が含まれます。MDS/MPN-Uにはrefractory anemia with ringed sideroblasts associated marked thrombocytosis(PARS-T)が含まれます。MDS/ MPNグループでは特徴的な染色体異常は見られないものの分子遺伝子学的異常が高 頻度に認められます。
1.慢性骨髄単球性白血病
chronic myelomonocytic leukemia(CMML)
(1)診断基準:@遷延する単球増加(1000/μl以上)、APh1染色体陰性もしくはBCR-
ABL陰性、BPDGFRAやPDGFRBの遺伝子再構成を認めない、C末梢血および骨髄に おける芽球(骨髄芽球、単芽球および前単球)比率が20%未満、D1系統以上の細胞に 形態異常を認める、の5項目です。Bについてはt(5;12)(q31-33;p12)を有するCMMLは 好酸球増多を認めることが多く、CMML with eosinophiliaとされていましたが、この染色 体異常によりPDGFRBが関与するETV6-PDGFRBが形成されるため、WHO分類第4版 で新たに設けられたmyeloid and lymphoid neoplasms with eosinophilia and abnormalities of PDGFA, PDGFRB or FGFR1のカテゴリーに分類されます。
(2)形態的所見:末梢血塗抹標本では単球の顆粒形成や核分葉、クロマチンパターンに
異常や顆粒球系細胞において顆粒の異常や低分葉などの形態異常が認められます。 軽度の正球性貧血、巨大血小板の出現もみられます。顆粒球系細胞の形態異常、半数 以上の症例で赤芽球系の形態異常、80%以上の症例では小型巨核球など、巨核球系 にも形態異常を伴います。約30%の症例では骨髄生検において軽度〜中等度の細網 線維の増加が認められます。約20%の症例では未熟なplasmacytoid dendritic cellの 集簇が認められます。単球系の確認にはエステラーゼ染色が使用されます。
(3)染色体:20-40%の症例で染色体異常を認めますが、特徴的な染色体異常は報告さ
れていません。真性多血症、本態性血小板増多症で認められるJAK2V617F変異が少 数の症例で見られる場合があります。
(4)臨床経過:CMMLは@芽球比率末梢血<5%、骨髄<10%であるCMML1とA芽球比
率5%以上20%未満、骨髄10%以上20%未満、アウエル小体(+)のCMML2に分類し ます。これらの2群では平均生存期間、白血病への進行率が有意に異なります(Ref)。
2.非定型慢性骨髄性白血病、BCR-ABL 1陰性
atypical chronic myelocytic leukemia, BCR-ABL1 negative、aCML
(1)診断基準:除外項目としてPDGFRAおよびPDGFRB変異が認められないことが加えら
れております。aCMLは稀な疾患であり、末梢血白血球数の増加(13000/μl以上)があ り、分類上、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球が10%以上認められます。好塩基球増加は 顕著ではなく、単球が増加している場合もありますが、その比率は10%未満であり、芽 球は末梢血、骨髄ともに20%未満と定義されています。形態学的には好中球の顆粒減 少、偽ペルゲル異常、小型巨核球が認められます。
3.骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、分類不能型
myelodysplastic/ myeloproliferative neoplasm, unclassifiable(MDS/MPN, U)
WHO分類第3版において骨髄異形成性/骨髄増殖性疾患(myelodysplastic/
myeloproliferative disease(MDS/MPD))の条件を満たすものの上述したCMML、 aCMLおよびJMML(解説省略)のいずれにも当てはまらない症例をMDS/MPD, unclassifiable(MDS/MPD, U)と定義いたしました。診断基準としては@臨床所見、検査 所見および形態学的にMDSのうちのいずれかの病型と合致すること、A骨髄増殖の所 見を認めること(巨核球の増加を伴った血小板増加(45万/μl以上)もしくは白血球数> 13,000/μl、巨脾)Bde novoであり、MDS、MPN、MDS/MPNのどのカテゴリーにも一 致しないことが項目として挙げられています。またMDSやMPNの既往歴がないこと、化 学療法やサイトカイン治療を受けていないこと、染色体検査ではBCR-ABLは陰性、 PDGFRA、PDGFRBおよびFGFR1の再構成を認めないことが記載されています。また単 独のdel(5q)、t(3;3)(q21;q26)もしくはinv(3)(q21q26)を有する症例も除外されます。
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