造血幹細胞移植を受けられて退院される患者様へ

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造血幹細胞移植を受けられ退院される患者様へ

もくじ
1.はじめに
2.退院後の日常生活について
    3.感染症について
    4.慢性GVHDについて
    5.このようなときはすぐに病院へ連絡しましょう
    6.おわりに
                             
 1.はじめに
 造血幹細胞移植を受けられ、退院を迎える患者様・ご家族の皆様は、今後の生活へ
の希望とともに、様々な不安も抱えておられることと思います。
 退院後の生活を安心して過ごすことができ、社会復帰に向けてスムーズに進んでいか
れますよう、この冊子を参考にしていただければと思います。


 2.退院後の日常生活について
 感染予防のために…
 手洗い・うがい:朝起きた時、外出から帰宅した際、食前・食後、寝る前などに行いまし
ょう。一緒に生活されるご家族の方も、外出より帰宅されたときは行うようにしましょう。
 手洗いの際、使用する石鹸は薬用でも普通のものでも構いません。ただし、菌の繁殖
を防ぐため、以下の注意を守ってください。
固形石鹸⇒石鹸の受け皿は、1日1回よく洗って乾燥させる。
液体石鹸⇒詰め替え用をボトルに注ぎ足すときは、ボトルを一度洗い、よく乾燥させてか
ら行う。

※手洗い後のタオルは、1日1回は必ず交換しましょう。

 歯磨き:入院中にお渡ししました口腔ケアのパンフレットを参考に、引き続き丁寧なブラ
ッシングを心がけ、口内炎予防に努めましょう。
                                
 入浴:熱があっても(38度を超えるような高熱でなければ…)なるべく毎日行い、体の清
潔を保つようにしましょう。どうしても無理な日はあたたかいタオルで体を拭き、おしりは
ウォシュレットを使用するか、下半身のみシャワーを浴びるなどして清潔にしましょう。入
浴後は体が冷えないように注意し、暖かくして過ごしましょう。

 食事:免疫抑制剤内服中は、基本的には入院中にお渡ししました「血液内科治療
中の食事リスト」を参考にしてください。
ご自宅で調理される場合、注意していただきたい点を挙げました。
・調理台⇒水気や食物は洗剤で洗い流し、毎日交換している清潔な台拭きなどでその都
度拭き取っておく。
・調理道具⇒まな板はプラスチック製のものを使用し、週に1回は漂白剤で消毒する。
食器洗い用のスポンジは熱湯で消毒し、月に1回交換する。
食器拭き用のふきんは毎日交換する。
・手洗い⇒調理前だけでなく、生ものを調理した後などは、こまめに手洗いを行う。
・食材⇒新鮮で、清潔な場所で正しく保存されている食材を使用する。
食材は十分に流水で洗い、十分に加熱する。
・調理後⇒できるだけ速やかに(遅くても1〜2時間以内には)食べる。すぐに食べること
ができない時は密閉容器に入れて1時間以内に冷凍してください。
賞味・消費期限の切れているものはもちろんですが、期限内のものでも開封後長時間経
過しているものや、保存容器や缶が変形しているもの、見た目・においなどに異常が見
られるものは口にしないように気を付けましょう。

免疫抑制剤の内服量が多い退院後早期は外食を控えていただき、薬の減量や中止に
合わせて、体調を見ながら、外来担当医とご相談ください。外食の許可が出た場合も、
最初に提供される無料の水や氷、生ものやバイキング形式の店は避け、火の十分通っ
たものを食べるようにしましょう。また、テーブルなどに置いてある、共用の香辛料などの
使用も避けましょう。

  洗濯:普通の洗剤で洗濯してください。
乾燥は、天日干し、乾燥機の使用、どちらでもよいのですが、自宅近くで工事などが行
われているときは、土ぼこりに含まれるカビの胞子が洗濯物に付着したり、日光が十分
に当たらない環境では殺菌効果が不十分となる可能性があります。その際は乾燥機の
使用をおすすめします。

  ご自宅の環境:退院後に過ごされるご自宅の掃除は、ほこりを取り除くことが大切で
す。消毒用アルコールで壁や机などを拭く必要はありません。カーペットは、フローリング
床などに比べて清潔を保ちにくいため、できるだけ避けてください。
寝具については、ベッドマットを消毒したりする必要はありません。布団は天日干しにし、
ベッドカバー・シーツを1週間に1回は交換して洗濯しましょう。

 一緒に生活されるご家族などが、風邪・インフルエンザ・水ぼうそう・麻疹(はしか)・風
疹・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)にかかっているときはできるだけ離れて生活するよ
うにしましょう。特に小さなお子さんがいらっしゃる場合は注意が必要です。また、これら
のウイルス感染症には潜伏期間があります。体調に変化を感じているご家族とは、別の
部屋で過ごすようにしてください。

 インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、免疫力が低下している移植後の患
者様や、そのご家族には接種をすすめています。予防接種を受ける際は外来担当医に
相談してください。

 ペットは家族同様、大切な癒しの存在であると思います。
しかし、ご自宅で飼われている場合、免疫力が低下している患者様にとっては、感染源
となる可能性があります。特に、放し飼いにしている猫、外国産のペットなどは危険性も
高いため、接しないようにしてください。その他の犬などのペットに関しても、飼育環境な
どを担当医と相談の上、許可が下りた場合も、密接に(口をなめられたり、排泄物に触
れたりなど)関わることは避け、接したあとは必ず手洗い・うがいを行うようにしてくださ
い。

 外出時:免疫抑制剤内服中はマスクを必ず着用し、人の多い場所、時間はなるべく避
けるようにしましょう。
工事現場の近くには、カビの胞子が含まれる土ぼこりが多数に舞っているので、マスク
をしていても、できる限り近づかないようにしましょう。
肺への負担を考え、喫煙はもちろんですが、喫煙者の近くで過ごすことは避けましょう。

 自宅での過ごし方
 1日の過ごし方:早寝早起きを心がけ規則正しい生活を送るようにしましょう。
リハビリを兼ね、簡単な家事(例;食事の準備の手伝い、後片
付け・洗濯物をたたむ・掃除機をかけるなど)を体調に合わせて積極的に行い、体を動
かしましょう。ただし、大掃除は避け、掃除機をかける際も、マスクを着用して行うように
しましょう。
      
 運動:移植後の患者様は入院生活による循環機能や筋力の低下のほか、慢性GV
HDによる皮膚硬化や筋肉拘縮などにより、関節が動かしにくくなるなど日常生活に支障
をきたすことになります。
ご家族の方と一緒に近所を散歩したり、関節の曲げ伸ばしなどストレッチを行いましょ
う。距離や時間は初めから無理をせず、体調に合わせて少しずつ増やしていくようにしま
しょう。体を動かした後は十分に休息を取りましょう。

 食生活:栄養が偏らないよう、3食バランスよく食べるよう心がけましょう。しかし、移植
後の患者様は治療中の粘膜障害の影響や、薬剤の副作用による味覚障害などで食べ
たくてもおいしく食べることができない状況がよくあります。その際は無理をせず、少量で
もカロリーの高いものや、食べられるものから食べるようにし、少しずつ量・種類を増や
していくようにしましょう。
また、食事はよく食べられるが運動量が少ない時期は、カロリーオーバーになりやすい
ので、間食を控えるなど工夫をしましょう。
          
 旅行:免疫抑制剤内服中は旅行・銭湯などは避け、体調を見ながら、免疫抑制剤内服
が減量・終了する移植後6ヶ月〜1年以降をめどに近場の日帰り・1泊旅行を外来担当
医と相談しましょう。

 性生活:性機能は治療の影響を受けやすいもののひとつです。男性では勃起障害、射
精障害、女性では膣粘膜の乾燥や拘縮による性交痛・出血など機能的な影響に加え、
移植後の外見上の変化や、性行為による感染や病気への影響などによる不安感・恐怖
感を抱くことも少なくはないと思います。また、精巣機能・卵巣機能への影響による不妊
症に悩まれることもあるかと思います。
いずれにしても自分ひとりでは悩まず、最初の一歩はパートナーとのコミュニケーション
が大切です。
                              
 社会復帰に向けて…
 まずは自宅での生活に慣れることに努めましょう。
免疫抑制剤減量・終了する移植後6ヶ月以降をめどに、外来担当医と相談し、職場や学
校との調整を図るようにしましょう。移植後の患者様が、元の生活に戻るまたは社会復
帰するまでには、おおよそ1年からそれ以上の期間を要すると言われています。周囲の
協力を得ながら、焦らず少しずつ進めていきましょう。

  移植後の副作用、特に外見上の変化により、外出することに気が進まないことも少な
からずあるのではないかと思います。
・皮膚の色素沈着については、時間は要しますが必ず消失します。また、ステロイド剤の
使用による体毛の増加も、薬剤の使用が終了すれば消失していきます。冬場はコートや
マフラー・手袋などを、夏場は吸汗性の高い綿の下着やTシャツなどの上から通気性の
よい長袖のはおりものを着用して外出してみましょう。また、顔や耳などの乾燥による落
屑が気になる時は保湿効果のあるクリームをご使用ください。
・脱毛については、回復まで数ヶ月を要すると言われていますが、必ず生えてきます。髪
の色・質は変わることも多く(初期はやわらかい猫毛でくせのある方が多いようです)、生
え方もふぞろいです。生えそろうまでは、帽子やターバンを使用したり、かつらの着用を
おすすめします。かつらについてのパンフレットは病棟・外来に用意していますので、ご
希望の方は医師、看護師にお尋ねください。

 相談窓口について
専門看護師:外来看護師に声をかけ、相談の希望を伝え予約をとってください
ソーシャルワ−カー:医師・外来看護師に声をかけていただければ、相談の場を手配い
たします。
病院1階の医療相談窓口に行っていただいて相談をすることもできます。
患者会:患者様やご家族様が中心となって活動されており、"市大7HIKARI会"の案内
は、病棟・外来の掲示板にて行っています。メールアドレス:ketunai@hotmail.com

 3.感染症について
 移植後の患者様は、免疫抑制剤の内服などにより、退院を迎えられる時期であって
も、免疫不全状態にあります。好中球の回復により、細菌性・真菌性の感染症は減少し
ますが、かわってウイルス性の感染症が問題となってきます。免疫機能が完全に回復す
るまでには、免疫抑制剤の内服が終了した後でも、数年を要すると言われています。退
院後の生活において、感染症の予防と早期発見は非常に大切なことと言えます。
 少なくとも、1日1回は体温測定を行い、下記の症状を参考に体調に変化を感じたとき
は、すぐに受診するか、病院へ連絡しましょう。
   
 移植後100日頃まで
  サイトメガロウイルス:このウイルスによる感染症としては間質性肺炎が最も注意が必
要です。症状は、発熱・乾いた咳・息苦しさ・呼吸回数の増加などがあります。胃腸炎も
起こりやすく、長く続く吐き気・嘔吐・食欲低下・飲み込みにくさ・腹痛・下痢・血便などの
消化器症状のほか、発熱や胸痛なども見られます。他には、網膜炎、肝炎などの原因に
もなります。予防・早期治療としては、抗ウイルス剤・グロブリン製剤の投与が行われま
す。

  アデノウイルス:このウイルスによる感染症の中で最も起こりやすいのは、出血性膀
胱炎です。排尿時痛・残尿感・血尿などの症状が出現し、放っておくと、大量の出血によ
り尿道がつまって尿が出せなくなったり、そのため腎炎になったりすることもあります。治
療は、抗ウイルス剤を投与したり、尿に血塊が見られるときは、尿道にカテーテルを入
れ、洗い流したりします。

  カリニ原虫:間質性肺炎の原因のひとつであるカリニや細菌による感染予防のた
め、バクタの内服を移植後数ヶ月は続けます。

 移植後100日以降
  水痘・帯状疱疹ウイルス:この時期に最も多い感染症が帯状疱疹です。水疱を伴う発
疹が、神経の走行に沿って皮膚に帯状に現れ、ピリピリとした神経性の痛みがありま
す。また、腸管・肺・肝臓・脳・眼瞼などにも進展・発症することがあり、注意が必要です。
移植前に水疱瘡にかかっていても、移植により、このウイルスに対する免疫は消失する
ため、移植後2年までの間に約3割の患者様に発症する可能性があります。
早期発見し、軽症であれば、多くの場合抗ウイルス剤の内服で悪化を防ぐことができる
といわれていますが、症状によっては入院して点滴治療が必要となります。
また、治癒後も強い痛みが残ることがあり、引き続き治療が行われます。

  麻疹(はしか)・風疹・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ):移植後は、これらの感染症に
対する免疫も失ってしまいます。移植後1〜2年を経過し、免疫が回復されている患者様
においては、外来担当医と相談の上、ワクチンの再接種を受けることが望ましいでしょ
う。

 4.慢性GVHDについて
 感染症と並んで、注意が必要とされる症状が慢性GVHDです。
 移植後早期に現れる急性GVHDとは、その症状も現れる部位も異なってきます。皮膚
症状(皮疹)・消化器症状(下痢)・肝機能障害(黄疸)の3徴候が特徴的であった急性に比
べ、慢性GVHDはゆっくりではありますが多臓器にわたる症状が現れるという特徴があ
ります。現れる時期も様々ですが、移植後60〜100日ころと言われています。主な治
療としては皮膚に限局したものであればステロイド剤外用薬を患部に使用します。全身
に現れる場合は、免疫抑制剤の増量・再開や、ステロイド剤の併用などが行われます。

 皮膚症状
最も現れやすい症状です。かゆみを伴う皮疹で、治療としては皮膚症状のみに限局して
いる場合はステロイド剤軟膏などを使用します。また、色素沈着、皮膚の硬化・萎縮・乾
燥なども起こります。日焼けを避けるため日焼け止めクリームや、乾燥に対しては保湿
効果のあるクリームの使用をおすすめします。

 口腔内症状
唾液腺の分泌不全による口腔内の乾燥、口内炎が出現しやすくなります。また、食道炎
による嚥下障害も現れることがあります。このため、食事が食べにくくなったり、飲み込
みにくくなります。
下記に、比較的食べやすいものの例を挙げました。
・水分の多い果物(柑橘系は刺激になることもあるので気を付けましょう。免疫抑制剤の
濃度に影響するグレープフルーツなども避けましょう)
・スープ、味噌汁
・うどん、そばなどの麺類
・酸味の強いもの(梅干、酢の物など)
・アイスクリーム、プリン、ゼリー

 眼症状
涙腺の分泌不全による眼球乾燥(ドライアイ)、乾性結膜炎、角膜損傷などをきたしやす
くなります。
こまめに点眼を行うことで不快感・違和感は軽減し、角膜損傷の予防になります。
症状の強い方は、人工涙腺を埋め込む手術が行われる場合もあります。

 肝障害
胆汁のうっ滞などをきたしやすくなります。アルコール飲料は、肝機能に影響を与えるの
で、摂取は控えましょう。

 呼吸器障害
閉塞性細気管支炎、特発性(原因の特定できない)間質性肺炎などが現れることがあり
ます。

感染症と同様に、早期発見・早期対応が必要ですが、最も大切なのは予防です。
血中濃度を安定させるため、免疫抑制剤の内服は忘れずに、必ず医師の指示ど
おりの用量・用法で行いましょう。12時間ごとの免疫抑制剤の内服時間は、
退院時や外来ライフスタイルに合ったものに変更してもよいでしょう。

  免疫抑制剤とは…
 造血幹細胞移植後のGVHD予防のため、移植前日より投与開始する薬剤です。最初
は血中濃度が安定しやすい点滴で投与し、消化器症状などがなければ、早ければ移植
後3週間ころに内服薬に切り替えられます。GVHD症状を見ながら徐々に減量し、慢性
GVHDがなければ移植後6ヶ月をめどに中止します。
 通常使用される免疫抑制剤には、移植後決められた日に点滴投与するメトトレキサー
ト(メソトレキセート)や、連日投与されるシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)、タ
クロリムス(プログラフ)があり、治療や患者様の状態に合わせた薬剤を使用していきま
す。これらの薬剤は副作用も強く、過量による副作用の出現や、低用量によるGVHDの
出現それぞれを予防するため、症状の観察と合わせて、血中濃度を定期的に測定し投
与量を調節していきます。
 副作用には、腎障害・肝障害・高血圧・浮腫・低マグネシウム血症・中枢神経障害・嘔
吐・高血糖などがあります。血液・尿検査の結果や症状に合わせて免疫抑制剤の調整
や、副作用症状に対しての治療も行なっていきます。
また、他の薬剤やグレープフルーツなどの果物に含まれる成分で血中濃度が変わりや
すいため、医師の指示以外の薬剤は服用しないでください。免疫抑制剤の内服を忘れて
しまったときには…決められた時間の1〜2時間後ぐらいに気付いた時は、その時にす
ぐに内服してください。
6時間以上経ってから気付いた時は、副作用のことを考慮し、1回分は内服せず、次回
内服で1回分を内服するのがよいでしょう。次回内服時に気付いた時は、2回分内服は
せず、1回分だけ内服してください。
内服を忘れたことは、外来受診時に医師に伝えてください。
どうすればよいか分からない時は、自己判断せず、医師に相談して指示にしたがうよう
にしてください。

  ステロイド剤とは…
 正式には副腎皮質ホルモン剤といい、通称ステロイドホルモン剤とよばれています。副
腎皮質から分泌されるホルモンで、その中の糖質コルチコイドは抗炎症・抗アレルギー・
免疫抑制作用などの生理作用を有します。この作用を利用して、様々な疾患に対して幅
広く使用されています。しかし、多様な作用を有する反面、多様な副作用も有する薬剤で
あり、正しく使用していくことが大切です。その副作用には軽度のものから、生命維持に
関わるものまで多種多様です。
以下に代表的な副作用を挙げました。
・感染症の誘発、増悪        ・骨粗しょう症、無菌性骨頭壊死
・副腎萎縮(続発性副腎皮質機能不全)・消化性潰瘍
・糖尿病の発症、増悪       ・精神神経症状
・緑内障             ・後嚢白内障
・血栓症             ・成長障害
・月経異常            ・心不全
・高血圧             ・浮腫
・不眠              ・食欲亢進
・多毛、?瘡           ・皮膚線条、創傷治癒障害
・筋肉痛、関節痛、筋萎縮、ミオパチー      など

ステロイド剤の内服治療は、これらの副作用症状の出現に注意しながら、行なっていき
ます。
副作用症状を予防するため、胃薬・骨代謝改善薬などの薬剤を使用したり、高血圧に対
して降圧剤の内服や、高血糖に対して一時的にインスリン注射や経口血糖降下剤の内
服が必要になることもあります。

 ステロイド剤内服治療の知識と注意点 
・GVHD症状が改善されたからといって、ご自分の判断で内服をやめないでください。ス
テロイド剤は症状を見ながら少しずつ減量をしていかなければ、GVHD症状が再燃する
だけでなく、急性副腎不全・ステロイド剤離脱症候群が生じます。食欲不振・気分不良・
嘔吐・体重減少・頭痛・発熱・眠気・脱力感・関節痛・筋肉痛や、ひどい時はショックを
起こすこともあります。
・長期間服用していた場合は、副腎機能低下をきたし、慎重に減量していっても離脱(内
服終了)後1年ぐらいは上記の症状が出現する可能性があります。
・体調が悪くて内服ができない時、離脱後上記の症状が出現した時は、病院に連絡し、
医師に相談してください。
・ステロイド剤を朝に(多く)内服するのは、人間の体の日内リズムに合わせているため
です。
 ステロイド剤の内服を忘れてしまったときには…
 毎日内服している場合は、思い出した時にすぐ内服してください。ただし、夜遅い時間
や翌日に気付いた時、1日数回内服している場合や次回まで気付かなかった時は、2回
分内服はせず、1回分だけ内服してください。
 1日おきに内服している場合、その日の午前に気付いた時はすぐに内服し、午後に気
付いた時は本来内服日ではない翌日の朝に内服し、1日置いて次の分を内服してくださ
い。
 内服を忘れたことは、外来受診時に医師に伝えてください。
どうすればよいか分からない時は、自己判断せず、医師に相談して指示にしたがうよう
にしてください。

☆あなたの退院時の免疫抑制剤は       で、
1日2回10時、22時に内服してください。
     ☆あなたの退院時のステロイド剤は       で、
1日 回内服してください。

 5.このようなときはすぐに病院へ連絡しましょう
退院後の生活において、体調に変化を感じた時にどうすればよいのか?とい う不安は
大きいことと思います。異常を感じた時は、我慢したり、放っておかず、まずは病院へ電
話し、医師に相談の上、受診するか、自宅で様子を見るかを判断するようにしましょう。

  *38度を超える発熱
  *長く続く咳・痰、安静にしていてもなくならない息苦しさ
  *下痢・吐き気・腹痛・血便などの消化器症状
  *ピリピリとした痛みを伴う皮疹
  *排尿時痛・残尿感・血尿
  *頭痛・吐き気・めまい・意識がぼーっとするなどの症状
  *1〜2日で急に現れ、広がる皮疹
  *なかなか止まらない出血(鼻血・歯肉出血・怪我など)
                             
 連絡先
平日8時30分〜16時45分:血液内科外来  06−6645−3391
 土日祝・時間外:市大病院時間外受付  06−6645−2121
 電話相談時、診察券にある登録番号(ID番号)が必要となります。
どのような症状が、いつからあるか、それによりどのような問題が生じているかなどをお
聞きしますので、連絡時に余裕があればメモなどにまとめておくのもよいでしょう。
               
また、急を要することではないけど気になって…というようなときは、外来受診の
際でもよいので医師・看護師にご相談ください。

 6.おわりに
 造血幹細胞移植後の患者様に現れる症状やその状態は様々です。そのため、回復の
過程も個々に違いが生じてきます。ご自分の回復が遅すぎるのではないか、など過度に
不安に思ったり、焦ったりすることなく、ご自身の1歩1歩の前進や、患者様同士で互い
の回復を励みにしながら、退院後の生活を送られることを心より願っています。
 ここにある内容がすべてではありませんが、ひとつひとつの問題や不安を解決するの
に参考になれば、と思います。
 疑問、相談したいこと、不安に思うこと、など何かありましたら、いつでも医師、病棟・外
来看護師や、前記しました相談窓口のほうへお気軽にお尋ねください。
 

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