最新文献紹介(抄読会)
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2018年

Outcomes of hematopoietic stem cell transplantation from unmanipulated haploidentical versus matched sibling donor in patients with acute myeloid leukemia in first complete remission with intermediate or high-risk cytogenetics: a study from the Acute Leukemia Working Party of the European Society for Blood and Marrow Transplantation

染色体中間リスクおよび高リスク急性骨髄性白血病患者に対するハプロ移植とHLA一致同胞移植

同種造血幹細胞移植は高リスクまたは中間リスク急性骨髄性白血病(AML)の患者にとって最適な治療法である。HLAの一致した血縁ドナー(MSD)がいない患者では、Haploドナーが選択肢となる。我々は、急性骨髄性白血病患者における初回の完全寛解時に、HaploドナーとMSDとを比較した。2007-2015年の間にhaplo移植あるいはMSDから同種移植を受けた中間リスクおよび高リスクの急性骨髄性白血病患者が含まれた。主要な解析には傾向分析法を用いた(2つのMSD移植を1つのhaplo移植とマッチした)。2654例が同定され(haplo=185、MSD=2469)、中間リスク急性骨髄性白血病2010例(haplo=122、MSD=1888)および高リスク急性骨髄性白血病644例(haplo=63、MSD=581)であった。追跡期間の中央値は30ヶ月であった。多変量解析では、中間リスク急性骨髄性白血病患者において、haplo移植はMSD移植と比較してLeukemia free survival(LFS)が低く、(Hazard ratio 1.74; p<0.01)、全生存率(OS)が低く(HR 1.80;p<0.01)、GvHD free relapse free survival(GRSF)が低く(HR 1.32;p<0.05)、非再発死亡(NRM)が高かった(HR 3.03;p<0.01)。高リスクAMLでは、ドナータイプによるLFS、OSおよびGRFSに差は見られなかった。Haplo移植では、より高いgradeの急性GvHDが高リスクAML(HR 2.20;p<0.01)および中間リスクAML(HR 1.84;p<0.01)の両方において観察された。Haplo移植では、高リスクAMLで再発率の低下傾向が観察された(HR 0.56;p<0.06)。傾向スコア分析で結果を確認した。この結果は、HLA一致血縁ドナーが初回完全寛解の急性骨髄性白血病患者における第一選択であることを強調する一方、細胞遺伝学的に高リスクである急性骨髄性白血病患者においてはhaploドナーとHLA一致血縁ドナーが類似していることを意味する。

平成30年12月17日
谷澤 直

 

Selective inhibition of FLT3 by gilteritinib in relapsed or refractory acute myeloid leukaemia: a multicentre, first-in-human, open-label, phase 1-2 study.

再発/難治性AMLに対するギルテリチニブによるFLT3選択的阻害

背景:FLT3―ITD変異はAMLで一般的に認められる変異で、早期再発および短期生存に関与している。再発/難治性AMLにおいて、FLT3阻害剤の臨床的利益は、治療抵抗変異、特にFLT3―D835の急速な生成を制限することにある。我々は再発/難治性のAML患者において高度に選択的な経口FLT3阻害剤ギルテリチニブを評価することを目的とした。
方法:このPhase 1/2試験では、18歳以上で寛解導入療法に不応性出会ったか、寛解を達成した後に再発した患者が登録された。被験者は、経口ギルテリチニブ(20,40,80,120,200,300,450mg)の1日1回投与を受けるように割り当てられた用量漸増コホートまたは用量拡大コホートのどちらかに登録された。コホートの拡大は安全性/忍容性、相関アッセイにおけるFLT3阻害、および抗白血病活性に基づいて行われた。FLT3変異の存在は選択基準には入っていないが、それぞれの用量で用量拡大コホートを行うために、10人以上のFLT3変異陽性患者を必要とした。120および200mgの用量コホートは、FLT3変異陽性患者のみを含むようにさらに拡大した。安全性と忍容性、およびPK効果が主要な評価項目であった。
結果:2013年9月15日から2015年8月27日までの期間で、再発/難治性AML患者で252例登録され、23人は用量漸増コホートに、229人に用量拡大コホートに登録された。ギルテリチニブによりよい忍容性を示した。最大忍容量は300mg/日であった。450mg/日で投与を受けた3例のうち2例がGrade 3の下痢とトランスアミナーゼ異常を認めた。最も一般的なグレード3/4の有害事象は発熱性好中球減少症(39%)、貧血(24%)、血小板減少(13%)、敗血症(11%)、肺炎(11%)であった。一般的に生じた治療関連毒性は下痢(16%)、疲労感(15%)、AST上昇(13%)、ALT上昇(10%)であった。5%以上に生じた有害事象は、発熱生好中球減少症(31%)、疾患の進行(17%)、敗血症(14%)、肺炎(11%)、急性腎不全(10%)、発熱(8%)、菌血症(6%)、および呼吸不全(6%)であった。95人が死亡し、そのうち7例がTRMと判断された(肺塞栓:200mg、呼吸不全:120mg、喀血:80mg、頭蓋内出血:20mg、VF:120mg、敗血症性ショック:80mg、好中球減少:120mg)、FLT3リン酸化の阻害の増加は、ギルテリチニブの血漿中の濃度が増加するにつれて認められた。In vivoでFLT3のリン酸化阻害は、全ての用量レベルで起こった。1日80mg以上の投与を受けた患者ののほとんどで、day8に90%以上のFLT3リン酸化阻害が認められた。249例中100例(40%)が部分寛解(PR)以上を達成し、19例(8%)が完全寛解(CR)を10例(4%)が不完全な血小板回復を伴う完全寛解(CRp)、46例(18%)が不完全な血液学的回復を伴う完全寛解(CRi)、25例(10%)がPRを達成した。

解釈:ギルテリチニブは良好な安全性プロファイルを有する。FLT3変異陽性の再発・難治性AML患者において一貫してFLT3阻害を示した。これらの知見は、FLT3が再発/難治性AMLにおいて高価値の治療標的であることを示す。今回のデータに基づいて、第3相試験はギルテリチニブの1日用量:120mgで試験が行われる。
平成30年12月10日
森口 慎

 

A risk-adapted approach to treating respiratory syncytial virus and human parainfluenza virus in allogeneic stem cell transplantation recipients with oral ribavirin therapy: A pilot study

同種造血幹細胞移植患者におけるRSウイルスおよびヒトパラインフルエンザウイルスに対する経口リバビリン療法のリスク因子に基づくアプローチ

52件の呼吸器ウイルス感染症(RSI)を発症した同種造血幹細胞移植(allo HSCT)患者の管理のため、臨床条件やリスク因子に基づくプロトコールの適用を報告する。研究期間中2年間の内訳は、RSV 19件、ヒトパラインフスエンザウイルス(HPIV) 29件、両方が4件であった。免疫不全スコア(ISI)≧3、ECIL-4リスク因子≧3個、ウイルス共感染の場合にリスクカテゴリーは高リスク(cat-1)と分類した。残りの症例は低リスク(cat-0)と分類した。臨床的に強いエピソード(CIE:clinically-intense-episode)として、38℃超の発熱・副鼻腔炎・咽頭痛・扁桃炎・RVI時にCRPがベースの2倍以上に上昇、の中から2つ以上の徴候・症状の存在と定義した。全52件中34件(65%)が上気道感染(URTI)に限局し、26件(50%)が経口リバビリン治療を受けた。cat-1は40件中24件(60%)が、cat-0は12件中2件(17%)がリバビリンで治療された(p=0.01)。一方、CIEの25件中17件(68%)が、非CIEの27件中9件(33%)がリバビリンで治療された(p=0.02)。抗ウイルス療法と関係なく、全改善率はURTIで100%、下気道感染で95%であった。ウイルス関連死亡率は4%と低かった。結論として、RSVやHPIVによるRVIを有するallo HSCT患者の治療方法ガイドとして、リスク別プロトコールの使用は実現可能であり、不必要な抗ウイルス療法を制限できるかもしれない。

平成30年12月3日
岡山裕介

 

Tamibarotene maintenance improved relapse-free survival of acute promyelocytic leukemia: a final result of prospective, randomized, JALSG-APL204 study

タミバロテンの維持療法はAPLの無再発生存率を改善する

2004年4月から2010年12月の間に、新たに診断された急性前骨髄球性白血病(APL)の維持療法において、タミバロテンと全トランスレチノイン酸(ATRA)を比較する無作為化試験を実施した。観察期間の中央値は7.3年。ATRAと化学療法を受けた適格患者344人のうち、319人(93%)が完全寛解(CR)を達成。地固め3コースの完了後、2年間3ヶ月ごとに14日間、分子寛解の患者269人が維持療法の無作為化(135人ATRA連日45mg/m2、134人タミバロテン連日6mg/m2)を受けた。Primary endpointはRFS。7年間のRFSは、ATRA群で84%、タミバロテン群で93%(p=0.027、HR=0.44、95%CI 0.21-0.93)。この差は、初期白血球数が10.0x10^9/L以上の高リスク患者で顕著であった(62%対89%、p=0.034)。タミバロテンは、高リスク患者の再発を有意に減少させた。無作為化後の全生存率は差がなかった(96%対97%、p=0.520)。2次悪性腫瘍は11人、grade 3以上の心毒性は3人にみられた。これらの後期合併症は、2群間だ差がなかった。

平成30年11月26日
酒徳一希

 

IRuxolitinib Therapy Followed by Reduced-Intensity Conditioning for Hematopoietic Cell Transplantation for Myelofibrosis: Myeloproliferative Disorders Research Consortium 114 Study

骨髄線維症に対するルキソリチニブ治療後のRIC移植

我々は2段階Simon Phase2試験でMF患者においてRUX投与後にRIC移植を行い、その可能性を評価した。目的としては既報告であるMPD-RC101試験と比べてGFやNRMの発症率が減らせるかを評価した。RD群およびURD群においてそれぞれ11人登録を行う計画を立てたが、RD群で3人のFailure(Day100までのGFあるいは死亡)、URD群で6人のFailureが出た時点で試験は中止とした。21人の患者が登録され、RD群が7人、URD群が14人であった。RD群は2段階目に進むための基準に合致しなかった。URD群は2段階目に進むための基準に合致したが、有意な数のFailureがあり、症例集積が不良であったことから中止した。全19人の患者で、RUXは特に有害事象なしに中止することができ、9人が症状を明らかに改善することができた。24ヶ月時点での累積のGF、NRM、aGVHD、cGVHDはそれぞれ16、28、64、76%であった。ITT解析にもとづいて、2年のOSはRD群が61%、URD群が70%であった。RUXはMF患者の移植前の治療として検討することができ、移植前の減量戦略は安全で症状をよくしたうえで前処置を開始することができた。しかしながら、GFやNRMは変わらなかった。

平成30年11月19日
南野 智

 

Induction chemotherapy followed by allogeneic HCT versus upfront allogeneic HCT for advanced myelodysplastic syndrome: a propensity score matched analysis

進行期MDSに対する寛解導入療法後同種移植とupfront同種移植:プロペンシティスコア解析

進行期MDSの患者では、移植後再発を減らすため、移植前に腫瘍量を減らすためにAMLタイプの寛解導入療法が試みられてきているが、その意義は不明である。我々は、2001–2016年に進行期MDSで同種移植を受けた605人の成人患者の日本の登録データを用いて、寛解導入療法を経て同種移植を行った患者とupfrontに同種移植を行った患者の移植後再発について比較した。プロペンシティースコアマッチングにより各コホート230人を選んで解析。両群間でOS、NRMは有意差なし。再発の累積発症率は、寛解導入療法を行った患者の方が有意に高かった。サブグループ解析において、upfront HCTは予後不良染色体、診断時IPSS高値、RIC患者で寛解導入療法を行った患者の再発率が有意に高かった。この結果は、進行期MDS成人患者では、HCT前のAMLタイプの寛解導入療法は移植後再発および生存を改善しないことを示唆する。予後不良染色体をもつ患者ではupfront HCTは望ましい。

平成30年11月12日
中根孝彦

 

Single Nucleotide Polymorphisms in CD40L Predict Endothelial Complications and Mortality After Allogeneic Stem-Cell Transplantations

進行期または再発・難治性ENKLの管理:造血幹細胞と化学療法のアウトカムの解析

Purpose
内皮の脆弱性は同種幹細胞移植(alloSCT, allogeneic stem cell transplantation)後の合併症の潜在的リスク因子である。CD40/CD40 ligand (CD40L) axisは、炎症性
疾患に寄与し、活性化している内皮細胞で発現が上昇しており、この事は、alloSCT生物学において、ある役割を果たしていることを示唆する。本研究では、我々は、alloSCT患者において、CD40L geneのsingle nucleotide polymorphisms (SNPs)を調べた。
Patients and Methods
スタチン製剤を用いた内皮予防(SEP, statin-based endothelial prophylaxis)を受けていない294名のalloSCT患者において、3つのCD40L SNPs (rs3092920, rs309295
2, rs3092936)と、移植関連微小血管障害(TA-TMA, transplant-associated thrombotic microangiopathy)、全非再発死亡(NRM, nonrelapse mortality)、急性GVHD(
graft-versus-host disease)後のNRM、との関連について解析された。次に、有意なgenotypeは、すでに知られているトロンボモジュリン(THBD)遺伝子多型とあわせて、さらに検討された。結果は、SEPを受けていない独立したコホート、及びSEPを受けている追加の344名で検証された。
Results
rs3092936 CC/CT genotypeは、TA-TMA(P = .001)、全NRM(P = .03)、急性GVHD後NRM(P = .01)のリスク上昇と関連があった。rs3092936 CC/CT genotypeは、高リスクTHBD SNPsと、大部分が互いに排反であった。CD40LとTHBD SNPsは、全生存(OS, overall survival)低下、全NRMを、trainingコホート(OS, P = .04; NRM, P < .001)、及びvalidationコホート(OS, P = .01; NRM, P = .01)で同程度予測した。対照的に、SEPは完全に高リスクCD40LとTHBD SNPsの影響を排除した(P = .40)。
Conclusion
内皮合併症のリスク増加は患者ゲノムの遺伝子マーカーによりalloSCT前に予測できる可能性がある。SEPを受けた患者における死亡リスクの正常化は、高リスクgenotypesの負の効果を打ち消せる方法を示唆しており、更なる臨床での検証が必要であるる。

平成30年11月5日
康 秀男

 

Management of Advanced and Relapsed/Refractory Extranodal Natural Killer T-Cell Lymphoma: An Analysis of Stem Cell Transplantation and Chemotherapy Outcomes

進行期または再発・難治性ENKLの管理:造血幹細胞と化学療法のアウトカムの解析

我々は主に進行期または再発・難治性節外性NK・Tリンパ腫(ENKL)の非アジア人のコホートを報告する。我々の結果では、すべての病期で長期の疾患コントロールを得るためにはCRの達成が必須であった。SMILEレジメンは再発・難治症例でCRを達成するのに有効であった。自家移植はCRを達成した患者で強く推奨され、同種移植はCRとならなかった患者で考慮される。
背景:ENKLはまれなリンパ腫であり、米国ではT細胞性非ホジキンリンパ腫の約5−10%を占める。Stage III-IVや再発・難治ENKLは積極的な化学療法や幹細胞移植にも関わらず予後不良である。我々は進行期および再発・難治ENKLの主に非アジア人患者37人の化学療法および幹細胞移植の管理についてのレビューを行った。
患者と方法:MDアンダーソンがんセンターで2000–2014年に治療を受けたstageIII-IVまたは再発・難治ENKL患者の臨床アウトカムを評価した。次に、ENKL患者の自家または同種移植の臨床アウトカムを集め、評価した。
結果:全移植患者の1年OSおよびPFSは73%と45%、3年OSとPFSは30%と19%であった.。SMILE療法は、CHOP療法に比べてCRを維持するのにより効果的であった(83%vs17%)。CRの達成のみがOS(HR 0.245)およびPFS(HR 0.072)に関与していた。

結論:我々の研究では進行期のRNKL患者ではCRの達成が不可欠であり、全患者で自家移植が望ましいと思われた。SMILEベースの化学療法はCRを達成するのに有効であると思われ、また、効果的なサルベージ療法であると考えられる。CR1患者では自家移植の施行が強く推奨され、さらにCR2患者では必ず施行するべきである。難治患者では同種移植を考慮すべきである。
平成30年10月29日
田垣内優美

 

Competing-risk outcomes after hematopoietic stem cell transplantation from the perspective of time-dependent effects

時間依存性効果の観点からの造血幹細胞移植後の競合リスクアウトカム

造血幹細胞移植の成功は複数の因子によって決定される。時間依存性効果を示す共変量によってさらに複雑になっている。我々は時間依存性手法を用いて競合リスクアウトカムに対する各予測因子の影響を評価した。吾々は14,951例の初回同種移植が実施された成人血液悪性腫瘍患者を解析した。我々は無病生存率(DFS)や全生存率(OS)といった競合エンドポイントを競合リスクセッティングへ拡大した。DFSは再発と非再発死亡(NRM)に分けられた。OSは移植関連死亡(TRM)、“その他の原因による死亡”、“不明な原因による死亡”に分けられた。時間依存性効果の観点で、我々は共変量特異的カットポイントの前後で推定値を計算した。強度減弱前処置を受けた患者は骨髄破壊的前処置を受けた患者と比較して一貫して再発リスクが高かった。NRMでは、強度減弱前処置を受けた患者は死亡リスクが減少したのだが、この効果は移植後4ヶ月以内のみで観察され(HR0.76, p<0.001)、その他は観察されなかった。幹細胞ソースはTRM(移植後1年以内:HR0.75, p<0.01、移植後1年以後:HR1.47, p=0.002)とNRM(移植後8ヶ月以内:HR0.75, p<0.001、移植後8ヶ月以後:HR1.38, p<0.001)の両方に対して時間依存性効果を示した。Karnofsky performance score(KPS)がpoorな患者(<80)は移植後4ヶ月以内ですべてのエンドポイントリスクが著しく高かった。OSやDFSに対する競合リスク解析は幹細胞ソースのように移植後の早期と後期で異なるベクトルを持つ効果の分析を可能にする。この情報は治療選択におけるリスク評価と患者の個別性に基づいて治療法を提案する際に有益かもしれない。

平成30年10月22日
井戸健太郎

 

Pre-transplant ferritin, albumin and haemoglobin are predictive of survival outcome independent of disease risk index following allogeneic stem cell transplantation

移植後フェリチン、アルブミンおよびヘモグロビンは、disease risk indexと独立して同種造血幹細胞移植後の生命予後を予測する

予後バイオマーカーは同種造血幹細胞移植において生存及び再発転帰を予測するに有用である。我々は予後スコアリングシステムを開発した、バイオマーカーを組み込み、造血幹細胞移植にその重要性を検証することでdisease risk index(DRI)の予測力を高めた。全生存率(OS)および非再発死亡(NRM)を競合因子とした再発リスクを評価した。2000年から2013年までの間に単施設で同種造血幹細胞移植を受けた造血器悪性腫瘍患者602人を後方視的に検討した。多変量解析でOS予測の移植前因子は血清フェリチン>1000μg /L(HR1.94, 95%CI:1.44-2.60)、Hb<100g/L(HR1.71, 95%CI: 1.27-2.30)およびアルブミン30g/L(HR2.65、95%CI:1.30-5.40)であった。DRIと組み合せて、これらのバイオマーカーはHarrell's C統計量を改善した。(excluding biomarkers: C=0.60, 95% CI: 0.57-0.64; with biomarkers: C=0.65, 95% CI: 0.62-0.69, P<0.001)

4個の予後グループが移植前の時点で得られた。Group 1 (Scores 0-1, n=180, HR=1 (ref)), Group 2 (Scores 2-5, n=298, HR 2.7, 95% CI: 1.8-3.9), Group 3 (Scores 6-7, n=87, HR 4.5, 95% CI: 3.0-6.9) and Group 4 (scores 8-10, n=9, HR 13.4, 95% CI: 5.9-30.2)。これらの予後モデルはまた、再発およびNRMを予測し、移植後100日、12ヶ月、24ヶ月に有効であった
平成30年10月15日
原田尚憲

 

Imaging of subclinical haemopoiesis after stem-cell transplantation in patients with haematological malignancies: a prospective pilot study

造血器悪性腫瘍患者における造血幹細胞移植後のサブクリニカルな造血のイメージング

<Background>
造血幹細胞移植(HSCT)は、造血幹細胞の静脈注入前にホストの造血を根絶させる。人において、移植後の細胞回復経路を研究することは、非造血状態での介入というリスクのために困難であった。我々は、同種HSCT中の18F–フルオロチミジン(18F-FLT)イメージング検査が安全かどうかを調査し、HSCT後の早期細胞増殖の視覚化および細胞生着のパターン検出を可能にした。
<Methods>
適格患者は18ー55歳であり、高リスクの血液悪性腫瘍を有していた。すべての患者は骨髄破壊的前処置後にHSCTを受けた。主要エンドポイントは、18F-FLT PETまたはCTを用いたHSCT後のサブクリニカルな早期正嫡の検出であった。HSCTの1日前、5または9日後、28日後、および1年後に検査を行った。
<Findings>
2014年4月1日から2015年12月31日の間に、23人の患者が登録され毒性について評価された。18F-FLTに関連した有害事象や生着遅延は認められなかった。18F-FLT検査は、幹細胞輸注5日以内にサブクリニカルな骨髄回復を客観的に同定した。これは、生着が臨床的に明らかになる20日前であった。HSCT前の骨髄破壊的前処置時とサブクリニカルな幹細胞回復時との間で、18F-FLT強度は有意に異なった(p=0.00031)。18F-FLTの体内分布は、これまで知られることのなかった、胎児の個体発生を反映するin vivoでの造血回復経路を明らかにした。
<Interpretation>
18F-FLTは、人におけるサブクリニカルな骨髄回復の定量化および追跡を可能にし、HCST後の幹細胞回復という生物学に新たな洞察を明らかにした。

平成30年10月2日
岡村浩史

 

Higher levels of free plasma mitochondrial DNA are associated with the onset of chronic GvHD

慢性GVHD発症と血漿遊離ミトコンドリアDNA増加の関連

トル様受容体(TLR)–9反応性B細胞は、慢性全身型GVHDの発症に関与しているとされている。我々は、血漿中のミトコンドリアDNA(mtDNA)(TLR9のアゴニストと考えられている)量が多いと、慢性GVHDの発症に結びつくという仮説を立てた。慢性GVHD合併・非合併例双方を含む39例の成人同種移植後症例における血漿遊離型のmtDNA量を測定した。mtDNAを血漿中より分離し、PCR法で定量した。典型的なTLR9アゴニストとして知られているCpG・DNAに対するB細胞の反応や、過去に同定されている慢性GVHDのバイオマーカーと、mtDNAレベルの相関を調べた。血漿遊離型mtDNA量は、慢性GVHD非合併の症例において、通常の成人症例よりも上昇していた。慢性GVHDの発症により、移植後6ヶ月時点の対象群と比較して、血漿遊離型mtDNA量が有意に増加していた(3080±1586 対 1834±1435コピー/μL:p=0.02)。移植後のmtDNA量は、CpG・DNAに対するB細胞の反応やその他既知の慢性GVHDのバイオマーカーと相関していた:CXCL10(p=0.003)、ICAM−1(p=0.007)、CXCL9(p=0.03)、sCD25(p=0.05)、sBAFF(p=0.05)及びCD 21lowB細胞の割合、慢性GVHD症例において、血漿中の遊離型mtDNA量は増加しており、TLR9発現B細胞への内因性刺激を反映している可能性がある。

平成30年9月10日
林 哲哉

 

Myeloablative and reduced-intensity conditioning in HLA-haploidentical peripheral blood stem cell transplantation using post-transplant cyclophosphamide

PTCYを用いたハプロPBSCT:MACとRIC

筆者らは、移植後エンドキサンを用いたHLA半合致・末梢血造血幹細胞移植(PTCyハプロPB)の安全性・有効性を検証するため、2種類の多施設前向きphaseUstudyを設計した。骨髄破壊的前処置(MAC)50例と強度減弱前処置(RIC)77例だった。主要評価項目である、1年時のEvent-free suvrvial(EFS)はMAC64%、RIC43%で、好中球生着はそれぞれ98%、94%だった。gradeU—W・V—WのaGVHDはMACで18%・8%、RICで14%・5%だった。移植後2年時の全grade・moderate—severe cGVHDはMACで36%・20%に対し、RICで27%・20%だった。2年時の全生存率(OS)・EFS・無病再発死亡率(NRM)・再発率は、それぞれMACで68%・54%・10%・36%、RICで44%・35%・20%・45%であった。注目すべき事として、2年時に再発のない生存者の内、MAC83%、RIC86%の患者が免疫抑制剤を中止できていた。これらの結果から、成人の血液悪性腫瘍に対して、PTCyハプロPBは、MAC・RIC共に有効な選択枝と考えられる。

平成30年9月3日
中嶋康博

 

Dyserythropoiesis in the diagnosis of the myelodysplastic syndromes and other myeloid neoplasms: problem areas

MDSや骨髄系腫瘍の診断における赤芽球異形成:改善すべき点

MDS、または赤芽球異形成を伴うAML疑い例で、異形成形態の意義について、20名の骨髄(1名あたり赤芽球100個)の電子的画像を用いて評価が行われた。11名は骨髄系
腫瘍、6名は赤芽球異形成をもたらす他の疾患、3名は健常コントロール。経験値の高い血液または血液病理の7名の専門家によって、診断をマスクして個別に評価された。検討の結果、WHO分類に記載されている赤血球系の異形成については妥当であった(とはいえ、核崩壊は稀にしかみられず腫瘍診断特異性に欠け、多核や巨赤芽球様変化はしばしばみられるが特異性は欠く)。異形成の同定については研究者過半数により同意が得られた細胞が多かった。それでも赤芽球系形態のみではMDSの信頼出来る診断は得られなかった。赤血球異形成の評価は、MDSと誤診可能性のある疾患や状態を常に意識しながら、臨床病理学的特徴についての完全な知識と共に行われなければならない。鉄染色が必須であり、鉄芽球のMDSは鉄染色なしではMDSと認識できないかもしれない。

平成30年8月27日
中前美佳

 

A case of me: clinical cancer sequencing and the future of precision medicine

私のケース:がんシーケンシングとプレシジョン・メディシの将来

この招聘論文で、診療においてがんシーケンシングとプレシジョン・メディシンがいかにに中心的で鍵となるかを、ALL患者として私の経験が示していることを詳細に述べたい。

平成30年8月20日
中前博久

 

Feasibility of allogeneic stem-cell transplantation after azacitidine bridge in higher-risk myelodysplastic syndromes and low blast count acute myeloid leukemia: results of the BMT-AZA prospective study

高リスクMDSおよび低芽球比率急性骨髄性白血病に対するアザシチジン治療後の同種移植

背景:同種造血幹細胞移植(HSCT)は骨髄異形成症候群において唯一治癒可能な治療法である。アザシチジン(AZA)をHSCT前に先行投与する症例が増えてきているが、ヨーロッパではHSCT不適格者にのみ使用されている。
患者背景・方法:70名のMDS、19名のAML、8例のCMMLを対象にAZA治療後のHSCTの将来的な可能性を検討するphase IIの多施設前向き試験を行った。中央値は4サイクル(1−11サイクル)後、24%が完全寛解(CR)、14%が部分寛解(PR)、8%が血液学的改善(HI)、32%が不変(SD)、22%が疾患増悪(PD)を認めた。10名では4サイクル投与前に治療を中断し、うち9名は有害事象のためであった。
結果:HSCドナーでは73名で同定され、実際HSCTが施行されたのは54名(ドナー全体の74%)であった。主な原因として9名はドナー不在、12名は有害事象、16名がPDのためであった。登録から追跡期間中央値は20.5ヶ月で、AZAへの反応性は唯一の独立した予後因子であった。ベースライン評価と比較して、AZA治療はHSCTの併存疾患へ影響を与えず、HCT-CIは62%の患者で変わらず、23%で悪化し、15%は改善を示した。
結論:この研究はAZA治療後の高リスクMDS/AML/CMML-2患者の大半に対してHSCTは実現可能であることを示した。非血縁マッチドナーはドナー細胞として最もよく用いられるので、診断からHSCTドナー探しのつなぎとしてAZAブリッジングできるだろう。このデータは高リスクMDS患者において、HSCT前に強化化学療法を行うよりもAZAを先行する方がより良い選択であることを示す。

平成30年8月13日
岡山裕介

 

Ponatinib efficacy and safety in Philadelphia chromosome-positive leukemia: final 5-year results of the phase 2 PACE trial

フィラデルフィア染色体陽性白血病におけるポナチニブの有効性と安全性:PACE試験5年目の結果

ポナチニブは、野生型及びBCR-ABL1T315Iを含む変異型BCR-ABL1に対して強力な活性を有する。主軸となる第2相Ponatinib Ph+ALL and CML Evaluation(PACE)試験では、ダサチニブまたはニロチニブに耐性/不耐用またはBCR-ABL1T315Iを持つCML、またはPh+ALL患者449例で、ポナチニブ1日1回45mgで開始し有効性と安全性を評価した。この解析はCP-CML患者(n = 270)に焦点を当て、追跡期間中央値は56.8ヶ月であった。評価可能な267例中、MCyR、MMR、4.5logMRの到達率は60%、40%、24%であり、反応がみられた患者のうち、MCyRを5年間維持する確率は82%であった。動脈閉塞事象(AOE)のリスクを低減するために、2013年10月に投与量の減量が実施され、MCyRまたはMMRを達成したCP-CML患者の90%以上が、選択的減量後40ヶ月効果を維持した。推定5年OSは73%であった。CP-CML患者で最も一般的な治療中の有害事象は発疹(47%)、腹痛(46%)、血小板減少(46%)、頭痛(43%)、乾燥(42%)、便秘 (41%)であった。CP-CML患者におけるAOEの累積発生率は時間経過と共に31%まで増加したが、新たなAOEの曝露調整発生率は時間とともに増加しなかった(1年、5年で100患者年あたり15.8および4.9)。これらの最終的なPACEの結果は、ポナチニブが濃厚に治療されたCP-CML患者において、減量にかかわらず、持続的で臨床的に意味のある効果が得られることを示している。この試験は、www.clinicaltrials.govに#NCT01207440として登録されている。

平成30年8月6日
廣瀬朝生

 

Cryopreserved CD34+ Cell Dose, but Not Total Nucleated Cell Dose, Influences Hematopoietic Recovery and Extensive Chronic Graft-versus-Host Disease after Single-Unit Cord Blood Transplantation in Adult Patients

成人における単一臍帯血ユニットによる移植において、凍結保存された全細胞数ではなく、CD34+細胞量が造血回復および全身性慢性GVHDに関与する

単一の臍帯血ユニットにおける凍結保存した全有核細胞(TNC)の投与量が少ないと成人での単一の臍帯血移植(CBT)後の生着不全、死亡率が高くなることが示されている。臍帯血バンクはTNC、CD34+細胞、CFU–GMなどの凍結保存細胞用量の情報を提供しているが、成人における単一の臍帯血移植後の生着および結果における各細胞用量の影響ははっきりしないままである。1998年から2016年の間に、我々の機関の261人の成人患者について306のCBTの結果を後方視的に分析した。年齢の中央値は43歳(範囲16–68歳)、実際の体重中央値(ABW)は56.2kg(範囲36.2-104.0kg)、理想体重中央値(IBW)は62.3kg(範囲39.7-81.3kg)、TNC中央値は2.46x107/ABW kg(範囲1.07-5.69)、CD 34+細胞の中央値は0.91x105/ABW kg(範囲0.15-7.75)であり、CFU–GM中央値は24.46x103/ABW kg(範囲0.04-121.81)であった。生着を達成した患者の中で、好中球、血小板および赤血球の生着速度は、ABW、IBWの両方においてCD34+細胞用量と有意に相関したが、TNCおよびCFU-GM用量とは相関しなかった。多変量解析では、慢性GVHDの発生率はABWとIBWの両方において多くのCD34+細胞用量を受けた患者で有意に高かったにも関わらず、生存率、移植関連死亡率および再発と関連するデータはなかった。
結論として、凍結保存されたCD34+細胞量は、CBT後の造血回復および全身性慢性GVHDの最も良い予後因子であった。凍結保存されたCD34+細胞の用量は、成人の単一ユニットでのCBTにおける選択基準に使用されるべきである。

平成30年7月30日
森口 慎

 

The Impact of Splenectomy in Myelofibrosis Patients before Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation

骨髄線維症における同種造血幹細胞移植前の摘脾の効果

骨髄線維症(MF)を有する患者において、移植前脾摘出を行うことは、造血回復を改善するものの、重度の合併症を招く可能性があるため、議論の余地がある。我々は移植前に摘脾を施行した39人の患者を含む、85人のMF患者データを遡及的に分析した。大多数の患者は原発性骨髄繊維症(78%)であり、高リスク(84%、DIPSS 2以上)、HLA適合血縁ドナー(56%)からRICレジメンで移植を受けた(82%)。摘脾患者の半数は外科手術または術後合併症を認め、最も多かったものは血栓症および出血であった。Coxモデルを用いた調整後、移植前脾摘出は非再発死亡率または移植後再発とは関連せず、全生存期間(OS)および無イベント生存期間(EFS)を改善した。我々は、巨脾を有する患者の一部は、移植後の結果に有害な影響を与えることなく、移植前脾摘出術を受ける可能性があると結論付ける。

平成30年7月23日
谷澤 直

 

Ultrasonographic evaluation of gastrointestinal graft-versus-host disease after hematopoietic stem cell transplantation

造血幹細胞移植後の消化管GVHDの超音波検査による評価

消化管GVHDは同種移植後に生じる主要な致命的合併症である。この研究では消化管GVHDの評価とモニタリングに超音波検査(US)が有用かどうか検討した。81例においてUSで消化管を評価した。USでは43人が陽性(11人が偽陽性)、38人が陰性であった。消化管GVHDの診断に対するUSについて感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率はそれぞれ100%、78%、74%、100%であった。消化管GVHD患者では回腸の壁肥厚が最も頻度が高かった。消化管GVHDの重症度と粘膜内側のlowエコー層の壁厚、腸間膜脂肪織のエコー輝度やドプラーシグナルの強さは相関した。US所見を4つのグレードへ分類したところ、それらのグレードと消化管GVHDのステージは明らかな相関がみられた。消化管GVHDの治療開始後、臨床症状の改善とともにUS所見は改善した。消化管GVHDの範囲や重症度の確認や治療反応性をみる上で、USは効果的で非侵襲的な効率の良い手法かもしれない。

平成30年7月9日
酒徳一希

 

Ponatinib efficacy and safety in Philadelphia chromosome-positive leukemia: final 5-year results of the phase 2 PACE trial

フィラデルフィア染色体陽性白血病におけるポナチニブの有効性と安全性:PACE試験5年目の結果

ポナチニブはBCR-ABL1 T315I変異を含む変異BCR-ABL1や変異のないBCR-ABL1に対する活性をもつ。その重要なPhase 2試験であるPACE試験に、T315I変異をもつあるいは、ダサチニブあるいはニロチニブに対して不耐用あるいは治療抵抗性のCMLおよびPhALLの449人の患者に対して45mg /日の初期投与量でポナチニブの効果と安全性を評価した。この解析はフォローアップ中央値56.8ヶ月のCP-CML患者(n=270人)に焦点を当てた。267の評価可能な患者のうち、60%、40%、24%がMCyR、MMR、MR4.5をそれぞれ達成した。5年間MCyRを維持できていた患者は奏効者の82%であった。2013年10月から動脈性の閉塞性イベントを減らすために投与量の減量を実施されたが、MCyRやMMRを達成CP-CMLの90%以上が投与量を減量ごも反応を維持した。5年のOSは73%であった。CP-CML患者においてAEは、皮疹(47%)、腹痛(46)、血小板減少(46)、頭痛(43)、皮膚乾燥(42)、便秘(41)であった。累積の動脈性の血管イベントは31%まで増加し、新規発症の動脈閉塞性イベントの暴露調整罹患率は経時的には増加しなかった(1年時および5年時で15.8 vs 4.9 per 100人年法であった)。これらの最終的なPACE試験の結果より、この前治療として複数の治療がなされた患者対象群において、投与量の減量に関係なく、ポナチニブは継続的に臨床的な意義のある反応をもたらす。

平成30年7月2日
南野 智

 

Measurable Residual Disease at Induction Redefines Partial Response in Acute Myeloid Leukemia and Stratifies Outcomes in Patients at Standard Risk Without NPM1 Mutations

NPM1変異以外の標準リスク急性骨髄性白血病においてマルチパラメータFCMを用いたMRDは初回寛解導入療法後のPRの定義を追加することで予後の層別化を改善しうる

Purpose:我々は、NPM-1野生型の標準リスクを含むAMLの各リスト群に対し、どの程度予測価値があるかを評価するために、寛解導入療法に対する治療反応評価として異なった基準を導入し、各寛解導入療法後の測定可能または微少残存病変(MRD)の予後への影響につき検討した。
Methods:NCRI AML17試験の一部として、2450人の若年成人のAMLまたは高リスクMDS患者を前向きにマルチパラメータFCMを用いたMRD(MCF-MRD)で評価した。1コース施行後(C1)、治療反応は、病変残存(RD)、部分寛解(PR)、CR、CRi(好中球数<1000 or 血小板数<100,000)に分類され、CRまたはCRiではMFC-MRD測定によりMRD+およびMRD-に再分類された。FLT3 ITD正常かつNPM1正常を含む、高リスクでない患者は再度DNR/AraC療法を受け、一方高リスク因子持つ患者ではC2は強化された。
Results:1)C1後、PRおよびMRD+の生命予後は、特に予後良好−中間群で同等であった(5yr OS:RD 27%、PR 46%、MRD+ 51%、MRD- 70%、p<0.01)。他の因子で調整した解析でもC1でのRDとPR/MRD+での生存の差は確認できたが、PRとMRD+群では確認できず。
2)MRD+群においてはC1後のCRiはCRと比べOSが悪かった(OS:CRi 19%、CR 45%:p=0.01)。この結果はC2後でも同様。
3)C2でのMCF-MRDの状況の予後に対する影響は、C1での反応で補正しても有意なままであった(再発に対するHR:1.88(1.50-2.36、p<0.001)、OSに対するHR:1.77(1.41-2.22、p=0.003))。
4)層別化解析において予後不良群の患者においてもMRD陽性の意義は同様の傾向のようであった。
5)NPM1野生型の標準リスク患者では、C2でのMRD+は予後不良と有意に関連していた(OS:MRD+ vs MRD-:33% vs 63%、p=0.003、再発率:MRD 0.1%以上陽性例では89%)。
6)移植の有益性はC2後MRD-患者よりもMRD+患者でより顕著であった(MRD+:HR 0.72(95%CI:0.31-1.69)、MRD-:HR 1.68(95%CI:0.75-3.85)、交互作用に対する(p=0.16)。

Conclusion:MFC-MRDは初回寛解導入療法後、PRを定義を追加することで予後の層別化を改善しうる。また、NPM1野生型の標準リスク患者で、CR1で移植するメリットのある予後不良な予後を持つものを予測するのに役立ちうる。
平成30年6月25日
中根孝彦

 

Serum and Extracellular Vesicle MicroRNAs miR-423, miR-199, and miR-93* As Biomarkers for Acute Graft-versus-Host Disease

急性GVHDのバイオマーカーとしての血清および細胞外小胞microRNA (miR-423、miR-199、miR-93*)

Acute graft-versus-host disease (aGVHD) は、造血幹細胞移植 (hematopoietic stem cell transplantation, HSCT) の有害事象の主要原因であり、20-50%と高率に発症する。その発症と重症度を予測する新規の非侵襲的検査は、予防法を改善し、発症を低下させる可能性がある。血中microRNAs (miRNAs) miR-423、miR-199、miR-93*、miR-377は、HSCT後患者血漿において、aGVHDと関連することが報告されているが、validationが不足しており、細胞外小胞 (extracellular vesicles, EVs) 内のこれらmiRNAsの発現についてはこれまで検討されていない。本研究は、HSCT後day14 (D14) 患者サンプル (n = 81)から成るprognostic cohortを利用して、aGVHDにおいて、miR-423 (p < 0.001)、miR-199 (p = 0.04)、miR-93* (p < 0.001)、miR-377 (p = 0.03)の血清中での発現上昇を再現した。発現はaGVHD重症度とも関連していた。independent cohort (n = 65) におけるaGVHD診断時の解析で、aGVHD発症時に、miR-423 (p =0.02)、miR-199 (p = 0.007)、miR-93* (p = 0.004) の高発現を確認した。HSCT早期の連続ポイント (pre-HSCT to D28) での発現パターン解析では、全移植患者において、HSCT後D7でmiRNAは上昇していた。血清EVs中における (n = 15) miRNA発現の新規の検討では、miR-423 (p = 0.09)、miR-199 (p = 0.008)、miR-93* (p = 0.001)はaGVHDを後に発症した患者においてD14では低値であり、この事はmiR-423 (p = 0.02)、miR-199 (p = 0.04) (n = 47) で再現された。血清と血中EVsの比較において、EV分画において、aGVHD非発症患者のD14でmiR-423 (p = 0.03)、miR-199 (p = 0.009)、miR-93* (p = 0.002) は高発現を認めた。研究結果は、血中miR-423、miR-199、miR-93*のaGVHD診断と予後のバイオマーカーとしての可能性を実証している。EVsがaGVHDの病因に関連している可能性を示唆している。

平成30年6月11日
康 秀男

 

EASIX in patients with acute graft-versus-host disease: a retrospective cohort analysis

骨髄不全(重症再生不良性貧血)患者における日血縁造血幹細胞移植後のドナーテロメア長と死因

以前の研究で長いドナー白血球のテロメア長(TL)は重症再生不良性貧血患者(SAA
)の造血幹細胞移植(HCT)後の生存の改善に関連することが示された。この研究の目的は細胞特異的白血球TLがHCT後の死因に関連するか否かを同定することであった。我々はFCMとFISHを用いて全ドナー白血球サブセット(ナイーブT細胞(CD 45RA+CD20−)、メモリーT細胞(CD 45RA−CD20−)、NK細胞(CD 45RA+CD 57+)、B細胞(CD 45RA+CD20+)のTLを測定した。原因特異的死亡解析には、競合リスク生存回帰を用いた。臨床データおよび生物学的特異性は、Center for International Blood and Marrow Transplant Reserch(CIBMTR)のデータベースとバイオリポジトリーから入手した。この研究には、1988年から2004年の間にSAAのために無関係ドナーのHCTを受けた197人の患者が含まれていた。HCTの年齢中央値は15歳(0.5-40歳)であり、追跡期間の中央値は5年(<1ヶ月-20.7歳)であった。すべての細胞サブセットにおけるより長いドナーTLは、全原因死亡のリスクの低下と関連していた(p値<0.01)、原因特異的死亡率解析では、B細胞のより長いTL(HR=0.63:95%CI, 0.46-0.87; p値=0.006)およびNK細胞(HR=0.7:95%CI, 0.51-0.97; p値=0.03)は、感染症関連死のリスクの低下と関連していた。その他のリンパ球サブセットにおけるドナーTLは、GVHDまたは生着不全に起因刷る死亡と統計的に有意に関連しなかった(p値>0.05)。しかしながら、GVHD死亡のリスク上昇の傾向が認められた(全リンパ球TLに対するHR=1.26; p値=0.15)。結論として、より長いドナーTLはSAA患者に対するHCT後の感染症関連死亡率の低下に関与した。

平成30年6月4日
田垣内優美

 

EASIX in patients with acute graft-versus-host disease: a retrospective cohort analysis

急性GVHD患者におけるEASIX:後方視的解析

Background:同種造血幹細胞移植後において血管内皮障害は血栓性微小血管障害とステロイド抵抗性GVHDを結びつけている。我々はEndothelial Activation and Stress Index(EASIX):LD[IU/L]xCr[mg/dL]/Plt[109/L=10-1x104/μL] と名付けられたこの単純な式が同種移植後の急性GVHDによる死亡を予測することができるかどうかを評価することを目指した。
Methods:この後方視的解析のために、我々は同種移植を受けた急性GVHD患者に関してドイツでの1つのトレーニングコホートとドイツとアメリカでの3つのバリデーションコホートを解析した。プライマリーエンドポイントはGVHD発症時点での全生存率の予測であった(EASIX-GVHD)。我々は3つの独立したコホートで予測エラー(統合プライアスコア)と一致度を計算することでEASIX-GVHDの全生存率や非再発死亡率に対する予後予測能力を検証した。
Findings:急性GVHD患者全体(n=311)で、EASIX-GVHDは単変量解析でも多変量解析でも全生存率を予測した(単変量解析:one-foldの上昇に対するHR1.16, 95%CI, 1.12-1.20, p=0.0004)。しかし、骨髄破壊的前処置群(n=72)のサブグループ解析では、EASIX-GVHDは全生存率を予測できなかった。このことはおそらくGVHD発症時の血小板減少によるものである(骨髄破壊的前処置7.3万/μL[IQR2.975-18.000]vs強度減弱前処置16.0万/μL[9.00-25.05], p<0.0001)。強度減弱前処置を受けた患者(n=239)では、EASIX-GVHDは全生存率(two-foldの変化に対するHR1.23, 1.12-1.38, p<0.0001)と非再発死亡率(two-foldの変化に対するcause-specific HR1.24, 1.12-1.38, p<0.0001)の強力な予後予測因子であった。EASIX-GVHDによる全生存率と非再発死亡率の予測モデルの妥当性は2つの独立した成人コホート(n=141、n=173)と大部分が小児患者のコホート(n=89)で成功した。
Interpretation:強度減弱前処置において、EASIX-GVHDはGVHD後の生存に対する強力な予後予測因子である。EASIX-GVHDは将来のリスク層別化GVHD治療戦略の発展の基礎となるかもしれない。

平成30年5月28日
井戸健太郎

 

Pretransplant β2-Microglobulin Is Associated with the Risk of Acute Graft-versus-Host-Disease after Allogeneic Hematopoietic Cell Transplant.

移植前のβ2ミクログロビンは同種移植後の急性GVHDに関連している

aGVHDのリスクはHCT-CIにより推測可能である。移植前のフェリチンやアルブミンなど炎症性バイオマーカーを組み込むことで更に精密な推測が可能である。β2MGはMHCクラスI複合体の重要な構成要素である。そして、それは一般集団で死亡率や虚弱性と独立して関連している。移植前β2MGを大部分患者で測定している自施設のデータを利用して移植前のβ2MGとaGVHDのリスクとの関連を検討した。103人の同種造血幹細胞移植患者(内26人がGrade II-IVのaGVHDへ進展)が解析に含まれた。β2MGは年齢とHCT-CIと強く関連していた。β2MG高値はaGVHDへの進展患者で確認された(p=0.008)。多変量CoX回帰モデルではβ2MGとHCT-CIはaGVHDへの進展リスクと独立して関連していた。結論として、β2MGとaGVHDの発症が関連していることは移植前のβ2MG測定がaGVHDのリスク層別化を行う上で追跡すべき要素と成り得ることを示している。

平成30年5月21日
原田尚憲

 

Third-party fecal microbiota transplantation following allo-HCT reconstitutes microbiome diversity.

同種造血幹細胞移植後の第三者からの糞便移植は腸内細菌叢の多様性を改善する

我々は、第三者からの糞便移植(fecal microbiota transplantation:FMT)が、同種移植後の腸内細菌叢を修飾する可能性があると仮定した。この非盲検単群パイロット試験では、18例の同種移植前の症例が組み込まれ、第三者からのFMTカプセルを投与されるよう計画された。FMTカプセルは、好中球生着後4週以内に投与され、FMT投与後48時間以内の抗菌薬投与は禁じられた。5症例が、FMTよりも早期に急性消化管GVHDを発症したために(n=3)、または同種移植関連の消化管毒性が持続したために(n=1)、FMTを実施されなかった。平均して、同種移植後day27(day19-45)に、13例がFMTを施行された。参加者はすべてのFMTカプセルを嚥下することができ、一次評価項目である実現可能性(feasibility)を達成した。治療関連の有意な有害事象を1例認めたが(腹痛)、FMTカプセルは十分に耐容可能であった。2症例が続いて急性消化管GVHDを発症し、1例では持続する菌血症を合併した。その後、菌血症をきたした症例は認められなかった。生存者の平均追跡期間は15ヶ月(13−20ヶ月)であった。カプランマイヤー法によるFMT後12ヶ月の全生存率と無病増悪生存率は、いずれも85%(95%CI:51-96%)であった。1例の急性消化管GVHDに起因した非再発死亡を認めた(12ヶ月非再発死亡率は8%(0-30%)であった)。糞便細菌叢および尿中3-インドキシル硫酸塩濃度の分析結果は、FMT後、ドナー便の菌叢が拡大することにより腸内細菌叢の多様性が改善することを示している。本研究は、同種移植後の第三者ドナーからのFMTが、耐容可能で、安全で、宿主の腸内細菌叢の多様性の改善と関係していることを示している。本研究はwww.clinicaltrials.gov as #NCT027233744に登録された。

平成30年5月14日
林 哲哉

 

Diagnostic and Prognostic Plasma Biomarkers for Idiopathic Pneumonia Syndrome after Hematopoietic Cell Transplantation

造血幹細胞移植後の特発性肺炎症候群の診断、予後予測の血漿バイオマーカー

IPSは造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症であり、その診断は難しい。我々はIPSに対する診断または予後予測のバイオマーカーを特定するため、IPSを発症した41例の患者において移植後day7とIPS発症例の血漿サンプルにおいて、6つの候補となる蛋白質を評価した。感染の記載がない162例のHCT患者(何の問題もないコントロール群)と37例の呼吸器ウイルス肺炎患者の同時期のサンプルをコントロールとして用いた。多変量モデルにおいて、ST2(OR:2.8、P<0.001)とIL-6(OR:1.4、P<0.025)のコンビネーションがIPSと何も問題のないコントロールとを区別する最も優れたIPS診断マーカーであった。またIPSとウイルス肺炎を比較した場合TNFR1(OR:2.9、P<0.002)が最もよいマーカーであった。またIPSと何も問題のないコントロールを区別するROCカーブのAUCはday7のST2で0.8、IL−6で0.75、TNFR1で0.68であった。ROC解析で感度、特異度から見積もったカットオフ値は、ST2:21mg/ml、IL-6:61pg/ml、TNFR1:3421pg/mlであり、我々は推定されるIPS発症率に対するIPSのPPVを計算した。3つのマーカーのうち、ST2はIPS発症に対して最も高いPPVを示した。推定発症率8%に基づくと、ST2陽性はIPSの尤度を50%に増加させた。血漿バイオマーカーが非侵襲的に診断、予後予測を補助できるかどうかを結論づけるために、前向き検証研究が求められる。

平成30年5月7日
岡村浩史

 

Molecular Minimal Residual Disease in Acute Myeloid Leukemia

急性骨髄性白血病における分子レベル微少残存病変

background:急性骨髄性白血病(AML)患者はしばしば完全寛解に達するが、再発率は高いままである。 次世代シークエンシングは、事実上すべての患者において微小残存病変(MRD)を検出することを可能にするが、実臨床レベルでの再発の予測はまだ確立されていない。
Methods:筆者らは18ー65歳の新規発症AML患者を対象とし、 診断時および寛解導入療法後(完全寛解時CR)にターゲットシークエンスを行った。 エンドポイントは、4年時の再発率、無再発生存率(RFS)、および全生存率(OS)とした。
Results:482人のうち430人(89.2%)に少なくとも1つの遺伝子変異が検出された。遺伝子変異は完全寛解の患者の内51.4%で残存し、対立遺伝子頻度(0.02−47%)は様々だった。加齢に伴うクローン造血を有する人にしばしば存在する持続的なDTA遺伝子変異(DNMT3A、TET2、およびASXL1における変異)の検出は、再発率の増加と相関しなかった。DTA変異を排除した後の他のMRD検出は、有意に高い再発率と関連し(55.4%vs31.9%、HR2.14、P<0.001)、有意に低いRFS(36.6%vs 58.1%、HR1.92、P<0.001)および低いOS(41.9%vs66.1%、HR2.06、P<0.001)と関連していた。多変量解析により、完全寛解時の非DTA変異の検出は、再発率(HR1.89、P<0.001)、RFS(HR1.64、P=0.001)およびOS(HR1.64、P=0.003)において、独立した危険因子であった。MRD検出のためのシークエンスとフローサイトメトリーの比較では、シークエンスが有意に付加的な予後予測を可能とした。

Conclusions:AML患者において完全寛解時のMRD検出は、再発および生存率に関して有意に独立した予後予測を示したが、クローン造血に関連した持続的な遺伝子変異の検出は、4年という時間枠では再発と関連していなかった。
平成30年4月23日
中嶋康博

 

Intestinal microbiota and relapse after hematopoietic cell transplantation

造血幹細胞移植後の腸内細菌叢と再発

[目的] 同種造血幹細胞移植後の主な死因は再発、GVHDである。我々は以前に腸内細菌叢の変化がGVHD、菌血症、生存に関与していることを報告した。腸内細菌叢は潜在的に抗腫瘍効果を含めて、全身の免疫反応を変化させうるので腸内細菌叢が移植後の再発に関与する、という仮説を立てた。
[方法] 同種造血幹細胞移植を行った541例で前向きに採取した糞便サンプルで16s ribosomal RNAのシークエンスを行った。Discovery-validationコホートでcause-specific比例ハザード解析を用いて2年フォローアップした患者で後方視的に再発・病気進行と腸内細菌叢の菌量との関係を調べた。
[結果] Eubacterium limosumでほぼ形成されている菌群がvalidationセットにおいて有意に関与していた(HR 0.82 per 10-fold increase in abundance: 95% CI 0.71 to 0.95; p=0.009)。患者をこの細菌群の有無で分けた場合、有する患者では有意に再発・病期進行が少なかった(HR 0.52; 95% CI 0.31 to 0.87; p=0.01)。2年の再発・病期進行は、それぞれ19.8%と33.8%であった。多変量解析でもその有意差は維持されており、T-cell replete allograftで最も強い影響を認めた。
[結論] 我々は腸内細菌叢の一菌種において再発・病期進行との有意な関係を認めた。腸内細菌叢の結果は、バイオマーカーになる可能性や再発・病期進行の予防のために治療の標的となる可能性がある。

平成30年4月16日
中前博久

 

Bortezomib-based immunosuppression after reduced-intensity conditioning hematopoietic stem cell transplantation: randomized phase II results

RIST移殖後ボルテゾミブベースの免疫抑制

このグループは前回HLAミスマッチRIST移殖(前処置強度軽減)移殖でボルテゾミブ(bort)/タクロリムス(tac)/メソトレキセート(MTX)でのGVHD予防のphase I/II試験では、期待できるOS、PRSと急性GVHD発症率の低さを報告した。今回phose IIの1:1:1の3アームのランダム比較試験(RCT)を行った。
A群は通常のtac/MTXによる予防、B群はbort/tac/MTX、C群はbort/シロリムス(sir)/tacで、対象はHLA一致血縁ドナーを欠く患者でRIST末梢血幹細胞移植を行う。プライマリーエンドポイントは移植後180日でのグレードII-IVの急性GVHD発症率。138名(A
46、B 45、C 47名)の年齢中央値は64歳(24−75歳)でdisease riskは(low 14名、intermediate 96名、high/very high 28名)、HLAミスマッチ(7/8HLA一致血縁・非血縁40名)かHLAマッチの非血縁移殖(98名)を受けた。生存者のフォローアップ期間中央値は30ヶ月(14−46ヶ月)。早期の免疫再構築が群で違うにもかかわらず、移植後180日でのグレードII-IVの急性GVHD発症率は差がなく(A群32.6%、B群31.1%、C群21%。A vs B(P=0.53)、A vs C(P=0.16))、2年非再発死亡率(NRM)(A群14%、B群16%、C群6.4%;P=0.62)も、再発率(A群32%、B群32%、C群38%;P=0.74)、慢性GVHD(A群59%、B群60%、C群55%;P=0.66)も、無増悪生存率(PFS)(A群54%、B群52%、C群55%;P=0.95)も、生存率(OS)(A群54%、B群52%、C群55%;P=0.95)と差がなかった。全体として、ボルテゾミブベースのGVHD予防レジメンは移殖成績を上昇させなかった。

平成30年4月9日
中前美佳

 

Long-Term Follow-up of CD19 CAR Therapy in Acute Lymphoblastic Leukemia

急性リンパ性白血病に対するCD19 CAR治療の長期追跡結果

<背景>
CD19特異的キメラ抗原レセプター(CAR)T細胞は、再発B-ALL患者で高い初回奏効率を示し、一部の患者に長期寛解をもたらす。
<方法>
Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)で19-28z CARを発現する自己T細胞輸注を受けた成人再発B-ALL患者を対象とする第T相試験を実施した。安全性および長期的アウトカムを評価し、人口統計学的、臨床的、および疾患特性との関連性を評価した。
<結果>
計53人の成人患者がMSKCCで作製された19-28z CAR T細胞を投与された。輸注後、重度のサイトカイン放出症候群が53人中14人に発生(26%; 95%CI 15−40)。1人が死亡した。83%にCRが得られた。中央値29M(範囲1−65)の追跡で、EFS中央値6.1M(95%CI 5.0−11.5)、OS中央値12.9M(95%CI 8.7−23.4)であった。治療前の腫瘍量が少ない(骨髄芽球<5%)患者は、寛解持続期間および生存期間が顕著に延長し、EFS中央値10.6M(95%CI 5.9~未到達)、OS中央値20.1M(95%CI 8.7−未到達)であった。腫瘍量が多い患者(骨髄芽球≧5%以上or髄外病変あり)は、腫瘍量の少ない患者よりも、サイトカイン放出症候群および神経毒性事象の発生率が高く、長期生存期間が短かった。
<結論>
コホート全体では、OS中央値12.9Mであった。腫瘍量の少ない患者のOS中央値は20.1Mであり、19-28z CAR T細胞輸注後のサイトカイン放出症候群および神経毒性事象の発生率は、腫瘍量が多い患者よりも顕著に低かった。(本研究はCommonwealth Foundation for Cancer Research などから助成を受けた; ClinicalTrials.gov番号、NCT01044069)。

平成30年4月2日
廣瀬朝生

 

Neurologic complications after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: risk factors and impact

同種移植後の神経学的合併症:危険因子と影響

同種造血幹細胞移植(HSCT)後神経学的合併症(NC)は罹患率および死亡率の重大な原因となる可能性がある。我々はHCT後最初の5年間におけるNCの発生率、危険因子および臨床的影響を判定するために、血液悪性腫瘍に対し同種HCTを受けた263人の連続した患者の後方視的研究を行った。我々は、中枢神経系(CNS)感染、頭蓋内出血、虚血性脳卒中、代謝性脳症、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)。痙攣および末梢神経障害の発生率を判定した。全患者のうち、50人の患者がNCを経験し、合計65回であった。内訳は早期に37回(≦day 100)、後期に21回(day 101−2年)および超長期5回(2ー5年)であった。全てのNCの1年および5年の累積発症率は、それぞれ15.6%および19.2%であり、CNS合併症(CNSC:末梢神経障害を除く上記合併症のすべて)は12.2%および14.5%であった。CNSCの危険因子は年齢(HR=1.06、p=0.0034)、急性GvHDグレードIII―IV(HR=2.78、p=0.041)、輸血依存性血小板減少(HR=3.07、p=0.025)および血小板生着の遷延であった(>90th centile; HR=2.77、p=0.043)。CNSCは、progression-free survival(PFS)(HR=2.29、p=0.0001)。全生存期間(OS)(HR=2.63、p<0.0001)および非再発死亡率(NRM)(HR=8.51、p<0.0001)に負の影響を与えた。HCT後のNCは予後不良であり、通常HCT後早期に発生する。

平成30年3月26日
谷澤 直

 

Immunological effects of nilotinib prophylaxis after allogeneic stem cell transplantation in patients with advanced chronic myeloid leukemia or philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia

進行期CMLやPhALL患者に対する同種造血幹細胞移植後ニロチニブ予防投与の免疫学的効果

同種移植は進行期CMLやPhALLに対する標準治療である。再発は治療失敗の大きな原因である。移植後にTKIを投与することは再発率を減らすが、免疫再構築に対する問題がある。我々は12人のPhALLおよびCML患者に対して移殖後ニロチニブの投与を行なった。リンパ球のサブセットと機能(マイトジェンに対するT細胞の反応、NK活性、TRECやT細胞のレパトア)が、移植後ニロチニブの投与を開始してから1年の間までの数ポイントを解析した。ニロチニブの投与中、リンパ球数やサブポピュレーションは徐々に増加した。CD8T細胞は急速に増加し、180日までに回復したのに対して。CD4細胞はニロチニブ投与後180から270日まで低いままであった。マイトジェンの刺激によるT細胞の反応はニロチニブによって阻害されなかった。TRECやTCR Vβのレパトア解析の測定による胸腺活性は全ての患者においてニロチニブ投与中もはっきりとあった。
最後に、ニロチニブはNK活性を傷害しなかった。結論として、PhALLやCMLの信仰や再発を減らすための試みとして、ニロチニブは同種移植の免疫再構築を邪魔しなかった。

平成30年3月19日
南野 智

 

Validation of the revised IPSS at transplant in patients with myelodysplastic syndrome/transformed acute myelogenous leukemia receiving allogeneic stem cell transplantation: a retrospective analysis of the EBMT chronic malignancies working party.

同種移植を受けるMDS/tAML患者の移植時IPSS-Rの評価:EBMT後方視的研究

IPSS-RはMDSの診断時における予後予測ツールである。移植前の状態におけるIPSS-Rの有効性を評価するためEBMTのデータベースから579名の患者情報を用いた後方視的研究を行った。移植からのOSの中央値はIPSS-Rによって分けられた(very low:23.6月,low:55.0月,intermediate:19.7月, high:13.5月, very high:7.8月)。Coxの多変量モデルにおいてOSに影響するリスク因子は,IPSS-R,幹細胞源,年齢,前治療の有無であった。移植からの RFSの中央値も同様にIPSS-Rによって分けられた(very low:23.6月,low: 24.8月,intermediate:10.6月, high:7.9月, very high:5.5月)。Coxの多変量モデルにおいてRFSに影響するリスク因子は,IPSS-R,幹細胞源,前治療の有無,RICであった。very high risk群では再発が多い傾向にあった。移植前にIPSS-Rを評価することは病勢と前治療への反応を加味することが出来るため,移植後のOS・PFSを予測するためより有効なツールであると考えられる。

平成30年3月12日
幕内陽介

 

Selecting the Best Donor for Haploidentical Transplant: Impact of HLA, Killer Cell Immunoglobulin-Like Receptor Genotyping, and Other Clinical Variables

ハプロ移殖の最適ドナー選択:HLA、KIR遺伝子型、他の臨床的因子

PTCyハプロ移殖は世界中で益々行われるようになって来ている。しかし、選択可能なドナー候補が多数いることから、どのドナーを優先的に選ぶべきかについての、データに基づいたガイダンスが必要となってきている。我々は単施設でPTCyベースのハプロ移殖を受けたドナー・レシピエントペア208例について連続的に後方視的解析を行った。患者とドナーの年令中央値はそれぞれ52歳(19−75)と38歳(15−73)、」PBSCは66%、MACは41%、生存者のフォローアップ中央値は33ヶ月(7−130)。ドナー変数としては、年齢、性別、関係、CMV status、ABO血液型一致、HLA disparity、いくつかのNK細胞同種免疫モデルを検討した。多変量cox解析では患者、疾患、o移植に関する既知の共変量を用いて調整した。生存を改善させるドナー条件は、HLA―DR不一致、HLA―DPのnonpermissive mismatch、KIR2DS2を有するKIR B/xハプロタイプであった。生存を低下させるドナー条件は、ドナーが両親であることと、CMV抗体院生ドナーから陽性患者への移植であった。GVH方向での4/10以上の不一致はNRMの増加および再発の減少の結果、生存への効果は認めない結果であった。われわれは、より根拠に基づいたドナー選択ができるようにドナーリスク因子のスコアリング化を試みた。この大規模な単施設解析はHLA―DRおよびDPのdisparity、NK同種反応性、他の臨床的な因子がハプロ移殖におけるドナー選択に重要であることを示しており、ハプロでのドナー選択においては、KIRおよびHLA―DP grnotypeはルーチンで行われるべきである。

平成30年3月5日
中根孝彦

 

R-CHOP 14 with or without radiotherapy in nonbulky limited-stage diffuse large B-cell lymphoma

巨大腫瘤のない限局期DLBCLに対するR-CHOP14の放射線治療追加の有無による比較

限局期DLBCLにおける化学療法後の放射線療法(RT)のベネフィットについては未だ議論されているところである。R-CHOP後のRTの利点を評価するために、Bulky massを認めない限局期DLBSL患者におけるランダム化試験を実施した。患者は、LDH、ECOG PS、年齢、病期を含むmodified IPI(mIPI)により層別化した。患者は2週間ごとのR-CHOPを4回または6回連続して行い、最後のR-CHOPから4週間後にRT(40Gy)を行う群と施行しない群に分けた。すべての患者で、治療開始前(ベースライン)、R-CHOPを4コース後、および治療終了時にFDG-PETsを行い評価した。この試験の一次評価項目は、無イベント生存率(EFS)である。R-CHOP群では165人、R-CHOP+RT群では169人がランダムに割り当てられた。追跡期間の中央値が64ヶ月で、治療企図解析にて、5年EFSは2群間で統計的に有意な差はなく、R-CHOP群では89%±2.9%であったのに対し、R-CHOP+RT群では92%±2.4%(ハザード比0.61、95%信頼区間(CI):0.3-1.2、P=0.18)であった。全生存率(OS)も同様に有意な差はなく、R-CHOP単独群では92%で(95%CI:98.5-94.5)、R-CHOP+RT群では96%(95%CI:94.3-97.7、p=ns)。Bulky massを認めない限局期DLBSL患者において、R-CHOPとRT併用療法に対する、R-CHOP単独療法の非劣性が示された。

平成30年2月26日
巽 尚子

 

The eukaryotic gut virome in hematopoietic stem cell transplantation: newclues in enteric graft-versus-host disease

造血幹細胞移植における真核生物の腸炎:腸内移植片対宿主病における新しい手がかり

ヒトの健康における細菌叢の役割に大きな注目が集まっているが、ウイルス叢については十分に研究されていない。炎症性腸疾患や固形臓器移植患者で以前に検討されたが、同種造血幹細胞移植(HSCT, hematopoietic stem cell transplantation)、腸管graft-versus-host disease(GVHD)でウイルス叢の動態については検討されていない。本研究において、我々はmetagenomicsを用い、44名のHSCTレシピエントにおいて経時的に消化管ウイルス叢の特徴を述べる。ウイルスの“bloom(大増殖)”が同定され、移植後、脊椎動物ウイルスシーケンスの全割合において、有意な増加が実証された(P = 0.02)。時間と共に持続的なDNAウイルス(anelloviruses, herpesviruses, papillomaviruses and polyomaviruses)の検出率(P < 0.0001)とシーケンス数(P = 0.047)の両方の増加が、腸管GVHDなし患者よりもGVHDあり患者において有意に認められ、phage richness(種数)の低下も伴っていた(P = 0.01)。Picobirnavirusesが18名(40.9%)で検出され、後期の時点よりも移植前および移植後1週間以内により多く認められた(P = 0.008)。時間依存性Cox比例ハザードモデルでは、picobirnavirusesは重症腸管GVHD発症の予測因子であり(HR 2.66; 95%CI=1.46-4.86; P = 0.001)、2つの重症GVHDマーカー: calprotectinとα1-antitrypsinの便中レベル高値と相関があった。本研究結果は、HSCT後、時間と共に脊椎動物ウイルスが進行性に拡大していることを明らかにし、また移植後早期GVHDとpicobirnavirusesの想定外の関連を示唆している。

平成30年2月19日
康 秀男

 

Early Antimicrobial De-escalation and Stewardship in Adult Hematopoietic Stem Cell Transplantation Recipients: Retrospective Review.

成人造血幹細胞移植患者における早期抗菌薬de-escalationと適正使用:後方視的研究

背景:同趣造血幹細胞移植(allo-HSCT)患者における抗菌薬適正使用はアメリカ合衆国では十分に行なわれていない。欧州のガイドラインでは、一部の起源不明の好中球減少性発熱(FN)患者においては広域抗菌薬治療開始72時間後のde-escalationが推奨されている。現行のガイドラインでは好中球生着までの広域抗菌薬の使用が推奨されているように、これは米国では一般的ではない。好中球減少期の同種移植患者に少なくとも5日間の広域スペクトラム療法及び解熱後にde-escalationした場合に発熱や感染の再燃が生じなければ、その試みはいくつかの利点をもたらす。
方法:主要エンドポイントは再発熱の発生率とした。副次的アウトカムには、クロストリジウム・ディフィシル関連感染症、滞在期間、ICU入室率、院内死亡率、re-escalationの必要性、再発熱患者の血液培養陽性率、FN発症時からの全抗菌薬使用歴および薬理経済的影響が含まれた。
結果:合計120人の患者を、早期de-escalationを受けたコホート1(n=46)およびde-escalationを受けなかったコホート2(n=74)に分けた。主要エンドポイントは、指定された時間枠内でコホート1の7人の患者(15%)が再度発熱し、コホート2における14人(19%)と比較して、非劣性を示した(95%CI、-0.0878?0.1629、P=0.026)。コホート1の患者は有意に少ないグラム陽性菌(GPB)カバーの治療を受け、グラム陰性菌カバーの広域スペクトラムの抗菌薬の使用が減少する傾向にあった。また、関連費用が抑えられ、滞在期間・ICU入室率・re-escalationの必要性・広域抗菌薬のde-escalationまたは中止後の血液培養陽性率・院内死亡率に差はなかった。

結論:少なくとも5日間の広域抗菌薬治療および解熱後のde-escalationは再発熱率に影響を与えないようである。これにより、好中球生着まで広域治療を継続する患者と比較してグラム陽性菌抗菌薬の使用が大幅に減少し、広域スペクトラムのグラム陰性薬剤の使用やコストも減少傾向であり、臨床アウトカムの差は認められなかった。
平成30年2月5日
田垣内優美

 

Grade II Acute Graft-versus-Host Disease and Higher Nucleated Cell Graft Dose Improve Progression-Free Survival after HLA-Haploidentical Transplant with Post-Transplant Cyclophosphamide

グレードIIの急性GVHDと有核細胞数の多いグラフトは移植後シクロホスファミドを用いたHLA半合致移植後の無増悪生存率を改善する

標準的GVHD予防プラットフォームと比較して、移植後シクロホスファミド(PTCY)を用いたT細胞非除去HLA半合致(ハプロ)骨髄移植(BMT)はグレードIII—IVの急性及び慢性GVHDのリスクを減少させるが、グレードIIの急性GVHDは同じような発症率のままである。軽症のGVHDがHLA一致骨髄移植におけるtreatment failureの減少と関連していたので、我々はPTCY、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムスを用いた骨髄非破壊的ハプロBMT後に生着した成人血液悪性腫瘍患者340例でGVHDに対するリスクファクターとGVHDの生存に与える影響を評価した。グレードIIのGVHDとグレードIII—IVのGVHDの100日間での累積発症率は30%(95%CI:025-35%)と2%(95%CI:1-4%)であった。慢性GVHDの1年累積発症率は10%であった(95%CI:7-13%)。100日時点でのランドマーク解析では、4年全生存率(OS)と4年無増悪生存率(PFS)はグレードII-IVの急性GVHD発症者で48%(95%CI:41-56%)と39%(95%CI:32-47%)であり、グレードIIの急性GVHD発症者のみでは63%(95%CI:53-73%)と59%(95%CI:50-71%)であった(P=0.05とP=0.009)。多変量モデルにおいて、GVHDを一度も経験していない患者と比較すると、グレードIIの急性GVHDのある患者でのOSとPFSに対するハザード比(HR)は0.78(95%CI:0.54-1.13、P=0.19)と0.69(95%CI:0.48-0.98、P=0.04)であった。有核細胞数の多いグラフトもOS(HR 0.88;95%CI:0.78-1.00、P=0.05)とPFS(HR 0.89;95%CI:0.79-1.0、P=0.05)の改善と関連しグレードIII—IVの急性GVHDのリスクの減少(subdistribution HR 0.66;95%CI:0.46-0.96、P=0.03)と関連していた。PTCYはグレードIII—IVの急性GVHDと慢性GVHDを減少させるが、グレードIIの急性GVHDの発症は変わらないままであり、その発症はPFSを改善させる。有核細胞数の多いグラフトもPTCYを用いた骨髄非破壊的ハプロBMTでの生存率を改善させるかもしれない。

平成30年1月29日
井戸健太郎

 

T Cell-Replete HLA Haploidentical Donor Transplantation with Post-Transplant Cyclophosphamide Is an Effective Salvage for Patients Relapsing after an HLA-Matched Related or Matched Unrelated Donor Transplantation

PTCYハプロ移植はHLA一致血縁もしくは非血縁移植後再発患者の効果的なサルベージ治療

血縁者HLAマッチ血縁ドナー(MRDT)もしくはHLAマッチ非血縁ドナー(MUDT)移植後再発患者に対する治療として、同一ドナーを用いることもしくは他のHLAフルマッチドナーを用いた2回目の同種造血幹細胞移植(HSCT)は有効な治療方針である。MRDTもしくはMUDT後に2ndHSCTをpost-CYでのハプロ一致移植(HIDT)を用いたデータは限られたものである。
MRDT(n=10)もしくはMUDT(n=10)後にpost-CYでのHIDTを受けた20名の結果を解析した。
最初の移植から2回目の移植までの中央値は20.7ヶ月(range 2.7-65.8)であった。
10名はAML/MDS、6名はALL、2名はCLL、2名はMPNであった。
全患者はHIDT前に化学療法歴あり、移植時に12名(60%)はCRを達成し、8名(40%)は非寛解であった。
全患者はそれぞれ好中球生着(中央値17.5日、range 14−44)、血小板生着(中央値32日、range 15−99)を認めた。
19人(95%)はT細胞系統/骨髄系ともに移植後30日で降るキメリズムドナーを達成した。
移植後Day180時点でのGrade II-IVとIII-IVの急性GVHDの累積発症率はそれぞれ、36%、10%であった。
移植後1年時点での中等度から重症の慢性GVHDの累積発症率は13%であった。
フォローアップ期間中央値38ヶ月でOS、DFS、NRM、移植後再発率はそれぞれ移植後1年で52、39、29、33%、移植後3年で34、31、29、40%であった。
MRDTもしくはMUDT後に再発した血液造血器腫瘍の治療戦略として、これらのデータはHIDTの有用性を示唆する。
今後、これらの結果を確固とする更なる研究が必要である。

平成30年1月22日
原田尚憲

 

Clinical predictors of Stenotrophomonas maltophilia bacteremia in adult patients with hematologic malignancy

血液悪性腫瘍患者における ステノトロホモナス・マルトフィリア菌血症の臨床的予後予測因子

ステノトロホモナス・マルトフィリア(SM)は、高い罹患率と死亡率を伴う院内病原体である。抗菌薬に対する感受性が独特であるため、SMに対する適切な抗菌薬治療を実施することは、特に免疫不全例において、いまだに困難であることが多い。成人血液悪性腫瘍症例におけるSM菌血症の臨床的予測因子を評価するために、本研究を実施した。2006年から2016年までの期間で、高度医療機関において、症例対照研究が実施された。症例群は、血液悪性腫瘍症例におけるSM菌血症症例と定義した。時期、場所を一致させた対照群として、SM以外のグラム陰性菌(GNB)感染をきたした症例から選択された。計118例のSM菌血症症例が同定され、118例の対照群と比較された。肺炎がSM菌血症の最も多い起源であった一方で、対照群では、中心静脈カテーテル関連感染症が最も多かった。30日時点での死亡率は、SM菌血症群で、対照群と比較して有意に高かった(それぞれ61.0%、32.2%、p<0.001)。多変量解析の結果、複数微生物の感染、SM検出歴、3種類以上の抗菌薬使用歴、カルバペネム系抗菌薬使用中に発生した菌血症が、SM検出癧、3種類以上の抗菌薬使用歴、カルバペネム系抗菌薬使用中に発生した菌血症が、SM菌血症と有意に相関していた(いずれもp<0.001)。スルファメトキサゾール/トリメトプリム合剤の使用歴は、SM菌血症の発症と負の相関を示していた(p=0.002)。我々の結果は、SMが血液悪性腫瘍症例において、重要な病原体となっていることを示している。複数のSM菌血症の臨床的予測因子が、GNB感染が疑われる血液疾患症例において、適切な抗菌薬治療を実施するために、有用である可能性がある。

平成30年1月15日
林 哲哉

 

 

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