最新文献紹介(抄読会)
戻る

2010年以前はこちら

2011年はこちら

2012年はこちら

2013年はこちら

2014年はこちら

2015年はこちら

2016年はこちら

2017年はこちら

2018年はこちら

2019年

Single Nucleotide Polymorphisms in CD40L Predict Endothelial Complications and Mortality After Allogeneic Stem-Cell Transplantations

進行期または再発・難治性ENKLの管理:造血幹細胞と化学療法のアウトカムの解析

Purpose
血管内皮の脆弱性は同種SCT後の合併症の潜在的なリスク因子です。CD40/CD40 ligand (CD40L) axisは、炎症性疾患に寄与し、血管内皮細胞の活性化によってupregulateされる。これは同種SCTでも一躍を担っているかもしれない。我々は、同種SCTレシピエントのCD40L遺伝子におけるSNPを解析した。
Patients and Methods
スタチンによる血管内皮障害予防(SEP)を行っていない294名の同種移植レシピエントにおいて、CD40Lの3つのSNP (rs3092920, rs3092952, rs3092936)と、TA-TMA、NRM、aGVHD後のNRMの関連について調べられた。次に、確立されたトロンボモジュリン(THBD)遺伝子多型を用いて、重要な遺伝子型を調べた。結果はSEPのない独立したコホートとさらにSEPを受けた344例の患者を追加したコホートでで検証された。
Results
rs3092936 CC/CT 遺伝子型が、TA-TMA(P =0 .001)、NRM(P =0 .03)、aGVHD後のNRM(P =0 .01)のリスク増加と関連した。rs3092936 CC/CT遺伝子型は、高リスクTHBD SNPsとほとんど互いに排他的関係にあった。CD40LおよびTHBD SNPは両方とも、トレーニングコホート(OS, P =0 .04; NRM, P <0 .001)、およびv検証コホート(OS, P =0 .01; NRM, P =0 .01)において同程度OS、NRMに悪影響をもたらした。一方で、SEPは高リスクCD40LとTHBD SNPの影響を完全に打ち消した。
Conclusion
血管内皮による合併症の増加リスクはレシピエント遺伝子のマーカーによって同種SCT前に予測され得る。SEPで治療された患者における死亡リスクの正常化は高リスク遺伝子型の悪影響の克服法であることを示唆し、さらなる臨床的検証が求められる。

令和1年12月23日
岡村浩史

 

MHC Class II Antigen Presentation by the Intestinal Epithelium Initiates Graft-versus-Host Disease and Is Influenced by the Microbiotan.

小腸上皮のMHCクラスII抗原の発現はGVHDを誘導し、微生物叢の影響を受ける

腸管(GI)GVHDは、同種骨髄移植(BMT)後の主要な死因である。今回、我々は、関連する抗原提示細胞を含むGVHDを誘導するメカニズムを調べた。MHC class II分子は、通常の状態の回腸において小腸上皮細胞(IECs)上に発現しているが、germ-freeマウスのIECsにおいては欠損している。MHC class II分子の発現は、TLRアダプターであるMyD88やTRIFが欠損しているマウスにおいては認められず、粘膜固有層内のリンパ球によるIFNγ分泌を必要とした。IFNγの反応は骨髄細胞によるIL-12の分泌により、特に活性化された。抗菌薬による腸内微生物叢除去は、回腸マクロファージによるIL-12/23p40産生を抑えた。IL-2/23p40を中和することにより、IECsにおけるMHC class II分子のupregulation、及び致死的なGI GVHDの誘導が抑制された。したがって、回腸IECsによるMHC class II分子の発現が致死的なGVHDを誘導すること、及びIL-12/23p40の阻害が臨床応用可能な治療戦略として提案しうるものであるだろうと我々は考える。


令和1年12月16日
林 哲哉

 

Effect of sorafenib on the outcomes of patients with FLT3-ITD acute myeloid leukemia undergoing allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.

同種HSCTを受けたFLT3−ITD AML患者の予後に対するソラフェニブの効果

FLT3遺伝子変異は、発生率30%の最も頻度の高いAMLの遺伝子変化の一種である。FLT3変異にはFLT3−ITD(約25%)とFLT−TKD(約5%−7%)があり、FLT3変異のないAML患者と比較して、FLT3変異陽性のAML患者は寛解期間が著しく短く、再発率が高い。同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)により、FLT3変異を有するAML患者の再発率が低下し、生存率が向上する可能性がいくつかの研究で実証されている。しかし、いまだFLT3変異陽性のAML患者の再発率は高いままである。FLT3−ITD変異は、チロシンキナーゼを恒常的に活性化し、その結果、白血病細胞の異常増殖を引きおこすと考えられる。ソラフェニブは、マルチキナーゼ阻害剤として、FLT3−ITD、RAS/RAF、c-kit等のAMLを発症する多種の経路を阻害する。多数の臨床研究で、ソラフェニブと併用した化学療法がFLT3−ITD AML患者、特に60歳未満の患者の長期寛解を促進する可能性があることが示唆される。同種HSCT後のソラフェニブによる地固め療法は、生存を改善できるかどうかは不明であり、本研究では、遡及的に同種HSCTを受けたFLT3−ITD AML患者の予後に対するソラフェニブ療法の効果を評価した。


令和1年12月9日
中井久実代

 

Donor selection for a second allogeneic stem cell transplantation in AML patients relapsing after a first transplant: a study of the Acute Leukemia Working Party of EBMT

初回移植後再発した急性骨髄性白血病患者に対する2回目の移植のドナー選択

2回目の造血幹細胞移植(SCT2)は1回目の幹細胞移植後再発のAML患者に治癒をもたらし得る治療選択肢である。以前の研究では、SCT2ドナーがSCT1と同一ドナーまたは異なったドナーで治療成績が変わらない事が報告されたが、T細胞非除去のハプロドナーを用いた場合のデータは限定的だった。そこで筆者らは、CR1でのSCT1後に再発した、SCT2移植556症例について後方視的に解析した。SCT2ドナーの種類によって3群に分けた。同一ドナー(n = 163, sib/sib-112, UD/UD-51)、異なるHLA合致ドナー(n = 305, sib/different sib-44, sib/UD-93, UD/different UD-168)、そしてハプロドナー(n = 88, sib/haplo-45, UD/haplo-43)。2年の無白血病生存(LFS)は各群23.5%、23.7%、21.8%だった(P = 0.30)。多変量解析では、再発リスクにSCT2ドナーの種類で違いはなかった。同一ドナーに対するハザード比(HR)は、異なるHLA合致ドナー0.89 (P = 0.57)、ハプロドナー1.11 (P = 0.68)だった。しかし無再発死亡(NRM)ではHR 1.21 (P = 0.50) と2.08 (P = 0.03)とハプロドナーでリスクが高かった。またLFSはHR 1.00 (P = 0.97)、1.43 (P = 0.07)だった。結論として、SCT1と同一ドナーおよび異なるHLA合致ドナーは、SCT2ドナーとして相違ない成績が得られる。T細胞非除去ハプロドナーは、再発率は変わらないが高めのNRMに関連し、SCT2ドナーとしてのメリットは期待できないかもしれない。


令和1年12月2日
中嶋康博

 

Blast phenotype and co-mutations in acute myeloid leukemia with mutated NPM1 influence disease biology and outcome

NPM1変異AMLにおける芽球の表現型および合併する変異が疾患の生物学的特性や予後に影響する

変異NPM1(AML-NPM1)を伴うAMLの表現型および遺伝的異質性の臨床的重要性を検討 した多施設コホート研究。 239名のAML-NPM1症例を3つの表現型に分ける:単球性分 化を示す芽球を伴う症例(n = 93; monocytic AML-NPM1)、単球性分化を欠く芽球をもつ症例(n = 72; myeloid AML-NPM1)、芽球がCD34とHLA-DRの両方陰性である症例(n = 74; 二重陰性[DN] AML-NPM1、芽球の表現型はどちらでも良い)。 AML-NPM1に典型的な遺伝子型の多様性(DNAメチル化遺伝子(症例の81%)、FLT3(48%; ITD 変異とTKD変異を含む)、およびRAS経路関連遺伝子(30%)など)が見られたが、合併する変異パターンは芽球表現型によって異なった。TET2およびIDH1/2変異は、骨髄性芽球群(39%)または単球性芽球群(48%; P <.0001)よりもDN(症例の96%) で有意に多く見られた。逆に、DNMT3A変異は、myeloid(44%)やmonocytic(54%)よりも、DN AML-NPM1(27%)の方が有意に少なかった(P = .002)。さらに、3つの表現型グループは転帰に有意な差を示し、DN AML-NPM1は、単球性芽球AML-NPM1や骨髄性芽球AML-NPM1よりも有意に長い無再発(RFS)および全生存期間(OS)を示した (それぞれDN群:RFS64.7およびOS 66.5ヶ月、単球性芽球群 RFS: 20.6ヶ月および 44.3ヶ月, 骨髄性芽球群: RFS 8.4ヶ月およびOS20.2ヶ月)、RFS:P <.0001および OS:P = .01)。この研究結果はNPM1変異AMLの予後に関して免疫表現型で定義された サブグループ内の生物学的相違を示している。


令和1年11月25日
中前美佳

 

HLA-haploidentical vs matched-sibling hematopoietic cell transplantation: a systematic review and meta-analysis.

ハプロ移植とHLA一致同胞移植の比較:メタ解析

移植後のシクロホスファミド(PTCy)を使用したHLAハプロタイプ一致造血幹細胞移植(ハプロ移植)は、HLA一致同胞ドナー(MSD)が利用できない場合の代替ソースである。系統的なレビューとメタ分析を実施して、MSDとハプロ移植の結果を比較した。11件の研究(1410例のハプロ移植および6396例のMSDレシピエント)のメタ分析を行った。すべての研究は後方視的であるが、質が高く、9件は多施設共同研究であった。ハプロ移植では、cGVHDのリスクが約50%低下した(HR、0.55;95%CI、0.41-0.74)が、非再発死亡のリスクが高かった(HR、1.36;95%CI、1.12-1.66)、再発、生存、急性GVHD、および無GVHD無再発生存期間は、グループ間で有意差はなかった。PTCyとHLA不一致のグループ間で観察された予後の差への相対的な寄与度を分析するには、さらなる研究が必要である。


令和1年11月18日
中前博久

 

Measurable Residual Disease Monitoring in Acute Myeloid Leukemia with t(8;21)(q22;q22.1):Results of the AML Study Group

t(8;21) AMLにおけるMRDモニタリング

最大感度10-6のRT-qPCRアッセイを使用して、強力治療されたRUNX1-RUNX1T1陽性AML患者155人のBMおよびPBサンプルで連続的に測定可能残存病変(MRD)モニタリングを実施した。RUNX1-RUNX1T1転写産物レベルの低下とMRD陰性(MRDneg)達成の両方について予後への影響を評価した。治療サイクル1後のMR2.5の達成( >2.5log減少)および治療サイクル2後のMR3.0の達成は、再発リスクの減少と有意に関連していた(各々P=0.034、P=0.028)。治療終了後、BMとPBいずれも、MRDneg達成は、累積再発率(4年CIR ; BM:17% v 36%、P = 0.021; PB:23% v 55% ; P = 0.001)および全生存率(4年OS率; BM:93% v 70%、P = 0.007; PB:87% v 47%; P <0.0001)の独立した予後良好因子であった。最終的に、フォローアップ中の連続的RT-qPCR解析により、BMでRUNX1-RUNX1T1転写産物レベルがカットオフ値150を超える患者の77%、およびPBで50を超える患者の84%で再発の予測が可能であった。KIT変異は、CR率の低下と予後不良を予測する重要な因子であったが、治療中のRUNX1-RUNX1T1転写産物レベルはその予後への影響を上回った。事実上すべての再発は治療終了後1年以内に発生し、分子再発から形態学的再発までの潜伏期間が非常に短く、この期間中に短い間隔でMRD評価が必要であった。データに基づいて、RUNX1-RUNX1T1陽性AMLのMRD評価のための改良された実用的なガイドラインを提案する。


令和1年11月11日
廣瀬朝生

 

Incidence, Risk Factors and Outcomes of Idiopathic Pneumonia Syndrome after Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation

同種造血幹細胞移植後のIPSの発症、危険因子、予後

(特発性肺炎症候群(IPS)診断の特異性向上と造血細胞移植(HCT)や救命救急診療の進歩により最近の知見が得られている。本研究で、IPSの発生率、リスク要因、および予後についてアップデートした。2006年から2013年にかけてフレッドハッチンソンがん研究センターで同種HCTを受けたすべての成人を対象に、後ろ向きコホート研究を実施した(n = 1829)。 IPSは、国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)のコンセンサス定義(胸部画像上の複数肺葉の病変、下気道感染がない、低酸素血症)を用いて診断した。 HCT後120日から365日以内のIPS発生率および死亡率を評価した。移植時の年齢、HLA一致度、移植ソース、移植前呼吸機能指数(FEV1およびDLCOより計算)で調整したCoxモデルを用いTTE解析を行い、IPSリスク要因としての前処置強度(骨髄非破壊的vs高線量全身照射(TBI)を用いた骨髄破壊的vs低線量TBIを用いた骨髄破壊的)を検討した。1829人のHCT患者のうち、67人が120日以内にIPS基準を満たした(3.7%)。IPSの発症は、他の人種と比較して非ヒスパニック系黒人が多く、重度の肺機能障害以外はIPSのない患者と差はなかった。調整したモデルでは、高用量TBIによる骨髄破壊的前処置は、IPSのリスク増加と関連していた(ハザード比 2.5、95%CI 1.2-5.2)。IPS患者31人(46.3%)がHCT後120日以内に死亡し、47人(70.1%)がHCT後365日以内に死亡した。対照的に、120日間にIPSを発症しなかった1762人のうち、HCT後120日以内に204人(11.6%)が死亡し、HCT後365日以内に510人(29.9%)が死亡した。我々の結果は、IPS発生率は低下しているが、依然として移植後の死亡率との関連があることを示唆した。HCT後の肺障害の影響を最も受けやすい患者に対するタイムリーな標的療法を開発するために、IPSの早期発見と病理学的メディエーターの同定に関する研究が必要である。


令和1年10月28日
久野雅智

 

Tyrosine kinase inhibitor prophylaxis after transplant for Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia

フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病に対する移植後のチロシンキナーゼ阻害薬予防投与

同種造血幹細胞移植(HSCT)後のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)投与は、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)で生存を改善する可能性がある。したがって、HSCT後の微少残存病変(MRD)陰性例に対するTKIでの予防が、患者の転帰を改善するかどうかを全国的後ろ向きコホート研究で調査した。2001年から2016年の間に移植前にTKI治療を受け、初回のHSCT後180日以内にMRD陰性に達したPh+ALL患者850人の患者のうち、50人の患者がTKI予防を受けた。ほとんどがイマチニブまたはダサチニブ(中央値:イマチニブ400mgおよびダサチニブ400mg)であった。多変量解析では、HSCT時点の疾患状態が再発の唯一の危険因子であった(MRD陽性完全寛解{CR}:HR 3.58;P<0.001および非寛解HR 6.13;P<0.001)、TKI予防は、コホート全体、または移植時MRD陰性のCR1またはMRD陽性CR1に限定した分析のいずれにおいても、再発リスクの低下または全生存期間の延長とは関連していなかった。一方、ダサチニブに限定されたTKI予防は、イマチニブとは異なり、再発リスクの低下と関連している可能性があった。(HR 0.34;P=0.140)。高リスク患者に新世代TKIを使用する代替戦略は、同種移植の結果を改善するために正当化される。


令和1年10月21日
谷澤 直

 

Total body irradiation dose and risk of subsequent neoplasms following allogeneic hematopoietic cell transplantation

全身放射線照射線量と同種造血幹細胞移植後の二次腫瘍リスク

強度減弱前処置または非骨髄破壊的前処置を用いた造血幹細胞移植の時代における、全身放射線照射(TBI)線量と分割が二次腫瘍(SMN)の発症に与える影響について検討した。
1969年から2014年に移植を受け、移植1年後に生存していた血液悪性腫瘍患者4500人、非悪性腫瘍患者405人の計4905人の患者のうち、499人に581のSMNが認められた(皮膚扁平上皮癌と基底細胞癌は除く)。フォローアップ期間の中央値は12.5年であり、移植後30年間でのSMNの累積罹患率は22.0%であった。年齢・性別・暦年を調整したSEER集団(アメリカの癌データーベース)と比較すると、SMNの標準化罹患比(SIR)は2.8倍であった。SMNのSIRが高かったのは骨(SIR, 28.8)、口腔(SIR, 13.8)、皮膚(SIR, 7.3)、中枢神経(SIR, 6.0)、内分泌器官(SIR, 4.9)であった。1000人年あたりの過剰絶対リスク(EAR)がもっとも高かったのは乳がん(EAR, 2.2)、口腔(EAR, 1.5)、皮膚(EAR, 1.5)であった。非分割照射(600-1000cGy)もしくは高用量の分割照射(1440-1750cGy)の患者でSMNの発症率が高かった。低容量のTBIにおけるSMN発症率は骨髄破壊的前処置(化学療法のみ)と同等であったが、それでも一般の集団と比較すると2倍高かった。これらのデータはTBIの線量と分割が移植後のSMN発症に強い影響をもたらすことを示している。SMNの累積発症率はフォローアップの期間の長さとともに増加するため、造血幹細胞移植のサバイバーは早期発見のため、効果的な治療を受けるためにも生涯にわたり観察が必要である。
(注)
標準化罹患比(STR)は比較しようとする集団(今回はSEER集団)の年齢階級別罹患率と同じと仮定した場合の期待罹患数と、実際に観察された罹患数の比

過剰絶対リスク(EAR)は放射線照射を受けることにより上乗せされる死亡率


令和1年10月7日
森口 慎

 

Gait speed, grip strength, and clinical outcomes in older patients with hematologic malignancies

高齢造血器腫瘍患者における歩行速度と握力と臨床転帰

歩行速度と握力が高齢血液腫瘍患者の臨床転帰を予測するかどうかを評価
75歳以上のMDS/白血病、骨髄腫、リンパ腫患者448人を前向きに評価
自施設、関連施設で6ヶ月以上追跡した314人は、緊急入院または救外受診の有無についても評価された。Cox比例ハザードモデルを用いて、生存率に対するハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を計算し、ロジスティック回帰にて急性期医療の使用についてオッズ比(OR)を計算した。
平均年齢75歳、年齢、性別、CCI、認知機能、治療強度、腫瘍のaggressiveness/typeを調整し、歩行速度が0.1m/s低下するごとの死亡率上昇(HR 1.20: 95%CI 1.12-1.29)。緊急入院のオッズ上昇(OR 1.33; 95%CI 1.16-1.51)、および急性期医療使用の増加(OR 1.34; 95%CI 1.17-1.53)が見られた。ECOG-PSが良好な患者(0または1)においても同様であった。
握力が5kg低下するごとに生存率が低下したが(調整後HR 1.24; 95%CI 1.07-1.43)、緊急入院や救外受診とは関連しなかった。
歩行速度とすべての共変量を含むモデルは、過去に効果が証明されているfrailty評価ツールとすべての共変量を含むモデルに匹敵する予測力を持っていた。

歩行速度の評価により、frailtyを正確に識別し、高齢血液腫瘍患者のPSとは無関係に結果を予測することが容易となる。


令和1年9月30日
酒徳一希

 

Outcome of Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation in Adult Patients with Philadelphia Chromosome-Positive Acute Lymphoblastic Leukemia in the Era of Tyrosine Kinase Inhibitors: A Registry-Based Study of the Italian Blood and Marrow Transplantation Society (GITMO).

TKI時代におけるフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の予後:GITMOのレジストリー研究

我々はTKI治療を受けたPhALL患者の臨床的な予後に関して述べる。441人が本研究に含まれた。年齢中央値は44歳(18-70歳)。441人の患者のうち全例が移植前にTKIを受けた(2005年~2016年)。これらの441人の患者のうち404人が寛解期で、37人が非寛解期であった。移植時のMRDは147人のみ陰性であった。46%が非血縁であった。移植片は末梢血幹細胞が70%。前処置は骨髄破壊的移植が82%(全身放射線照射が50%含まれた)、ATGが51%であった。
OSは1年、2年、5年で69.6%、61.1%、50.3%で、中央値62ヶ月であった。PFSは1年、2年、5年で60.2%、52.1%、43.7%であった。移植時のMRDが陽性群と比較してMRD陰性群のほうがOSとPFSは有意によかった(50% OS not reached vs 36ヶ月、P=0.015、50% PFS not reached vs 26ヶ月、P=0.003)。3ヶ月時点でのMRD陰性患者の予後は5年OS 70%であった。一方で、移植前に非寛解期であったPhALL患者のOSは7ヶ月で、PFSは5ヶ月であった。MRD陰性患者では、陽性群よりも5年CIRは低かった。(19.5 vs 35.4%, P=0.001)。

NRMに関して1年、2年、5年は19.1%(95%CI 15.5-22.9%)、20.7%(95%CI 17-24.7%)、24.1%(95%CI 20-28.5%)であった。NRMはmEBMTリスクで0-2点と比較して>3点で有意に高かった(15% vs 25%; P=0.016)。ここ最近におけるGITMOでTKI併用治療後移植を行った患者のOSの中央値は62ヶ月であった。mEBMT riskスコアはよくNRMを予測した。我々のデータは移植時あるいは移植後3ヶ月時点でのMRD陰性群の患者ですばらしい予後を示した。


令和1年9月9日
南野 智

 

Post-Transplant Cyclophosphamide versus Antithymocyte Globulin in HLA-Mismatched unrelated Donors transplantation

HLA不一致非血縁ドナーからの移植におけるPTCyとATGの比較

HLA不一致非血縁バンクドナー(MMUD)からの移植におけるGVHD予防としては一般にATGが用いられてけた。この条件でのPTCyの安全性と忍容性について、近年報告されてきているが、9/10MMUDでの移植において、両者を比較した報告はない。今回この2群をEBMTのレジストリデータを用いて、matched pair解析を行った。
93人のPTCy患者を179人のATG患者と比較、重症GVHDはPTCy群で有意に頻度が少なかった。また、PTCy群がLFSおよびGRFS(GVHD/relapse free survival)が良い結果であった。PBの使用、CR患者、同様の免疫抑制剤使用などのサブグループ解析でも、PTCyの優位性が示された。
ハプロ移植での設定と同様、PTCyの使用は9/10MMUD移植においても有効なGVHD予防であった。また、PTCyの使用は長期の疾患コントロールも良好であった。これらの結果は大規模無作為化試験で確認される必要がある。


令和1年8月19日
康 秀男

 

Immune signature drives leukemia escape and relapse after hematopoietic cell transplantation

免疫signatureは造血細胞移植後の白血病逃避および再発を決定する

健常人からの造血細胞移植(同種造血細胞移植, allo-HCT)は、養子免疫療法が血液がんを治癒し得ることを実証しているが、依然、移植後再発率は高い。その決定因子を説明するために、我々は、急性骨髄性白血病(AML)の経過中、連続的に患者から採取されたAML芽球のゲノム及び遺伝子発現プロファイルを解析した。我々は、移植後再発に特異的な、T細胞の共刺激および抗原提示を含む免疫関連プロセスを非常に多く含む転写signatureを同定した。2つの独立した患者コホートで、移植後再発時に、末梢血中ドナーT細胞の変化を伴う、AML芽球の細胞表面上の複数の共刺激リガンド(PD-L1, B7-H3, CD80, PVRL2)の脱制御を確認した。また、我々は、HLA class II regulator CIITAの発現低下による、白血病細胞表面のHLA-DR, -DQ, -DPの表面発現の頻回の欠損を証明した。我々は、HLA class II発現の消失、および抑制性checkpoint分子の発現上昇が、ドナー由来T細胞からのAML認識を無効にする新たな機序であることを示し、それぞれinterferon-γ、checkpoint阻害薬で阻害し得ることを示した。
我々の結果は、T細胞を介する同種認識に関連するpathwayの脱抑制は独自の特徴で、allo-HCT後のAML再発を決定しており、すぐに個別化治療に移すことが可能であることを実証している。。

令和1年8月19日
康 秀男

 

Allogeneic Stem Cell Transplantation for Patients with Natural Killer/T Cell Lymphoid Malignancy: A Multicenter Analysis Comparing Upfront and Salvage Transplantation

NK細胞腫瘍に対する同種造血幹細胞移植:Upfront vs salvage

NK細胞腫瘍は、節外性NK/T細胞リンパ腫(ENKTL)およびアグレッシブNK細胞白血病(ANKL)を含み、進行または再発/難治性ENKTLおよびANKLの転帰は依然として不良である。
同種幹細胞移植(allo-SCT)は、進行した疾患の再発を予防するためのupfrontでの地固め療法として、または再発しやすい疾患に対する化学療法後のサルベージ療法として使用されている。
我々は6つの病院でupfront(n=19)またはサルベージallo-SCT(n=17)を受けた36人の患者(ENKTL、n=26;ANKL、n=10)を後ろ向きに解析した。患者は、施設の方針に応じて骨髄破壊的(n=25)または骨髄非破壊的(n=11)レジメンを受けた。
Allo-SCT時の年齢の中央値は37歳(17-42歳)で、ANKL患者(8/10)はENKTL患者(11/26)より多くupfrontで施行されていた。前処置レジメン、ドナーソースおよびallo-SCT前の疾患状態は、upfront群とサルベージ群の間で差はなく、発熱性好中球減少症(n=20)および急性GVHD(n=16)は一般的な有害事象であった。Allo-SCT後の全生存期間中央値(OS)および無増悪生存期間(PFS)はそれぞれ11.8ヶ月および10.0ヶ月であった。12人の患者が疾患の再発で死亡し、12人が疾患関連以外の原因で死亡した。Allo-SCT後100日以内に10人が死亡した(10/24)。これらは主に疾患の再発に関連していた(n=8)。
Allo-SCT後のOSはENKTLとANKLの間(p=0.550)またはupfrontとサルベージの間(n=0.862)で差がなかった。フルドナーキメリズムはより良いPFSと有意に関連していた(p<0.001)。前処置およびドナーソースのPFSにおける関連は認められなかった(p>0.05)。
一部の患者がallo-SCT後に寛解を維持することができたことを考えると、allo-SCTはENKTLおよびANKL患者にとって有益となりうる。ただし、allo-SCTは、疾患の再発および非疾患関連死亡率のリスクが高いままであるため、厳選された患者にのみ実施されるべきである。

令和1年8月5日
田垣内優美

 

TP53 mutation status divides myelodysplastic syndromes with complex karyotypes into distinct prognostic subgroups

TP53変異は複雑核型MDSの予後を層別化する

MDS患者の治療においてリスク層別化は重要な問題である。3つ以上の染色体異常で定義される複雑核型はMDS患者の約10%を占め、予後不良である。しかしながら、複雑核型MDSは多様な染色体異常と遺伝子変異を含んでいる。複雑核型MDSのリスク層別化を改善するために、MDS国際ワーキンググループは複雑核型MDS患者359例のデータを解析した。遺伝子変異は55%の患者で同定されたが、TP53変異以外は頻度が低かった。TP53変異患者が同時に別の遺伝子変異を持つ頻度はさらに少なかった。例外的に、del(5q)(p<0.005)、monosomal karyotype(p<0.001)、5つ以上の染色体異常で定義される高度複雑核型(p<0.001)はTP53変異患者で多かった。Monosomal karyotype、高度複雑核型、TP53変異は個々にOS予後不良と関連していたが、monosomal karyotypeは多変量解析において有意ではなかった。多変量解析では、重症貧血(Hb<8.0g/dL)、NRAS変異、SF3B1変異、TP53変異、芽球上昇(>10%)、染色体3q異常、9番染色体異常、monosomy 7が強い死亡リスクとして同定された。複雑核型MDSに関連した予後不良リスクとしてTP53変異は決定的であり、これは臨床情報と核型を追加して考慮すればリスク評価システムを改善することが可能かもしれない。


令和1年7月29日
井戸健太郎

 

Impact of body mass index on outcomes of hematopoietic stem cell transplantation in adults

成人の造血幹細胞移植におけるBMIの意義

2503人の20歳以上の成人における同種造血幹細胞移植(HCT)患者の移植予後にbody mass index(BMI)が与える影響を後方視的NI解析した。患者年齢の中央値は51.7歳であった。非悪性疾患と悪性疾患共に対象とした。MACは52%、RICは48%であった。ドナーは血縁が42%、非血縁が58%であった。臍帯血移植は除外とした。PB

ドナーは86%で、GVHD予防としては少なくとも2剤の免疫抑制剤使用として、内1剤はカルシニューリン阻害薬であった。BMIに応じて患者をunderweight、normal weight、overweight、obese、very obeseに群分けした。エンドポイントとして、day100死亡率、全死亡率、NRM、再発とした。検査値に基づいた栄養状態の変化も調査とした。Underweightの患者は有意に早期生存率と全生存率が低く、NRMが高率であった。Very obeseの患者は前処置強度と関連したNRMの増加を認めた。長期のフォローアップで、NRMはnormal weight患者と比較してunderweight患者とobese患者とで増加していた。血清蛋白質とアルブミン値はBMIと相関しなかった。経腸栄養と低栄養患者に現在推奨されているが、経腸栄養と経静脈栄養の効果の検証は十分にはなされていない。肥満患者における移植前の減量に関するガイドラインはなく、移植前の急激な減量は有害な可能性がある。


令和1年7月22日
原田尚憲

 

Impact of gut colonization with butyrate-producing microbiota on respiratory viral infection following allo-HCT

同種造血幹細胞移植後の呼吸器ウイルス感染症に対する腸内細菌叢における酪酸産生菌の重要性

同種移植を施行される患者において、呼吸器ウイルス感染症はしばしば下気道感染症(LRTI)に進行しうる。腸内細菌叢は、肺におけるウイルス・細菌感染症に対する抵抗性獲得に貢献している。しかしながら、同種移植の状況下で、腸内細菌叢の構成やそれに関連した微生物由来の代謝産物が、上気道ウイルス感染後に発生するLRTIのリスクに繋がるかどうかは、明らかにされていない。同種移植症例から360例の糞便検体を生着時に集め、16SrRNAシークエンスにかけ、微生物叢の構成を同定し、nested subsetの糞便検体中の短鎖脂肪酸のレベルを測定した。移植後180日以内の呼吸器ウイルス感染とLRTIを同定した。臨床的、及び微生物叢に関するLRTIのリスク因子を、生存解析を行うことにより評価した。呼吸器ウイルス感染症は149(41.4%)例の症例で発症した。それらの症例のうち、47(31.5%)がLRTIをきたした。酪酸産生菌の割合が多い症例の方が、LRTIを発症する可能性が低く、それらは他の因子と独立していた(調整ハザード比=0.22、95%信頼区間0.04-0.69)。糞便内細菌叢における酪酸産生菌の割合が多いことが、同種移植例における呼吸器ウイルス感染症に対する抵抗性の増加と関連していた。


令和1年7月8日
林 哲哉

 

Applied informatics decision support tool for mortality predictions in patients with cancer

癌患者における死亡率予測のための応用情報学的意思決定支援ツール

目的:癌の治療選択肢が急速に進化しているため、癌専門医の臨床的意思決定プロセスの複雑さは、治療リスクと全死亡率の直感的評価による大きな挑戦となっている。臨床的に意義のある根拠に基づいた正確な予後評価の需要に応えるため、我々は治療開始前に高い死亡リスクを持つ患者を同定する解釈可能な予測ツールを開発した。
方法:大規模な国立癌センターから2004年-2014年の電子カルテ情報を収集し、401種類の患者属性、診断、遺伝子変異、治療歴、併存疾患、資源の利用、バイタルサイン、臨床検査結果といった予後予測因子を抽出した。最新の機械学習を用いて癌治療の開始からday60、90、180の死亡を予測するツールを作成した。
結果:46,646の癌治療と23,983名の患者を同定した。生存期間中央値は514日であった。我々の予測モデルは、新規データにおいてベンチマークモデルと比較して有意に優れた品質を達成した(AUC:0.83-0.86)。我々は、体重やアルブミン値など死亡のキーになる予測因子を同定した。この結果は、双方向的で解釈可能なツールとしてwww.oncomortality.comに示されている。

結論:我々の予測モデルは高リスク患者と低リスク患者を高精度に区別することが可能であった。電子カルテから十分なデータを得られることや機械学習の進歩により、このツールは価値観に基づいた意思決定や個別化されたケアの管理といった臨床実践に変革をもたらすような意義を持つ。


令和1年7月1日
岡村浩史

 

The Role of Allogeneic Transplantation for Multiple Myeloma in the Era of Novel Agents: A Study from the Japanese Society of Myeloma

新規薬剤時代における多発性骨髄腫に対する同種移植の役割

同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)は多発性骨髄腫患者にとって治癒を目指せる治療法の可能性があると考えられているが、新規薬剤が登場する中allo-HSCTの役割は不透明である。我々は2009年から2016年に19施設でallo-HSCTを施行された多発性骨髄腫患者65人を対象に後方視的検討を行った。患者が受けていた前治療数の中央値は3(1-7)で、auto-HSCTは含めず少なくとも1新規薬剤を使用していた。3年の無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)は、それぞれ18.8%(95%信頼区間[CI], 9.6%-30.3%)と47.2%(95%CI, 33.9%-59.4%)であった。多変量解析では、年齢が50歳以上であることとallo-HSCT 前にVGPR未満であることが有意にPFS(hazard ratio[HR],2.30,P=0.0063; HR,2.86; P=0.0059)とOS(HR,2.37,P=0.013; HR,2.74; P=0.040)を増悪させる因子であった。対照的に、50歳未満でallo-HSCT 前にVGPR以上を達成している患者の3年PFSとOSは、それぞれ64.3%(95%CI, 29.8%-85.1%)と80.2%(95%CI, 40.3%-94.8%)であった。ORRは86.4%(95%CI, 75.0%-94.0%)であった。VGPR以上の割合はallo-HSCT 前では29%であったがallo-HSCT後には71%となった。非再発死亡率は3年では23.4%(95%CI, 13.8%-34.4%)だった。年齢が50歳以上であることのみが、より高い非再発死亡率と関係していた(HR, 4.71; P=0.015)。我々はallo-HSCTが、新規薬剤が登場している現在において、前治療数の多い多発性骨髄腫患者に適していると示した。特に若年で化学療法感受性のある患者にとって見込みのある治療であると考えている。


令和1年6月24日
木村友美

 

Pre-hematopoietic cell transplant Ruxolitinib in patients with primary and secondary myelofibrosis

原発性および二次性骨髄線維症患者における移植前ルキソリチニブ治療

JAK1/2選択阻害薬であるルキソリチニブ(Rux)は、骨髄線維症(MF)を有する大多数の患者において脾臓のサイズの縮小および全身症状の改善をもたらす。したがって、MF患者に造血細胞移植(HCT)を行う前にRuxを投与すると、生着を改善し、移植片対宿主病(GVHD)の発生率と重症度を低下させ、非再発死亡率(NRM)を低くすると仮定された。我々はMF患者におけるHCT後の転帰に対するHCT前のRuxの影響を評価するために、第2相前向き試験を実施した。主要評価項目は2年全生存期間で評価を行った。現在までに、28人の患者(平均年齢56歳)が移植されている。HCTを行う前にRuxの投与期間の中央値は7ヶ月であった。23人の患者が骨髄破壊的な前処置を受け、5人がRICを受けた。ドナーは、14人がHLA合致血縁ドナー、11人がHLA合致非血縁ドナー、1人がアレルミスマッチ日血縁ドナー、および3人が臍帯血であった。サイトカイン放出症候群(CRS)をきたした症例はなく、すべての患者が持続的生着を達成した。2名がNRMで死亡し、2名が再発を認めた。追加期間中央値13ヶ月で、全生存率はHCT後1年で93%(95%CI:0.73, 0.98)および2年後で86%(95%CI:0.61, 0.96)だった。この研究は、HCT前のRuxがHCT後の転帰を改善する可能性があることを示唆している。


令和1年6月17日
中井久実代

 

Long-term ex vivo haematopoietic-stem-cell expansion allows nonconditioned transplantation

前処置なく移植可能な造血幹細胞を長期間ex-vivoで増幅

多分化能(multipotency)・自己複製能(self-renewal)を併せ持つ造血幹細胞(HSC)は、移植後の造血システムを再構築する。これにより免疫不全症や白血病など様々な疾患に治癒をもたらし得る。骨髄中のHSC微小環境・ニッチの性質を通して、HSCを維持するための因子を探索し続けてきたが、これまでにex vivoでHSCを安定的に増やすことは達成されていない。今回筆者らは、アルブミンを含まない培養システムを開発し、機能的なマウスHSCのex vivoでの増殖に成功した。筆者らは系統だった最適化法を用いる事で、高濃度トロンボポエチン(TPO)・低濃度のstem cell factor(SCF)およびファイブロネクチンがHSCの自己複製維持をもたらすと明らかにした。血清アルブミンはこれまで長い間、HSCの培養に主たる必要因子と考えられてきたが、ポリビニルアルコールがアルブミンよりも優れた代替因子であり、GMPにも準拠する。この条件により機能的なHSCを1ヶ月以上に渡って236倍~899倍に増幅させることができた。一方でex vivoのHSC自己複製能に関しては、クローン毎によって大きく異なっていた。このシステムにより、通常移植に必要な放射線照射などの細胞障害性の前処置なしに、わずか50細胞から培養したHSC群で、同系レシピエントに生着させることが可能であった。この発見は基礎的なHSC研究だけでなく、臨床血液学としても非常に意義のある事である。


令和1年6月10日
中嶋康博

 

Melphalan-Based Reduced-Intensity Conditioning is Associated with Favorable Disease Control and Acceptable Toxicities in Patients Older Than 70 with Hematologic Malignancies Undergoing Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation

70歳以上の血液悪性腫瘍患者に対するメルファランを用いたRICによる同種移植は許容される毒性で良好な疾患コントロールが得られる

血液悪性腫瘍の高齢患者への同種造血幹細胞移植の適応が増加してきている。しかし、70歳以上の患者の転帰に関するデータは限られており、この集団に対する標準的なレジメンは確立されていない。この後向き研究では、City of HopeのメルファランベースのRICを用いて、同種造血幹細胞移植を施行した70歳以上の53人の連続した患者の転帰を評価した。生着は迅速で、好中球生着の中央値は15日であった。患者の95%以上の移植から6週間以内に完全ドナーキメリズムを達成した。追跡期間中央値31.1ヶ月で、2年OS、PFS、およびNRMは、それぞれ68.9%、63.8%、および17.0%であった。1年および2年の累積再発率はそれぞれ17.0%、および19.2%であった。グレードII-IVの急性GVHDの100日累積発生率は37.7%(グレードIII-IV、18.9%)であり、慢性GVHDの2年累積発生率は61.9%(extensive 45.9%)であった。OSの唯一の重要な予測因子は、疾患高リスクindexであった。

今回の研究での移植関連の合併症の種類および率は、RICで治療された若年患者と違いはなかった。結論として、メルファランベースの前処置による同種造血幹細胞移植は、70歳以上の患者においても、毒性およびNRMが許容できるレベルで、再発率は低く、良好なOSおよびPFSであった。


令和1年6月3日
中前博久

 

Analysis of cardiovascular and arteriothrombotic adverse events in chronic-phase CML patients after frontline TKIs

初回チロシンキナーゼ阻害剤治療をうけたCML患者における心血管系または動脈血栓症の有害事象の解析

チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)で治療されたCML患者の心血管系または動脈血栓症の有害事象(CV-AEまたはAT-AE)について、各TKI間の発生率および特徴は体系的に解析されていない。今回、異なる前向き試験で初回TKI治療された531名(イマチニブ400mg(n=71)、800mg(n=203)、ニロチニブ(n=108)、ダサチニブ(n=106)、ポナチニブ(n=43)。)の、新規発症CV-AEとAT-AEの特徴と発生率を分析した。
ポアソン回帰モデルでAE発生率に関連する因子を評価。追跡機関中央値は94ヶ月(範囲2−195ヶ月)。全体で237人(45%)がCV-AEを発症し、46人(9%)がAT-AEを発症した。高血圧は175人の患者で見られた最も一般的なAE(33%;17%でグレード3/4)。CV-AEおよびAT-AE発生率(IR)は、100人年あたり8.6(95%信頼区間(CI)7.6-9.8)および1.7(95%CI 1.2-2.2)だった。TKIのうち、イマチニブ400mgと比較して、ポナチニブは発生率がCV-AEが 40.7(27.9-59.4)およびAT-AEが9.0(4.1-20.1)と最も高い発生率(IR)を示した。多変量解析でも、ポナチニブはCV-AE(4.62;95%CI、2.7-7.7;P=.0001)およびAT-AE(6.38;95%CI、1.8-21.8)の発生率比(IRR)の増加と関連していた。要約すると、新しい世代のTKI、特にポナチニブで治療されたCML患者において、CV-AEおよびAT-AEの危険性が増大する。TKI治療中の患者は、血管合併症について情報提供が行われ、注意深く監視される必要がある。


令和1年5月27日
中前美佳

 

Safety and Seropositivity after Live Attenuated Vaccine in Adult Patients Receiving Hematopoietic Stem Cell Transplantation

成人造血幹細胞移植患者における弱毒化生ワクチン接種後の安全性と抗体陽性率

いくつかのガイドラインで造血幹細胞移植(HSCT)患者における、ワクチンで予防可能な疾患(VPD)に対するワクチン接種は強く推奨されている。しかし、弱毒化生ワクチン接種後の安全性と抗体陽性率は、成人HSCT患者においては不明のままである。我々は同種HSCT(n = 74)、自家HSCT(n = 39)、化学療法(n = 93)を受けた日本の成人患者で、麻疹、風疹、ムンプス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に対する抗体価を解析した。同種移植患者における麻疹、風疹、ムンプス、VZVの抗体陽性率は、それぞれ20.2%、36.4%、5.4%、55.4%であった。これらは自家移植患者における割合と同等であったが、化学療法患者よりも有意に低かった。抗体価は時間とともに徐々に減少する傾向があった。抗体陰性29人の同種移植患者および8人の自家移植患者に、VPDに対する弱毒化生ワクチンが接種された。麻疹、風疹、ムンプスに対する抗体価は2回のワクチン接種後に有意に増加し、抗体陽性率はそれぞれ19%、30%、27%まで増加した。3人(8.1%)は軽度の有害事象をみとめたが、速やかに改善し、弱毒化生ワクチンの安全性が示された。多変量解析において、慢性GVHDの既往は、麻疹の高い抗体陽性率ならびにワクチン接種後の高い陽転化率と有意に関連していた。VPDに対する弱毒化生ワクチンは、抗体陰性の成人HSCT患者に安全に接種された。抗体陰性HSCT患者における予防接種の有効性を評価するには、さらなる観察研究が不可欠である。

令和1年5月20日
廣瀬朝生

 

Brentuximab vedotin with chemotherapy for CD30-positive peripheral T-cell lymphoma (ECHELON-2): a global, double-blind, randomised, phase 3 trial

CD30陽性末梢T細胞リンパ腫に対するブレンツキマブベドチンと化学療法の有用性

CD30陽性末梢T細胞リンパ腫に対するブレンツキマブベドチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾン(A+CHP)とCHOPの有効性と安全性を比較した。ECELON-2試験は、二重盲検、二重ダミー、無作為化、phase3試験である。17カ国132施設から未治療のCD30陽性T細胞リンパ腫(75%が全身性未分化大細胞型リンパ腫)患者を無作為に1:1に割り付け、6または8コースのA-CHPまたはCHOP療法で治療した。無作為化は。病理組織とIPIスコアによって層別化された。全患者にシクロホスファミド 750mg/m2およびドキソルビシン 50mg/m2を各サイクルの1日目に静脈投与し、プレドニゾン 100mgを各サイクルの1日目から5日目に経口投与し、ブレンツキマブベドチン 1.8mg/kgおよび、プラセボ形態のビンクリスチンを静脈内投与(A+CHP群)またはビンクリスチン 1.4mg/m2を投与し、プラセボ形態のブレンツキマブベドチンを静脈内投与(CHOP群)。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)としITTで分析した。結果2013年1月24日から2016年11月7日の間に、601人の患者が適格性を評価され、そのうち452人の患者が登録され、226人がA+CHPグループとCHOPグループの両方に無作為に割り当てられた。無増悪生存期間の中央値は、A+CHP群で48.2ヶ月(95%CI 35.2-NE)、CHOP群で20.8ヶ月(12.7-47.6)(ハザード比0.71[95%CI 0.54-0.93]、p=0.0110)であった。有害事象は発熱性好中球減少症(A+CHP群で41[18%]、CHOP群で33[15%])および末梢神経障害(A+CHP群で117[52%]、CHOP群で124[55%])の発症率および重症度を含めて2群間で類似していた。致命的な有害事象は、A+CHP群の7人(8%)、CHOP群の9人(4%)に発生した。
無増悪生存期間および全生存期間を安全にかつ有意に改善し、CD30陽性末梢性T
細胞リンパ腫患者に対する初期治療として、A+CHPは、CHOPよりも有用であることが示された。

令和1年5月13日
谷澤 直

 

Randomized comparison of low dose cytarabine with or without glasdegib in patients with newly diagnosed acute myeloid leukemia or high-risk myelodysplastic syndrome

初発AML、高リスクMDSに対するキロサイド±glasdegibの比較試験

Glasdegibはヘッジホッグ経路阻害剤の1つである。この試験は第U相無作為化非盲検多施設試験であり、強力な化学療法に不耐のAMLや高リスクMDSにおけるglasdegib+低用量シタラビン(LDAC)の有効性を評価した研究である。Glasdegib 100mg(経口投与、QD)を28日周期で連続投与した。LDAC(皮下投与、BID)を28日間で10回投与した。患者(細胞遺伝学的リスクによる層別化)は、glasdegib/LDAC

またはLDACを受けるために無作為化された(2:1)。主要評価項目は全生存期間(OS)であった。88人がglasdegib/LDAC、44人がLDACに無作為に割り付けられた。OSの中央値(80%CI)は、glasdegib/LDACで8.8(6.9-9.9)月、LDACで4.9(3.5-6.0)月であった(HR 0.51;80%CI、0.39-0.67、p=0.0004)。glasdegib/LDACの15例(17.0%)およびLDACの1例(2.3%)の患者は完全寛解(CR)を達成した(p<0.05)。グレード3、4の非血液毒性は、glasdegib/LDACによる肺炎(16.7%)、疲労(14.3%)、ならびにLDACによる肺炎(14.6%)であった。臨床的有効性は、多様な変異プロファイルを有する患者で示された。GlasdegibとLDACの併用療法は良好なリスクプロファイルがあり、強力な化学療法を受けることができないAML患者にとって有望な選択肢となる可能性がある。
平成31年4月22日
森口 慎

 

Haploidentical versus unrelated allogeneic stem cell transplantation for relapsed/refractory acute myeloid leukemia: a report on 1578 patients from the Acute Leukemia Working Party of the EBMT

再発難治AMLに対するハプロ移植vs非血縁移植:EBMT

再発難治性AMLは予後不良であり、同種移植が長期予後の期待できる唯一の選択肢とも言える。HLA適合血縁ドナーがいない場合、非血縁HLA10/10、9/10ドナーやハプロ血縁ドナーが代替ドナーとして検討される。本研究では、2007年から2014年の間にEBMT registryに登録された、PTCyハプロSCT199例、非血縁HLA10/10 1111例、非血縁9/10 383例について移植outcomeを比較した。群間の疾患リスト不均衡を是正するためpropensity score weighted analysisを行った。移植から2年Leukemia-free survivalはハプロ、非血縁HLA10/10、非血縁HLA9/10でそれぞれ22.8%、28%、22.2%であった(P=NS)。多変量解析では、leukemia-free survival、OR
、再発率、NRM、GRFSは3群間で有意差はなかった。2つの予後因子(rel1 vs rel2、予後不良染色体の有無)が移植後の高い再発率と関連していた。25%の患者が同種移植後に長期寛解を得ている。ハプロ移植は再発難治性AMLに対する治療選択肢である。

平成31年4月15日
酒徳一希

 

Oral versus Aerosolized Ribavirin for the Treatment of Respiratory Syncytial Virus Infections in Hematopoietic Cell Transplantation Recipients

造血幹細胞移植患者のRSV感染症治療における経口と吸入リバビリンの比較

Background
RSV感染症に対する経口リバビリンの使用はまだ十分な研究がなされていない。吸入リバビリンの価格の高騰のために、我々は移植後患者における吸入と経口のリバビリンの予後の比較を行った。
Methods
我々は2014年9月から2017年4月にかけて経口あるいは吸入リバビリンの投与を受けた124人のRSV感染症を発症した移植患者の診療録を検討した。LRI(下気道感染)への進展や死亡を低・中・高リスクと分類するためにISIが用いられた。
Results
70人(56%)が吸入リバビリンの投与をうけ、54人(44%)が経口リバビリンであった。LRIへの進展は吸入群・経口群とも27%であった(P=1.00)。死亡率は両群間で差はなかった(30日: 吸入10% vs 経口 9%、P=1.00、90日:吸入 23% vs 経口 11%、 P=0.10)。CART解析ではISI7点以上が30日死亡率の予後不良因子となった。ISI7点以上の患者において、30日死亡は全体と比較して増加したが、吸入群および経口群で同等(両群とも33%)であった。Propensity scoreで調整したCox解析において経口と吸入の両群で似た死亡率であった(30日:HR 1.12, 95%CI 0.345−3.65, P=0.845、90日:HR 0.52, 95%CI 0.192−1.411, P=0.199)。
Conclusion
RSV感染症をもった移植患者において吸入と経口では同等の予後であった。経口リバビリンは価格を節約しながら、吸入リバビリンの有用な代替薬となる可能性がある。

平成31年4月8日
南野 智

 

Three prophylaxis regimens (tacrolimus, mycophenolate mofetil, and cyclophosphamide; tacrolimus, methotrexate, and bortezomib; or tacrolimus, methotrexate, and maraviroc) versus tacrolimus and methotrexate for prevention of graft-versus-host disease with haemopoietic cell transplantation with reduced-intensity conditioning: a randomised phase 2 trial with a non-randomised contemporaneous control group (BMT CTN 1203)

RISTにおけるGVHD予防法の比較(Tac+MMF+CY, Tac+MTX+bortezomib, Tac+MTX+maravirocvsTac+MTX

Background
悪性疾患の再発なしにGVHDを予防することは同種移植の最終的なゴールである。我々は一般的な複合主要評価項目を用いて、maraviroc(CCR5阻害剤)、bortezomib、PTCyを用いたGVHD予防をTac+MTXと比較して評価し、第3相試験で検証すべき最善の介入法を明らかにすることを目的とした。
Methods
本多施設共同第2相介入研究において、RICでのHCTを受ける18-75歳の患者を無作為に次の3群に1:1:1で割りつけた。1)Tac+MMF+PTCy(day3、4 Cy50mg/kg/day投与後、day5よりTacとMMFを開始、MMFはday5-35で投与し、1g/回を超えない範囲で5-15mg/kg/回、1日3回)、2)Tac+MTX+Bortezomib(day1,4,7 Bor1.3mg/m2)。3)Tac+MTX+maraviroc(maravirocは300mg 1日2回経口投与、day-3から30)。2)、3)において、MTXはday1:15mg/m2、day3,6,11:10mg/m2、Tacはday-3から0.05mg/kg、2回/dayで経静脈的投与(または経口投与)し、target濃度を5-15ng/mlに設定、少なくともday90まで維持し、以後day180までで漸減中止。
それぞれの群は、本研究に参加していない施設で、本研究と同じ適用基準を満たし、同時期にTac+MTXを用いて移植された非無作為化前向きコホート(コントロール群)と別々に比較。主要評価項目(GRFS)は、移植日から、gradeIII-IV aCVHD、全身治療を要するcGVHD、再発または死亡までの機関として設定。各群はmodified ITTで解析。予定の症例を登録して終了し、予定通り解析。Clinicaltraial.govに登録(NCT02208037)。
Findings
2014/11/17-2016/5/18で、31の米国の移植施設から273例が登録され、無作為に3群に割つけられ、6例が除外、(Tac+MTX+Bor:89例、Tac+MTX+maraviroc:92例)、2014/8/1-2016/9/14でコントロール群224例を登録し、Tac+MTX投与での移植を施行。合併症頻度が多かったこと、前処置レジメン分布が異なっていたことを除いて、コントロール群は介入群と背景は一致。GRFSに関しては、コントロール群と比較して、PTCy群でHR:0.72(90%CI:0.54-0.94。p=0.044)、Bor群でHR:0.98(90%CI:0.76-1.27、p=0.92)、maraviroc群でHR:1.10(90%CI:0.86-1.41、p=0.49)。238人がgrade3-4の毒性を経験。PTCy群ではgrade3が12例(13%)、grade4が67例(73%)、Bor群ではそれぞれ10例(11%)、68例(76%)、maraviroc群ではそれぞれ18例(20%)と63例(68%)。最も一般的なものは、血液学的毒性(それぞれ77例(84%)、73例(82%)、78例(85%))と心毒性(それぞれ43例(47%)、44例(49%)、43例(47%))。
Interpretation
Tac+MMF+PTCyは最もよいGRFSをもたらす有望な介入方法であった。今後この方法はTac+MTXとの前向き第3相無作為化試験で比較される予定である。

平成31年4月1日
中根孝彦

 

Extracellular vesicles as potential biomarkers of acute graft-vs-host disease

細胞外小胞の急性GVHDバイオマーカーとしての可能性

急性GVHD (graft-vs-host disease) は、同種移植後の重大な合併症である。我々は、細胞外小胞 (EVs, extracellular vesicles) の表面抗原と急性GVHDの関連を調べるために探索的研究を行った。EVsは、同種移植を受けた41名の多発性骨髄腫患者の血清サンプルから抽出された。EVsは、急性GVHDの予測因子として報告されている特異的膜タンパクに対する13種類の抗体パネルを用いて、フローサイトメトリーにより特徴を調べた。我々は、ロジスティック回帰分析とCox比例ハザードモデルの両方で、EV表面上の3つの可能性あるバイオマーカーと急性GVHD発症との関連を認めた。我々の研究では、CD146 (MCAM-1) は、GVHD発症のほぼ60%リスク増加と関連し、一方、CD31(PECAM-1) とCD140-α (PDGFR-α) はそれぞれ、ほぼ40%、60%のリスク減少と関連した。これらのバイオマーカーは、ベースラインから急性GVHD発症までのシグナル値の有意な変化も示した。我々の新規の研究は、EVsと急性GVHDの潜在的な関連についての今後の研究を促進させる。より大規模の前向き多施設研究が現在進行中である。

平成31年3月25日
康 秀男

 

Circulating Tumor DNA Measurements As Early Outcome Predictors in Diffuse Large B-Cell Lymphoma

DLBCLにおける早期アウトカム予測としての循環腫瘍DNA測定

目的
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者のアウトカムは様々な要素から成り、既存の方法では治療の失敗を予測することは困難である。治療アウトカムを予測するために、治療前および治療中の循環腫瘍DNA(ctDNA)の予後への影響を評価した。
患者と方法
トレーニングデータおよびバリデーションデータを用いて、6つのセンターで治療を受けた217人の患者からctDNAの動態を調べた。我々はトレーニングデータの中で治療反応に関する閾値を定義するため、ディープシークエンシングによる癌個別化プロファイリングを用いて、治療初期のctDNA動態を細かく分類した。これらの閾値は、2つの独立したバリデーションデータで評価された。最後に、我々は、国際予後指数(IPI)およびPET/CTを含む確立されたリスク因子を含めてctDNAの予後への影響を評価した。
結果
治療前、ctDNAは98%の患者で検出された。治療前のctDNAレベルは、初回治療と救援療法の両方の条件で予後に影響を及ぼした。トレーニングデータにおいて、ctDNAレベルは急速に変化し、1サイクル後の2-log減少(分子生物学的早期奏功[EMR:eearly molecular response])および2サイクル後の2.5-log減少(分子生物学的大奏功[MMR:major molecular response])で結果を層別化した。初めに、バリデーションデータではEMRまたはMMRを達成している初回治療を受けた患者は、24ヶ月で優れたアウトカムを示した(EMR:EFS 83% vs 50%; p=0.0015、MMR:EFS 82% vs 46%; p=0.001)。また、EMRは最初のトレーニングデータで救援療法を受けている患者における24ヶ月時点での優れたアウトカムを予測した(EFS 100% vs 13%; p=0.011)。EMRとMMRの予後への影響は、2番目のバリデーションデータでさらに確認された。両コホートにおけるIPIおよびPET/CTを含む多変量解析では、分子王党派EFSおよびOSを含むアウトカムに独立して予後に関与した。
結論
治療前のctDNAレベルと分子反応は、リンパ腫における独立した予後予測因子である。これらのリスク因子は、将来的に個別のリスク別治療選択へと導く可能性がある。

平成31年3月18日
田垣内優美

 

T-cell frequencies of CD8+ γδ and CD27+ γδ cells in the stem cell graft predict the outcome after allogeneic hematopoietic cell transplantation

幹細胞グラフト中のCD8+γδT細胞およびCD27+γδT細胞が同種造血幹細胞移植後のアウトカムを予測する

これまでもグラフト中のT細胞の同種移植後臨床アウトカムに対する影響は研究されてきた。多くの過去の研究はαβ細胞にフォーカスを当ててきたが、一方でγδ細胞はあまり注目を浴びてこなかった。γδ細胞が患者のアウトカム、特にGVHDの観点で有益なものであるのかどうかはオープンクエスチョンのままであった。本研究において、2013年-2016年の間に同種移植を受けた105例の患者でγδ細胞サブセットのグラフト構成を解析して。臨床アウトカムと関連があることがわかった。我々ははじめてCD8+γδ細胞割合が多いグラフトがaGVHD II-IIIの累積発症率の増加と関連があることを証明した(505 vs 22.65, p=0.008)。さらに、グラフト中のCD27+γδ細胞は原疾患再発(p=0.006)とCMV再活性化(p=0.05)に対して負の関連を示すことを証明した。我々は同種移植後臨床アウトカムが幹細胞グラフト中の異なるγδ細胞サブセット割合の影響を受けると結論づけた。また、我々はCD8+γδ臍簿が潜在的にアロ反応性を有し、aGVHD発症においてある一定の役割を担っているというエビデンスを提供している。本研究は同種移植における異なるγδ細胞サブセットの役割をより深く理解することの重要性を示している。

平成31年3月11日
井戸健太郎

 

Adding dasatinib to intensive treatment in core-binding factor acute myeloid leukemia-results of the AMLSG 11-08 trial

CBF-AMLにおけるdasatinib追加化学療法の成績(AMLSG11-08)

ドイツ・オーストリアAML研究グループ(AMLSG)によるphase Ib/IIa研究である。
CBF-AML成人患者を対象として一次治療としてマルチキナーゼ阻害薬であるダサチニブを寛解導入療法と地固め療法療法に追加し、また単剤で1年間の維持療法を行った。
この研究での主要複合評価項目は早期死亡(ED)と低形成による死亡(HD)の割合、grade 3-4の胸水・心嚢液、肝毒性の出現率、治療抵抗性(RD)の割合を含む安全性と実現可能性であった。
副次評価項目は累積再発率(CIR)と寛解時死亡(CID)および全生存率(OS)であった。
89人の患者がこの研究に組み込まれた。(年齢中央値49.5歳、19-73歳、t(8;21):37人、inv(16):52人)、EDもしくはHDの発生率は4.5%(4/89)、CRもしくはCRiの達成率は94%(84/89)であった。4年CIR、CID、OSはそれぞれ、33.1%、6.0%、74.7%であった。
この研究では陰性プロファイルは許容範囲内であり、結果も望ましいものであった。この成果を確かめるべく、成人CBF-AMLを対象としてダサチニブを用いた無作為phase III試験が進行中である。

平成31年3月4日
原田尚憲

 

HLA epitope mismatch in haploidentical transplantation is associated with decreased relapse and delayed engraftment.

ハプロ移植におけるHLAエピトープミスマッチは再発の減少と生着遅延に関連する

HLAの違いは、抗原またはアリルの違いにより伝統的に測定されてきたが、移植後大量シクロホスファミド製剤を用いたハプロ移植におけるその影響は未だ明らかではない。我々の知る限り、jハプロ移植におけるHLAeplet-derivedエピトープのミスマッチと臨床転帰の関係は明らかにされていない。我々は、後方視的に、単施設で移植後シクロホスファミドを用いたT細胞除去ハプロ移植を受けた148例の症例を解析した。HLAエピトープミスマッチは、HLA Matchmakerを用いて測定し、クラスとベクターで分類した。再発率を主要評価項目とした。我々の患者群における患者・ドナーペアごとのミスマッチエピトープの総数は、GVH方向では0-51(中央値24)であり、HVG方向では0-47(中央値24)であった。GVH方向のHLAクラスIIエピトープミスマッチが大きいほど、再発率が有意に低下し(adjusted hazard ratio {HR}, 0.952 per ME; p=0.002)、非再発生存率が改善した(adjusted HR 0.974 per ME; p=0.020)、HVG方向のHLAクラスIIエピトープミスマッチの増加は、GVH方向で再発リスクの減少と関連している一方で、HVG方向では血球数の回復に負の影響を与えた。HLA Matchmakerに基づいたHLAエピトープの検索は、ハプロ移植において臨床転帰を予測する新たな戦略になりうる。

平成31年2月25日
林 哲哉

 

Novel Ultrasonographic Scoring System of Sinusoidal Obstruction Syndrome after Hematopoietic Stem Cell Transplantation.

造血幹細胞移植後SOSの新規超音波診断スコアリングシステム

類洞閉塞症候群(SOS/VOD)は、よく知られた造血幹細胞移植(HSCT)後合併症である。経腹部超音波検査(AUS)は血流異常を可視化することができ、SOS/VODの診断に有用である。我々はAUS所見に基づいて、SOS/VODの新規診断スコアリングシステムの制度を前向きに評価した。106人の患者に移植後day14およびSOS/VODが疑われた時にAUSを実施した。106人の患者のうち、10人の患者(9.4%)がBaltimoreまたはSeattle基準によりSOS/VODと診断された。AUSの17所見(US-17スクリーニング)の単変量解析により、胆嚢壁肥厚、腹水症および傍臍帯静脈の血流シグナルなどの10のパラメーターからなる新規スコアリングシステム(HokUS-10)を確立した。感度と特異度はそれぞれ100%と95.8%であった。HokUS-10の診断制度は、US-17スクリーニングよりも有意に優れていた。10人の患者のうち4人においてSOS/VODのAUS検出は臨床診断に先行した。HokUS-10スコアリングシステムはSOS/VODの診断に有用である。しかしながら、我々の結果は他のコホートで検証されるべきである。

平成31年2月18日
岡村浩史

 

Chemoimmunotherapy with inotuzumab ozogamicin combined with mini-hyper-CVD, with or without blinatumomab, is highly effective in patients with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia in first salvage.

Ph陰性ALLに対するイノツズマブ±ブリナツモマブにmini-hyper-CVDを併用した初回サルベージ治療の有効性

Background:再発or難治性ALL患者(R/R ALL)の予後は不良である。イノツズマブとブリナツモマブは、共に単剤でR/R ALLに一定の効果をもたらす。強度減弱した化学療法と併用することで、これらの薬剤は第一サルベージとしてさらに有効となるかもしれない。
Methods:化学療法はhyperCVAD(シクロフォスファミド、ビンクリスチン、アドリアマイシン、デキサメサゾン)よりも強度を減弱し、アドリアマイシンを抜いたmini-HCVDを用いた。イノツズマブは1コース目はday3に1.8~1.3mg/m2、2~4コース目はday3に1.3~1.0mg/m2を投与された。39番目の患者以降は、イノツズマブの投与量を減量し、単日ではなく週毎の投与とした(1コース目は0.6+0.3mg/m2、2~4コース目は0.3+0.3mg/m2)。ブリナツモマブはイノツズマブ投与サイクル終了後のmini-HCVD5コース目から、最大8コース目まで投与された。
Results:第一再発のPh陰性ALL患者48人(年齢中央値39歳)がエントリー。44名(92%)に効果が認められ、35名(73%)はCRに到達した。効果のあった44名中、93%で微小残存病変(MRD)が陰性化した。24名(50%)がallo幹細胞移植を受けた。全グレードのVOD/SOSは5名(10%)に認められ、31ヶ月の観察期間で、PFSおよびOSの中央値は
それぞれ11ヶ月、25ヶ月、また2年のPFS、OSは42%、54%だった。allo移植24名中14名(13名はCR維持)は最終フォローアップで生存していた。化学療法の効果があり、allo移植を受けなかった20名の内、6名(30%)が最終フォローアップでCR維持していた。Propensity score matchingによると、mini-HCVDとイノツズマブ±ブリナツモマブ併用療法は、強力な救援療法やイノツズマブ単剤よりも効果が高かった。
Conclusions:mini-HCVDとイノツズマブ±ブリナツモマブ併用療法はR/R ALLの第一サルベージとして有望な結果が示された。

平成31年2月4日
中嶋康博

 

Measurable residual disease monitoring by NGS before allogeneic hematopoietic cell transplantation in AML

AMLにおける同種造血幹細胞移植前NGS-MRDの有用性

様々な体細胞遺伝子変異に適用可能なerror-corrected next-generation sequencing(NGS)-MRDを確立し、それを用いたAML患者(同種移植時に形態学的CR)116名での臨床的意義の検討。AML診断時にターゲットシークエンスに適した変異(計24種類)が108名(患者の93%)で見つかった。MRDは末梢血または骨髄検体で、(形態学的CRの病期で)同種移植前に測定され検討された。12名の患者でancestralクローンの保持 (変異アレル頻度: VAF>5%)が同定された。それを除いた残りの96名での検討では45%がMRD陽性 (median VAF, 0.33%; range, 0.016%-4.91%)だった。
再発の累積発症率(CIR)はMRD陽性群がMRD陰性群よりも高かった(HR, 5.58; P < .001; 5-year CIR, 66% vs 17%) が、非再発死亡率(NRM)にはMRD有無で有意な違いがなかった(HR, 0.60; P=0.47)。多変量解析では、CIRについては、診断時のFLT3-ITD/NPM1変異に加えて、MRD陽性が独立した予後不良の予測因子(HR, 5.68; P
< .001)であり、また、OSについては、前処置レジメンとTP53とKRAS変異に加えて、MRD陽性が予後不良の予測因子(HR, 3.0; P =.004)であった。
結論として、NGS-MRD陽性は広くAML患者に適用でき、再発と生存を高度に予測できる因子であり、AML患者の移植後管理を改良するのに役立つ可能性がある。

平成31年1月28日
中前美佳

 

Killer cell immunoglobulin-like receptor ligand mismatching and outcome after haploidentical transplantation with post-transplant cyclophosphamide

KIRリガンドミスマッチとPTCyハプロ移植後の予後

移植後のシクロホスファミド(PT/Cy)を用いた、T細胞非除去同種幹細胞移植は、有望な成績のため、ますます増加してきている。ドナーに存在するキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)リガンドがレシピエントに存在しないことで予測できる、NK細胞同種反応性は、T細胞除去ハプロ移植において予後を改善する。
我々は、444人の急性白血病患者におけるPT/Cyハプロを用いた移植後のKIRリガンドミスマッチの影響を探索した。全患者の37%がKIRリガンドのミスマッチを有した。患者は第1寛解(CR1)(39%)、第2寛解(CR2)(26%)、または活動性疾患(35%)であった。幹細胞源はPBSC(46%)またはBM(54%)だった。2年再発、非再発死亡率(NRM)、および生存率はそれぞれ、36.0%(95%CI、31.4-0.7)、23%(20.0-28.0)、および45.9%(40.8-51.0)であった。多変量解析では急性リンパ性白血病と比較し、急性骨髄性白血病(HR 0.55、P=0.002)、女性(HR 0.72、P=0.04)、および良好なPS(HR 0.71、P=0.04)、がより良い生存率との関連因子として特定された。高齢(HR 1.13、P=0.04)、活動性疾患(HR 3.38、P<0.001)、およびKIRリガンドミスマッチ(HR 1.41、P=0.03)が生存率悪化と有意に関係があった。KIRリガンドのミスマッチは、GVHDやNRMとは関係なく、高い再発率の関係の傾向を認めた。KIRリガンドミスマッチの影響は、PBSCを使用した患者においてより顕著であった。結論としてPT/Cyハプロにおいて、、KIRリガンドのミスマッチが良好な予後との関連のエビデンスはない。

平成31年1月21日
中前博久

 

Immune Escape of Relapsed AML Cells after Allogeneic Transplantation

造血幹細胞移植後の再発AMLにおける免疫逃避

背景:同種造血幹細胞移植はAMLの地固め療法として、免疫を介したGVL効果によって部分的に利益をもたらす。我々は、同種移植による免疫を介した選択圧が、再発疾患の腫瘍進展の特徴的なパターンを引き起こすと仮定した。
方法:造血幹細胞移植(HLA適合兄弟、HLA適合非血縁、HLA不適合非血縁)後に再発した15人と化学療法後に再発した20人の患者から、AMLの初発時と再発時のペア検体で拡張エクソームシーケンシングを行った。また、これらの検体の一部および検証のための追加検体について、RNAシーケンシングならびにフローサイトメトリーを行った。
結果:エクソームシーケンシングでは、移植後再発で観察された獲得および喪失した変異スペクトルは、化学療法後再発で観察されたものと同様であった。具体的には、移植後再発はこれまで知られていない免疫関連遺伝子のAML特異的変異の獲得や構造変化と関連していなかった。対照的に、移植後再発時に得られた検体のRNAシーケンシングでは、MHCクラスII遺伝子(HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQB1、HLA-DQB1、HLA-DRB1)の下方制御(初発時のペア検体のレベルより1/3?1/12まで低下など)を含む獲得免疫および自然免疫に関与する経路の調節異常をみとめた。フローサイトメトリーおよび免疫組織化学分析により、移植後再発した34例中17例で再発時にMHCクラスIIの発現が低下することが確認された。IFN-γ治療は、in vitroでAML芽球の表現型を急速に復元させることが示唆された。

結論:移植後のAML再発は、免疫関連遺伝子における再発特異的変異の獲得と関連していなかった。しかし、それは、抗原提示に関与するMHCクラスII遺伝子の下方制御を含む、免疫機能に影響し得る経路の調節異常に関連していた。これらのエピジェネティックな変化は、適切な治療によって可逆的であり得る
平成31年1月7日
廣瀬朝生

 

戻る