最新文献紹介(抄読会)
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2020年

 

Impaired immune health in survivors of diffuse large B-cell lymphoma

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫生存者における免疫障害 

Shree T, et al. J Clin Oncol. 2020 Feb 21:JCO1901937

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する治療の進歩により、生存者数は増加した。DLBCLそのものと、それに対する治療は免疫システムの機能を障害するが、より長期間の生存者における免疫状態についてはほとんど分かっていない。この後方視的コホート研究では、カリフォルニアがんレジストリ(CCR)に登録されたDLBCLの生存者21,680人を乳がん、前立腺がん、頭頸部がん、悪性黒色腫の生存者と比較し、がん診断1-10年後における自己免疫疾患・免疫不全・感染症の頻度を調査した。DLBCLの生存者は、その他のがんと比較して多くの免疫関連症状の罹患率比(IRR)が上昇していた。これらにはウイルス性・真菌性肺炎(10.8倍)、髄膜炎(5.3倍)、液性免疫不全(17.6倍)、自己免疫性血小板減少(12倍)が含まれた。ほとんどの症状に対するIRRは、晩期(がん診断5-10年後)においても高値が持続した。DLBCL治療にリツキサンが導入された後より持続して液性免疫不全に対するIRRは高値であったが、その他のリスク上昇は化学療法、移植、リツキシマブへの暴露では説明できないものであった。我々の知る限り、本研究はフォローアップ期間が延長した最も大きなコホート研究であり、DLBCL生存者において免疫状態が損なわれている事を示した。これらのリスクへの理解を深める事でDLBCL患者の長期ケアに意義のある改善をもたらす可能性がある。

令和2年3月9日 谷澤 直   

 

D-index-guided early antifungal therapy versus empiric antifungal therapy for persistent febrile neutropenia: a randomized controlled noninteriority trial

持続性発熱性好中球減少症に対するD-インデックスガイド下早期抗真菌療法と経験的抗真菌療法の比較:無作為化対照非内部性試験

Kanda Y, et al. J Clin Oncol. 2020 Mar 10;38(8):815-822.

目的:経験的な抗真菌薬治療(Empiric antifungal therapy:EAT)は持続性の発熱性好中球減少症の治療として推奨されているが、ほとんどの患者ではEATは過剰となる。好中球数のカーブと、校註級数が500/μLとなった時点での横軸に平行な直線とで囲まれた領域の面積によって算出されるD-indexは、好中球減少の期間と深さを反映し、個々の症例の侵襲性真菌感染症のリスクを、コストをかけることなくリアルタイムでモニターすることが可能となる。今回の研究では、持続性の発熱性好中球減少症症例に対し、新しい治療アプローチであるD-indexガイド下早期抗真菌治療(D-index-guided early antifungal therapy:DET)、すなわちD-indexが5500を超える、または血清検査や画像で真菌感染が検出されるまで抗真菌治療を延期するアプローチを調査し、多施設共同無盲検ランダム化比較試験でEATとの非劣性について検討を行った。

患者と方法:血液悪性腫瘍に対し、化学療法または造血幹細胞移植を行う423症例を無作為にEAT群とDET群に割り付けた。ポリエン系,エキノキャンディン系抗菌薬、ボリコナゾールを除く抗真菌薬の予防投与は許容された。EATまたはDETに基づいて、ミカファンギン150mg/日が投与された。

結果:413症例をITT解析した結果、probable(臨床診断例)/proven(確定診断例)の真菌感染症は、EAT群で2.5%、DET群で0.5%であり、これはあらかじめ決められていたDET群の非劣性基準を満たすものであった(-2.0%:90%CI,-4.0% to 0.1%)。Day 42における生存率は、EAT群で98.0%、DET群で98.6%、day 84における生存率は、EAT群で96.4%、DET群で96.2%であった。ミカファンギンの使用量はDET群で有意に減少した(60.2% vs 32.5%:p<0.001)。

結論:DETは、侵襲性真菌感染症を増悪させることなく抗真菌薬の使用量と医療コストを減少させた。DETは経験的治療やpreemptiveな治療(先制治療)に代わる合理的な選択肢になり得る。

令和2年3月2日 森口 慎

 

Results of a phase 1 study of quizartinib as maintenance therapy in subjects with acute myeloid leukemia in remission following allogeneic hematopoietic stem cell transplant 

同種移植後寛解状態の急性骨髄性白血病患者に対するキザルチニブ維持治療のフェーズ1試験の結果

Sandmaier BM, et al. Am J Hematol. 2018 Feb;93(2):222-231

FLT3-ITD変異急性骨髄性白血病(AML)は、再発のリスクが非常に高く、同種造血細胞移植(allo-SCT)後の転帰不良に関連しています。この2部構成、フェーズ1多施設非盲検逐次群における容量漸増試験は、allo-SCT後の維持療法として選択的かつ非常に強力なFLT3阻害作用を持つキザルチニブの容量制限毒性( DLT)、最大耐容量(MTD)、安全性/認容性を決定することを目的としています。Allo-HCT後に血液学的寛解になったFLT3-ITD変異AMLを有する13人の被験者は、2つのキザルチニブ二塩酸塩用量レベル(DL)のいずれかを受けた:40mg/(DL1, n=7)および60mg /d(DL2,n=6)で、最大24サイクルの28日サイクルで経口投与を行った。参加者の年齢中央値は43歳でした。すべての被験者は、HLA一致ドナーからの同種HCTを受けました。DL1で治療された1人の被験者とDDL2で治療された1人の被験者は、薬物中断を必要とするDLTを有していました(それぞれグレード3の胃出血とグレード3の貧血)。10人の被験者(77%)が1年以上にわたってキザルチニブを投与されました。5人(38%)が24サイクルを完了しました。4人の被験者(31%)は、有害事象のためキザルチニブを中止しました。1人の被験者(8%)はサイクル1で再発し、治療を中止しました。最も一般的なグレード3/4の有害事象は、好中球減少(23%)、貧血(15%)、白血球減少(15%)、リンパ球減少(15%)、および血小板減少(15%)でした。この研究では、容認できる耐用性と、ヒストリカルコホートと比較してキザルチニブ維持による同種HCT後の再発率低下の証拠が示されました。MTDは特定されなかったが、再発難治性AMLの1日30および60mg容量のランダム化比較に基づいて、1日60mgが連続投与の最高容量として選択された。

令和2年2月17日 南野 智

 

Reproducing the molecular subclassification of peripheral T-cell lymphoma-NOS by immunohistochemistry
免疫組織化学による末梢T細胞リンパ腫-NOSの分子分類の再現

 Amador C, Blood. 2019 Dec 12;134(24):2159-2170

PTCLはヘテロな集団からなる成熟T細胞性腫瘍であり、そのうちの約1/3はPTCL-NOSである。我々は、以前の報告で、遺伝子発現プロファイリング(GEP)を用いてPTCL-NOSをPTCL-GATA3とPTCL―TBX-21という、発癌経路や予後において生物学的に異なる2つのサブタイプに定義付けた。本研究では、パラフィン組織において、主要な転写因子であるGATA3およびTBX21と、その標的蛋白であるCCR4およびCXCR3に対する抗体を用いて、2つのサブタイプを同定するために免疫組織化学的(IHC)アルゴリズムを策定した。 トレーニングコホートとして49例のPTCL-NOSにおいて、免疫組織学的アルゴリズムによって示される2つのサブタイプの一致率はGEPとの比較において高い感度を示し(85%)、有意なOSの違いを示した(p=0.03)。IHCアルゴリズムによる分類は病理医間において高い再現性を示し、124例のPTCL-NOSの第2コホートで検証された。PTCL-GATA3とPTCL-TBX21群のOSにおける有意差が示された(p=0.003)。多変量解析において、IPI高スコア(3-5)およびIHCにより同定PTCL-GATA3群であることが有意なOS不良因子であった(p=0.0015)。 更に、IHCで定義された2群間において、顕著な形態学的特徴の優位な違い(p<0.001)を示し、PTCL-TBX21群では活性型CD8+細胞障害性T細胞が有意に豊富であった(p=0.03)。IHCアルゴリズムは、実臨床の場で2群を同定し、患者の将来の臨床方針の決定や臨床研究でのリスクの層別化に役立つであろう。

令和2年2月10日 中根孝彦 

 

The mechanistic study behind suppression of GVHD while retaining GVL activities by myeloid-derived suppressor cells.
骨髄由来免疫抑制細胞(myeloid-derived suppressor cells)によるGVL活性の保持 ならびにGVHD抑制の機構研究
 Zhang J Leukemia. 2019 Aug;33(8):2078-2089
 移植片対宿主病(Graft-versus-host disease, GVHD)は、血液悪性腫瘍を治療する ために同種造血細胞移植(allo-HSCT)を広く利用することを妨げる主要な障壁であ る。骨髄由来免疫抑制細胞(myeloid-derived suppressor cells, MDSCs)は種々の 病理的状況において非常に重要な免疫抑制細胞として認識されてきている。本研究に おいて、我々はMDSCsに固有の機能的特性がallo-HSCT関連GVHDを制御するのに利用で き得るかどうかを調べた。MHCミスマッチとmiHAミスマッチを含む複数のマウスGVHD/ GVLモデルを使用して、我々は、CD115+MDSCsが効率的にGVHDを抑制するが、移植片対 白血病効果(graft-versus-leukemia, GVL)は有意に減弱しないことを実証した。GV HDモデル、GVLモデルのそれぞれにおいて治療されたマウスの80%、67%が防護された。 このGVHDとGVL分離のメカニズム、特にMDSCsで治療されたマウスにおけるドナー由来 のメモリー形質を有するNKG2D+CD8 T細胞が出現することが確認された。ドナーT細胞 上のNKG2D発現は同種のリンパ腫細胞の根絶に必要であった。さらに、同種白血病細 胞に細胞溶解活性を示した長期生存のMDSCsレシピエントでは有意に制御性T細胞が増 加し、さらに重要なことに、NKG2D+CD8 T細胞が有意に増加していた。これらの結果 はMDSCsがGVHDを抑制する一方、NKG2D+CD8メモリーT細胞の選択的誘導を通じてGVL活 性を維持する、新規の細胞療法として使用し得ることを示している。

令和2年2月3日 康 秀男

 

Pembrolizumab in Relapsed or Refractory Primary Mediastinal Large B-Cell Lymphoma..
再発/難治原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対するペンブロリズマブ
Armand P J Clin Oncol. 2019 Dec 1;37(34):3291-3299
目的:再発・難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(rrPMBCL)の患者の予後は不良である。その治療法は早急に求められており、現在のところ満足のいくものではない。PMBCLは9p24における異常とprogrammed cell death-1(PD-1)リガンド(PD-L1)の過剰発現に関連しているため、PD-1阻害の影響を受けやすいと仮定されている。
方法:Phase IB KEYNOTE-013(NCT01953692)およびphase II KEYNOTE-170(NCT02576990)の研究では、rrPMBCLの成人はペンブロリズマブを最長2年間、または疾患の進行または許容できない毒性が生じるまで投与された。主要エンドポイントは、KEYNOTE-013の安全性と客観的な奏功率、およびKEYNOTE-170の客観的効果判定であった。2次エンドポイントには、奏功期間、無増悪生存期間、全生存期間、安全性が含まれた・探索的エンドポイントには、バイオマーカーとペンブロリズマブの活性との関連が含まれていた。
結果:客観的な奏功率は、KEYNOTE-013の21人の患者で48%(7人のCR:33%)、KEYNOTE-170の53人の患者で45%(7人のCR:13%)であった。KEYNOTE-013で29.1ヶ月、KEYNOTE-170で12.5ヶ月の追跡期間中央値の後、どちらの研究でも効果持続期間の中央値には達しなかった。少なくとも1年間無治療でCRを維持していた2人の患者を含むCR患者のうち、疾患の進行h認められなかった。治療関連の有害事象は、KEYNOTE-013の患者の24%およびKEYNOTE-170の患者の23%で発生した。治療関連死は認めなかった。評価可能な42人の患者のうち、9p24遺伝子異常の値はPD-L1発現と関連しており、それ自体が無増悪生存期間と有意に関連していた。
結論:ペンブロリズマブは、rrPMBCL患者において高い奏功率、持続的な効果、および管理可能な安全性プロファイルに関連している。

令和2年1月27日 田垣内優美
Dynamic Graft-versus-Host Disease-Free, Relapse-Free Survival: Multistate Modeling of the Morbidity and Mortality of Allotransplantation.
ダイナミックGRFS:同種移植後の合併症と死亡のMultistateモデリング
Holtan SG Bone Marrow Transplant. 2019 Jun;54(6):839-848
GVHDフリーかつ再発フリーな生存(GRFS)は同種造血幹細胞移植後の完全で理想的な回復を意味する。しかしながら、オリジナル版GRFSで指摘されているように、この複合エンドポイントは移植後合併症が治療で改善する可能性を考慮できていない。移植後のGVHDと再発における治療反応性を考慮した生存率をより正確に推定するために、ミネソタ大学で初回移植を受けた血液腫瘍患者949例のアウトカムデータから我々はダイナミックGRFS(dGRFS)を開発した。GVHDや再発に対する治療に成功する患者も存在するため、dGRSFはオリジナル版GRSFよりも高くなる(1年で37.0% vs. 27.6%、4年で37.4% vs. 22.2%)。イベント非発生集団の平均追跡期間はオリジナル版GRFSと比較してdGRFSでは0.52年長かった(95% CI, 0.45-0.58)。患者年齢(p<0.001)、疾患リスク(p<0.001)、前処置強度(p=0.007) 、ドナータイプ(p=0.003)はいずれもdGRFSに有意な影響を与えた。dGRFSというMultistateモデルは同種移植における連続的で現実に近い重症合併症と死亡の発生頻度を推定することができる。移植からの回復に関するより正確なモデリングがより多くの移植コミュニティに貢献できるように、我々はサプリメンタリーマテリアルにdGRFS算出のためのRコードを提供する。
  
令和2年1月20日 井戸健太郎

 

Impact of a novel prognostic model, hematopoietic cell transplant-composite risk (HCT-CR), on allogeneic transplant outcomes in patients with acute myeloid leukemia and myelodysplastic syndrome.
AML,MDS患者に対する同種造血幹細胞移植後生存の新規予後予測モデルHCT-CR
 Kongtim P Bone Marrow Transplant. 2019 Jun;54(6):839-848
同種造血幹細胞移植の結果は疾患要因と患者要因の両方の影響を受ける。AMLとMDS患者を対象にDRI-RとHCT-CI/Ageを組み合わせた新たな移植後生存の予後予測モデルであるhematopietic cell transplant-composite risk (HCT-CR)を開発した。AML/MDS患者942人を対象とした。HCT-CRリスクグループは4段階に層別化された。Low-riskはDRI-Rがlow/intermediateかつHCT-CI/Ageが3点以下(n=272)、Intermediate-riskはDRI-Rがlow/intermediateかつHCT-CI/Ageが3点より大きい(n=168)、High-riskはDRI-Rがhgh/very highかつHCTC-CI/Ageが3点以下(n=284)、Very high-riskはDRI-Rがhigh/very highかつHCT-CI/Ageが3点より大きい(n=168)と分類された。Low、intermediate、high、very high-risk groupはそれぞれ死亡に対してリスクが増加した{adjusted HR of 137(p<0.04)、2.08(p<0.001)、2.92(p<0.001)}。
HCT-CRの検証では既存のモデルと比較してOS予測能力の向上が確認された(C-indices:0.62、0.55、0.66,0.54)(p<0.001)。
結論として、疾患要因、患者要因、とを組み合わせることでAML/MDS患者の生存予測の層別化の改善ができた。


令和2年1月6日 原田尚憲

 

 

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