I. 原虫病
平成14年1月
1.
はじめに
a. 世界の寄生虫病
b.
わが国の寄生虫病
2.
原虫病
a.
マラリア
b.
赤痢アメーバ症
c.
トキソプラズマ症
d.
クリプトスポリジウム症
1978年、カザフスタン共和国の首都アルマ・アタで、WHO(世界保健機構)や各国は国際会議を開き、“2000年までに、地球上のすべての人が健康的な生活を送れるようにする”という保健宣言(アルマ・アタ宣言)を採択しました1)。そして、1980年、WHOは天然痘(痘瘡)が地球上から根絶したことを宣言しました。私たちは、抗生物質の使用やワクチン接種などによって、感染症は近い将来、地球上から撲滅されるようになる、と楽観的に考えた時期がありました2)。
しかし、1981年、エイズ(AIDS;後天性免疫不全症候群)が米国で初めて明らかになりました。その後、いろいろの感染症が出現してきました。過去30年間に30以上の新しい感染症が出現し、さらに、かつて流行していた感染症も再び流行してきました(新興・再興感染症)。1996年、WHOは“今や世界は感染症の危機に瀕している”という報告書を発表しました3)。
寄生虫病の分野では、新しい寄生虫症の病原体として、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium
parvum)、サイクロスポーラ(Cyclospora cayetanensis), バベシア(Babesia sp.)など6種類の原虫が明らかになりました。また、マラリアは、再び、最も大きな熱帯寄生虫病に戻ってしまいました3)。なぜこのような状態になったのかを考えてみることが大切であると思います。
WHOは、最近の寄生虫病の流行状況を次のように報告しています3)。主な寄生虫症のみを列挙します。
表1.世界の寄生虫病の流行状況
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1.マラリア(原虫) |
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2.リーシュマニア症(原虫) |
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3.鉤虫症(線虫) |
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4.回虫症(線虫) |
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5.オンコセルカ症(線虫) |
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6.シャーガス病(原虫) |
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7.住血吸虫症(吸虫) |
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8.睡眠病(原虫) |
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9.フィラリア症(線虫) |
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WHO: World health report 1996.
主な寄生虫症の合計では、年間死亡者数は、250万人、感染者数は10億人になります。寄生虫病では、慢性的な経過を取るものが多く、ままあることだとして無視されることが多いようです。しかし、貧血、栄養失調などによって、子供たちの発育阻害、労働力の低下など大きな社会的損失を引き起こしています。また、ほとんどの寄生虫感染において、抗体は出現しますが、防御作用はほとんど無く、したがって、流行地において、人々は何度も感染することになります。寄生虫は、宿主の免疫を回避する機構を持っており、免疫が成立しているにもかかわらず、感染もおこっている状態になっています。
BC 400年、ヒポクラテスがマラリアによる熱を診断した言われるマラリアは、現在も最も大きな熱帯寄生虫病になっています。40年前に、流行地域において、DDTの大量散布によって、伝搬者の蚊を少なくし、また、抗原虫薬クロロキンの広範な投与によって、流行はかなり抑えられていました。カンボジアでは、食卓塩にクロロキンをいれ、予防的に大量に使用しました。しかし、その結果、クロロキン耐性マラリア原虫の出現を招き、また、DDTの大量使用によって、殺虫剤抵抗性の蚊の出現を招いてしまいました。今や、熱帯地方において、世界の人口の40%の人々がマラリアに感染する危険のある地域で生活をしています。
戦後、蔓延した回虫や鉤虫(十二指腸虫)など土壌線虫(土壌で一定の発育を必要とする線虫類)による寄生虫病は、農業の変化(人糞を肥料に用いないこと)、集団駆虫、生活の都市化(下水道の整備)などにより、ほとんどなくなりました。そのために、わが国では、寄生虫病はもはや存在しないかのように言われることがあります。しかし、わが国の寄生虫病は無くなった訳ではありません。その様な寄生虫病から新しいタイプの寄生虫病へと変わっているのです。魚の刺身や寿司を好んで食べる習慣のある私たちにおいて、アニサキス、日本海裂頭条虫、など魚を中間宿主とする寄生虫症が、現在、たいへん多く見られます(第2回目に解説します)。また、極めて珍しい食物(渓流魚、淡水のカニ、スッポン、カエル、クマ、イノシシなど野生動物の肉)を誰でも、容易に喫食出来るようになりました。このような人獣共通感染症(人と動物を宿主とする感染症)に含められる寄生虫症は種類が多く、その診断、治療は困難である場合が多く見られます。そして、魚や野生動物の寄生虫を無くすることは、ほとんど無理であると思われます4)。
人々は、現在、地球規模で激しく移動しており、海外で熱帯寄生虫病に罹るケースが多くなっています。さらに、地球の温暖化が進むならば、マラリアやフィラリア症のような熱帯寄生虫病がわが国で、流行することが考えられます。
最近、新興・再興感染症の一つであるクリプトスポリジウム原虫が水道水に混入し、多くの人が、下痢を起こしていることが、世界各地で明らかになっています。わが国においても、すでに、大きな発生があり、その対策が緊急の課題になっています。
文献:
1. WHO: Declaration of
Alma-Ata. Lancet, 2, 1040-1041, 1978.
2. Garrett L: The coming
plague: Newly emerging deseases in a world out of balance. Farrar, Straus
and Giroux, New York, 1994.
3. WHO: World health report
1996: Fighting disease, fostering development. Geneva, 1996.
4. 宇仁、井関:水・食品媒介性寄生虫(原虫、蠕虫)感染症.薬局,49,
1998.
マラリア、赤痢アメーバ症、トキソプラズマ症、クリプトスポリジウム症などについて解説をします。原虫とは、すでにご存じの方が多いと思いますが、単細胞生物で、細胞の構造では、核膜や染色体構造を持ち、人の細胞などとよく似ています。それらの原虫が私たちの体に入り病害をあたえます。マラリア原虫は赤血球に侵入します、赤痢アメーバは組織の細胞を融解します、また、トキソプラズマはマクロファージの中に侵入して破壊します。私たちの体は、原虫の侵入に対して、抗体や細胞性免疫で処理しようとしますが、原虫は細胞内寄生や表面抗原の変異など、免疫回避機構を持っており、そのまま、感染が続きます。また、原虫が処理される場合でも、きわめて複雑な機構のため、まだ不明なところが多く、ワクチンは研究段階です。
熱帯地方に旅行に出かけ、蚊に吸血されるとマラリアに罹ることがあります。
人に感染するマラリア原虫は4種類あります。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium
falciparum), 三日熱マラリア原虫(P. vivax), 四日熱マラリア原虫(P. malariae),
卵型マラリア原虫(P. ovale)。それぞれの原虫によって、症状は異なります。その中で、熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされるマラリアは重症あるいは致命的になることがよくあり、「悪性マラリア」と呼ばれています。
生活史:マラリアは蚊(ハマダラカ、Anopheles
属)の吸血によって、伝播されます。蚊の中腸においてマラリア原虫の有性生殖期が進み、最終的に唾液腺にスポロゾイト(原虫のステージの一つ)が集まります。そして、蚊が人を吸血をするときに、スポロゾイトが入り、マラリア原虫に感染することになります。
人の中では、スポロゾイトは血流にのり、肝細胞に入り、分裂をして、メロゾイト(原虫のステージの一つ)を形成します。感染後、1〜2週間(潜伏期)です。但し、P.
vivax, P. ovale では、一部はhypnozoite (休眠期) を作り、数ヶ月〜数年してから、活動をする原虫の系統があります。これは、蚊の活動周期と関係していると言われています。
次に、メロゾイトは、血液に入り、赤血球に侵入します。赤血球の中で、発育、分裂をして、多くのメロゾイトになり、赤血球を破壊します。マラリア原虫は同調して発育をしますので、赤血球を同時に破壊して、あたらしい赤血球に侵入します。この赤血球を破壊するときに、高熱が引き起こされます。そして、感染が長引くと、しだいに貧血を引き起こします。この発育過程において、少数の有性生殖ステージの原虫が形成され、蚊の吸血によって、マラリア原虫は、蚊の中腸にはいり、有性生殖を行い、原虫の生活史が回ります。
熱帯熱マラリア患者の血液塗沫標本;多くの赤血球に原虫が感染(図1)。
症状:
1.マラリア熱発作;40。Cぐらいの高熱が周期的に現れます。三日熱マラリア原虫(P.
vivax)、卵型マラリア原虫(P. ovale)の感染では、48時間(第3病日)毎に発熱し、熱帯熱マラリア原虫(P.
falciparum)では、48時間からしだいに不規則になり、四日熱マラリア原虫(P.
malariae)では、72時間(第4病日)毎に発熱します。
これは、種類により、侵入する赤血球のステージが異なるために、原虫の発育時間が異なるためであると考えられています。P.
vivax, P. ovaleは幼弱赤血球のみに感染し、P. falciparumはすべての発育期の赤血球に侵入し、P.
malariae は成熟赤血球に感染します。同調して、赤血球を破壊しますので、周期的に、発熱をおこします。
2.貧血:感染によって、赤血球が破壊され、溶血が起こります。
3.脾腫:脾臓のマクロファージなどが感染赤血球を取り込み、処理するため、脾臓が肥大してきます。
4.脳マラリア:熱帯熱マラリア原虫に感染すると、感染赤血球は脳の毛細血管の内皮に粘着するようになります。これは、原虫 が作る蛋白が、感染赤血球の膜に組み込まれ、赤血球膜に瘤状の構造物が形成されます。そこに、抗体などが作用して、内皮細胞に粘着するようになります。その結果、血管に塞栓がみられ、血管破壊をおこし、酸素欠乏、出血をおこし、脳障害をおこします。同じ機序で、肝、肺、胎盤(胎児に酸素欠乏)、腎に障害を起こします。そのために、致命的になることが多く、熱帯熱マラリアは「悪性マラリア」と言われます。
診断と治療:熱帯地方から帰国した人で、熱のある人の場合、採血をして、血液薄層塗沫標本を作り、染色を行い、原虫を顕微鏡で検出します。その時に、種の鑑別を行います。治療薬として、クロロキン(chloroquine)が用いられますが、クロロキン耐性P. falciparumによるマラリアが考えられる場合は、別の治療薬を投与します。アジア、南米では、耐性原虫の分布が極めて多く知られています。
疫学:わが国では、戦後、土着のマラリアは無くなりました。したがって、海外から、感染して帰国して、持ち込まれる「輸入マラリア」の例になります。マラリアの流行地は熱帯地方で、アフリカ、南米、東南アジア、インドなど。
最近のマラリアの増加の原因:
1.抗原虫薬に対する耐性原虫の出現、したがって、有効薬は限定されてきます。
2.殺虫剤に耐性の蚊の出現、環境汚染のため、殺虫剤の使用が制限されています。
3.アマゾン川流域の森林、鉱山の開発、アフリカの農業開発(特に水田の増加)、そして、カンボジアの森林、宝石採掘の開発などの地域で、治療や予防に抗原虫薬が乱用され、薬剤耐性原虫を産み出しています。
4.戦乱により難民が増加し、医療が十分行われないため、マラリア感染者の増加をもたらしています。
今後の対策:
1.マラリア原虫に対して、新しい抗原虫薬の開発。
2.マラリアに対するワクチンの開発、まだ、研究段階。原虫は遺伝的に多様性をもち、また、多くの発育ステージを持っています。虫体の抗原はステージによって変化し、防御作用のない抗体を宿主が多く作っていることが知られています。
3.蚊対策;不妊の蚊、マラリア原虫に感染しない蚊などの研究、蚊の発生を止めるための環境管理。
4.発展途上国に対して、予防医学教育や医療協力(医薬品、車、医療関係者の派遣など)、経済協力。生活環境の改善;防虫剤入りの蚊帳の配布、住宅の整備など。
感染経路と生活史:熱帯地域で旅行者が、飲み水、生野菜などから、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica Schaudinn, 1903)のシスト(cyst、嚢子)を取り込みますと、小腸で脱嚢して、大腸腔内で栄養型(trophozoite) として、2分裂で増殖します。赤痢アメーバはまず、大腸粘膜に侵入して、腸粘膜細胞を融解して小潰瘍をおこし、腸アメーバ症を引き起こします。粘液と血液の混ざった粘血便がみられます(アメーバ赤痢)。次に、大腸の潰瘍部より、赤痢アメーバの栄養型は血液に入り、門脈を経て、肝臓に入り、肝細胞を融解して、アメーバ性肝膿瘍を形成します。大きい膿瘍では直径10 cmぐらいになります。さらに、アメーバは血液に乗り、肺、脳に移行して、そこでも膿瘍を形成します。
培養したアメーバ(栄養型)の運動(図2)。
(当教室の木俣 勲博士の好意による)
わが国においても、赤痢アメーバ症はよく見られます。海外旅行で感染するのみならず、大都会では、男性同性愛者の間で、かなり拡がっています。また、米国のニューヨークにおいても、男性同性愛者の間に流行が報告されています。したがって、アメーバ症は熱帯地方での病気でもありますが、性感染症(sexually transmitted diseases; STD)にも含めることができます。
診断:腸アメーバ症の場合、新鮮な下痢便内に、赤痢アメーバの栄養型を検出。赤痢アメーバは赤血球をよく取り込んでいます。肝アメーバ症では、画像診断、膿瘍液内での、栄養型の検出、また、血清診断が用いられます。
赤痢アメーバ(E. histolytica)と非病原種(E. dispar)との鑑別:症状のない人で、健康診断などの糞便検査において、赤痢アメーバと同じ形態のシストがみられることがよくあります。そのために、赤痢アメーバ(E. histolytica) の非病原株がある、あるいは別種である、と多くの議論がありました。しかし、1997 年、WHOは、それは別種の赤痢アメーバ非病原種(Entamoeba dispar Brumpt, 1926)であると報告しました。この両種は、光学顕微鏡では、形態的に区別はできず、アイソ・エンザイムパターン(zymodeme)、PCR法、血清学的区別によって、鑑別をすることが出来ます。しかし、まだ、これらの鑑別方法を用いて同定が出来ない場合には、無症状で、シストが顕微鏡で見られた場合、赤痢アメーバ(E. histolytica)と断定するのではなく、E. histolytica/E. disparと両種を記載し、次に、特異的な検査で、E. histolytica と確認出来た場合のみ、治療対象とすべきである、と提唱しています5)。WHOの報告後、4年を経過していますが、わが国の病院や検査機関では、まだ、この方法があまり採用されず、早急な改善が必要である、と言われています。
文献
5. WHO; Amebiasis, Weekly
Epidemiological Record, 1997, 72, No. 14, 97-99.
感染ルートと症状:公園の砂場には、ネコの糞便が混じっていることがよくあります。ネコはトキソプラズマ(Toxoplasma gondiii)の終宿主(トキソプラズマが有性生殖をする宿主)にあたり、糞便には、オーシスト(有性生殖によって形成される原虫の外界で生存出来るステージ、oocyst)が多数排出されます。ネコの糞便内のオーシストに汚染された公園の砂をさわった手などをへて、人が経口的にオーシストを取り込みますと、トキソプラズマに感染します。また、ネコの糞便によって汚染された野菜などが感染源になることも考えられます。また、ブタは何でも食べることから、トキソプラズマによく感染していることが報告されています。ブタ肉の中に、トキソプラズマのシスト(抗体が作られると、8時間ぐらいで増殖する急増虫体、tachyzoite,はマクロファージから出た時に、抗体によって処理されます。しかし、細胞に入っているものは、抗体によって処理されないため、細胞内で緩増虫体、bradyzoite,として、ゆっくり増殖していきます、そして、この緩増虫体の集合したものをシストと呼びます)が見られます。シストをもつ肉などを加熱の不十分な状態で喫食すると、人がトキソプラズマに感染することになります。これらの感染経路によって、特に、妊娠中に、はじめてトキソプラズマに感染した場合、原虫は抗体が無いため、増殖し、急増虫体が胎盤を通過して、胎児に移行して、胎児の脳、神経細胞内で増殖することがあります。また、網膜に侵入して、眼症状を引き起こします(先天性トキソプラズマ症)。
人が、後天的にトキソプラズマに感染した場合、妊婦の場合をのぞき、無症状の場合がよく見られます(わが国では、不顕性感染率は10%ぐらいと言われます)。しかし、免疫能が低下すると、リンパ節炎など症状が出ることがあり、また、AIDS患者において、トキソプラズマ脳炎が見られます。
予防:もう一度、特に、妊婦は感染しないように、よく注意をする必要があります。豚肉の加熱処理を十分におこない、生卵、生肉はさけ、オーシストを排出している可能性の高い仔猫との接触をさけ、手洗いの励行などが必要と思われます。予防は原則的に比較的簡単ですが、トキソプラズマ症の治療は困難であるように思われます。また、トキソプラズマは多くの動物が保虫動物になり、哺乳類、鳥類などに広く感染がみられます。人獣共通寄生虫症の一つです。
d. クリプトスポリジウム症 (cryptosporidiosis)
1996年6月、埼玉県越生(おごせ)町で、町営の水道水にクリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)が混入し、8,800人(町民の64%)が下痢を引き起こしました6)。また、神奈川県では、ビルの上水道の受水槽にポンプの故障で、汚水が逆流し、ビルの水道水を飲んだ446人に下痢が見られました7)。1993年、米国のウイスコンシン州ミルウオーキーで多量の雪解け水が牧場の土や下水処理水を含んで、湖に流れ込み、それを水源にしている水道水にクリプトスポリジウムが混入し、40万3千人の住民が下痢を起こしました8)。
この原虫は、赤血球より少し小さいサイズ(5ミクロン)で、牛、シカ、ネズミや人の糞便にオーシスト(原虫の外界でのステージで、厚い殻を持っています)として、排出されています(図5)。人では、免疫力が正常である場合、数日の下痢で回復すると言われています。しかし、越生町の場合では、幼児や高齢者では、より強い症状が見られました。オーシストは、浄水場の通常の塩素処理では、死滅しません。大量の原虫が浄水施設に取り込まれ、凝集、濾過処理によって、すべて除去する事が出来なかった場合、水道水に混入する事になります。
クリプトスポリジウムは、従来、牛やネズミにはよく見られる原虫ですが、人に病原性を持っていることが明らかになったのは、最近です。特に、米国において、AIDS 患者がこの原虫に感染すると、下痢がなおらず、致命的になることがわかりました。わが国の水道関係機関においても、緊急にこの原虫対策に取り組み、大きな浄化処理施設では、濾過膜を使用して、原虫の混入を防ぐように改善が行われています。原則的には、飲料水の煮沸によって、原虫を死滅することが出来ます。また、家庭用の濾過器(1ミクロン以上の粒子を除去できる装置)によっても、除くことが出来ます。
この原虫には、まだ、有効な治療薬がなく、AIDS 患者が感染すると、重症の下痢を引き起こし、致命的になります。英国では、免疫した牛の、抗体を多量に含んだ初乳を、クリプトズポリジウムに感染した免疫不全患者に投与して、治療する試みがなされています。
文献
6.埼玉県衛生部:クリプトスポリジウムによる集団下痢症、越生町集団下痢発生事件、報告書、1997.
7.黒木、渡辺、浅井、他:神奈川県内で集団発生した水系感染Cryptosporidium.
感染症学雑誌、70:132−140,1996.
8.MacKenzie WR, Hoxie NJ,
Proctor ME et al.: A massive outbreak in Milwaukee of Cryptosporidium infection
transmitted through the public water supply. N Engl J Med, 331: 161-167,
1994.