国内留学報告(北海道 我汝会えにわ病院)

平成23年卒 脊椎グループ 寺川雅基

平成25年度入局の寺川雅基と申します。平成28年4月より平成30年3月まで、北海道えにわ病院で脊椎外科の研修をさせて頂きました。2年間のえにわ留学の報告を述べさせて頂きます。

えにわ病院は札幌市と新千歳空港の真ん中あたりに位置し、空港と都市部へのアクセスは2~30分程度で比較的住みやすい場所です。恵庭市は人口7万人程度の住宅街で比較的若い家族が多いベッドタウンといった印象です。えにわ病院に来られる患者さんは、北海道内外から専門性の高い治療を求めて来院されており、遠方から来られる方が多いことに驚きます。(北海道が広く、医療過疎地が多い事もありますが)

初めて北海道の地に降り立った4月は、まだ雪が残っていました。梅雨のない6月から夏にかけては湿度も低く、風が吹けば涼しい心地よい夏を過ごしました。冷房のない宿舎で暑いと感じた日は1週間ほどで、9月に入ると半袖ではきつい寒さが垣間見え、来る長い冬を乗り越えられるかどうか心配になっていました。北海道の冬は、10月末頃に初雪が降り、12月中旬くらいから根雪となります。その根雪になるまでの風が強い日の寒さは途轍もなく寒いのですが、根雪になってしまえばカマクラ効果?なのか、晴れていれば気温が低くても意外と寒くないです。(嘘だとよく言われますが・・・本当です。)えにわ病院に提供して頂いている社宅にはエアコンは無いのですが、備え付けのガスストーブがあります。このストーブが優れもので、エアコンに比べると湿度が下がりにくいのか、毎年冬になると扁桃炎を一度は発症していた私ですが、昨年は発症しませんでした。ほぼ一冬中ストーブを稼働させますので、ガス代がとても高くなりますが、病院から燃料手当なるものを支給して頂けて助かります。雪かきや雪道の運転も慣れてしまえば平気でしたが、地面が凍るアイスバーンのような状態になると、油断していなくても車がスリップしたり、徒歩ではすぐ転倒します。なので、1~2月には骨折の患者さんが増加しました。しかし、住めば都で、北海道に永住したいくらい魅力的な場所でした。

研修内容に関して

1年目は脊椎班の研修医が2人おりましたが、2年目は私一人であった為、ほとんどの症例の助手として入らせて頂き、反対側の執刀をさせて頂きました。腰椎後方除圧術(棘突起を切除してのMedial Facetectomy)やPLIF、TLIFはもちろんのこと、思春期特発性側弯症や成人脊柱変形の片側のPS挿入やPonte osteotomy、OLIFのアプローチ等、2年目には、幅広い脊椎手術手技を習得する事が出来ました。2年間を振り返ると、助手で入らせて頂いた脊椎手術件数は780件でした。内訳としてPLIF約320件、除圧(ヘルニア摘出術含む)約280件、側彎症36件、腰椎前方固定術(OLIF含む)20件、頚椎前方固定 30件、頚椎椎弓形成50件でした。変性疾患に対する除圧、固定術の多数の経験が出来た事はもちろんの事、あまり経験の無かった頚椎、胸腰椎の前方固定術、側彎症に対する変形矯正の手術を学べた事にとても感謝しております。

えにわ病院の脊椎外科医4人の先生方は、それぞれ手術手技が異なっており、その利点を全て良い所取りすることが出来るのが、研修医のメリットであります。例えば、柳橋先生はTLIFのPS刺入をWiltseのアプローチで行いますが、筋間侵入の際に電気メスなどを使わずに、腰背筋膜を指で触れて筋線維の隙間を見つけて剥離子のみで出血する事無く、筋組織を傷めずに展開しておられます。安倍先生はOLIFの際に小皮切ではなく、mini-ALIFのように大きく展開して、肋骨先端から前方に侵入します。尿管や腸管損傷を確実に予防するためですが、Traditionalな前方アプローチを理解することが出来ました。他にも、腰椎後方手術際に硬膜外静脈叢の止血が困難な場合、アビテン(微繊維性コラーゲン)に生理食塩水を混ぜたものを使用します。簡便、かつ止血は確実で、椎間板操作が容易になります。MOBの展開の際には、小コブとハンマーで瘢痕と椎弓の間を簡単に剥離できること。佐藤先生には手術中や術後などの自身が経験されたトラブルや合併症などを耳学問としてたくさん教えていただきました。たくさんの手術の技術、脊椎外科医としての考え方を4人の先生方から教わりました。2年間で全て吸収して、現在の自身の手術に応用し、実践しております。

私生活について

妻と息子と3人で北海道に移住していましたが、恵庭市には待機児童も無く、保育園は庭がとても広く、自然がたくさんあり、病院からも近いので、子供を預けるのも安心でした。札幌市内や恵庭市近郊には、車ですぐに辿り着ける大自然が沢山あります。歩けるようになった息子と北海道の大自然の中を一緒に散歩するだけで、仕事の疲れが吹き飛びます。家族で北海道の各地に旅行に行ったり、日帰りで出かけたり、他大学からの研修医の先生方と家族ぐるみで旅行に行ったりと、本当に公私共に充実した2年間の生活を送らせていただけました。

この2年間は私の脊椎外科医として急激に成長する事ができた2年間であり、一生忘れられない経験となりました。残念ながら、平成30年の3月頃からえにわ病院前院長の佐藤栄修先生が体調を崩され、現在は療養中であります。心から回復を祈っております。

最後になりましたが、北海道えにわ病院への国内留学の機会を与えて頂き、中村教授、高岡名誉教授、木村理事長、佐藤前院長、百町院長、同門の諸先生方に深く御礼申し上げます。今後とも御指導御鞭撻の程、宜しくお願い致します。

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