MENU

HOME > 研究について

今までに実施してきた研究

生殖細胞は連続した2度の減数分裂(第一と第二分裂)を経て染色体数を半減させる。そして半数体同士の受精によってその数を回復する。同様のプロセスを経るにも関わらず、体外受精卵の発育能力は体内受精卵に比べ、著しく低い。その一因が減数分裂における細胞内の変化が体内と体外とで異なると考え、主にウシ卵母細胞を使用して研究を進めてきた。従来法の20%酸素濃度を5%に低下させることにより、発育能が高まること、酸素濃度によりエネルギー生産系が異なることを明らかにした。また、次世代シーケンシング解析を用いた研究から、卵胞発育を促すホルモン (FSH) により脂肪酸代謝とミトコンドリア機能が亢進することが卵母細胞の発育能力に関与している可能性を示した。

母体加齢に伴い、桑実胚のミトコンドリア機能が低下することを明らかにし、脂肪酸をミトコンドリアに輸送するL-carnitineによりミトコンドリア機能を改善できることを明らかにした。

今後の研究

1. 減数分裂の前期(P期)に亢進するミトコンドリア機能の機構解析
哺乳類卵母細胞が受精後、正常に発育を継続するために必要な卵母細胞における栄養・代謝シグナル機構を理解する。
2. 初期胚発育過程で生じる染色体異常の発生する機構
雌雄生殖細胞に由来する染色体が接合し、受精は完了する。ライブセルイメージングにより接合を観察し、接合の異常はどのように起こり、その後どうなるかを明らかにする。25%のウシ受精卵において接合の異常が観察されている。それにも関わらず、それらは形態的に正常な細胞分裂を繰り返し、正常に接合した胚と光学顕微鏡下では判別できなかった。今後、接合異常の出現様式を明らかにし、その原因の解明と接合異常の減少を目指す。
3. 補体第二経路と自然流産の関連性の解析
胎児は父性遺伝子を含むため、本来であれば母体免疫により攻撃されるはずである。しかし胎盤では免疫応答が抑制されており、胎児は母体から排除されることなく発育する。マウスを用いた研究では、免疫システムのひとつである補体の第二経路による活性化が自然流産を誘発することが明らかとなっていることから、自然流産モデルマウスを用いて補体第二経路抑制因子による流産予防効果を検討する。