教室について

ご挨拶

藤原靖弘

2016年4月に就任してから、ちょうど5年が経ちました。ホームページリニューアルに際し、新たに挨拶文を述べさせていただきます。

教室の目標

就任時に教室の方針として「ポジティブ思考でいこう」を掲げました。これは私自身がこれまで、医師として研究者として教員として感じてきたことであり、困難な時もいかなる逆境もポジティブに考えていくことで事態が好転することが多かったからです。コロナ禍において改めてこの目標で頑張っていこうと思います。もう一つの方針として「研究のすすめ」を挙げました。教室員には、どのようなテーマであっても良いので、症例から疑問に感じたことや最近のトピックスから、より一層深く追求する姿勢を大切にしてほしいと考えています。この2つの目標は現在でも変わることはありません。

留学について

私は今思えばかなり無謀とも思える基礎研究もあまり分かっていなかった大学院生2年、28歳の時に1年間カリフォルニア大学アーヴァイン校(ロングビーチVAメディカルセンター)に基礎研究で留学しました。当然業績は残せなかったですが、米国での1年間の生活は日米の考え方の違いを経験できたことや同じ研究室に留学していた研究者や医師など多くの人々との出会いはとても貴重な体験でした。就任以降、留学を強く推進する方針をとってきました。これまでに6人の先生が国内外に留学してきました。特に杉村直毅先生は大阪市立大学と香港中文大学のダブルデグリープログラム(通常2つの大学の学位取得には4年x2の8年が必要ですが、単位互換により4-6年で取得するプログラム)を修了しました。

留学する先生には知識や技術の修得のみならず、留学生活を大いにエンジョイして頂き、幅広い人間関係の構築や消化器内科医のみならず人としての成長を切に願っております。

教育について

卒前教育として、英語での回診を続けてきました。現在コロナ禍の影響により中断しています。大学、医学部ではグローバル化・国際交流が強く推進されており、多くの診療科で英語でのカンファレンスや回診が取り入れられています。様々な国から多くの外国人留学生が再びあふれるキャンパスを切望します。

卒後教育はこれまで通り、患者の立場にたった内科医、さらに消化器内科・消化器内視鏡分野の専門医を育成する方針を続けておりますが、個々の上級医の診療がやや細分化されすぎている傾向にあったことから、研修医や3年目には幅広く疾患を経験できる体制としています。新専門医制度については、日本内科学会の大阪府シーリング問題がありますが、何とか近隣の基幹病院で研修できるように内科連絡会教授部会や講師などで構成される実務部会で十分に討論しています。大阪公立大学消化器内科ではこれまで通り、連携の関連病院をローテートしながら、後期臨床研修中に内科専門医が取得でき、さらに消化器内科医として当初から専門性を学べるプログラムができております。

大学院生に関しては、各研究グループでの討論や教室全体のリサーチカンファレンスに加えて、1カ月に1回、教授と大学院生2-3名の小グループで研究進行状況や問題点を話し合う機会を設けています。

研究について

研究について

研究グループは上部消化管(機能性疾患・薬剤性粘膜傷害)、下部消化管(IBD)、内視鏡(ESD)、内視鏡(胆膵)、臨床腫瘍と分かれています。細分化傾向ですが、各教員がそれぞれ独自のテーマで主体的に研究を行っており、自由な研究を進めています。

就任時に教室全体の研究テーマとしてF-PROJECTを立ち上げました。これは図に示すように新たな疾患や内視鏡所見を見つけるプロジェクトです。私自身も長年内視鏡をしていて、初めて遭遇するような所見を年に一度は経験することがありますが、悪性ではないことから、そのままにしていることが多かったです。学会などで同様の所見の発表を聞いた後で、そういえば見たことがあったなあと残念に思うこともありました。新しい内視鏡所見や疾患は、とても運が良い先生や眼力の強い先生が見つけることが多いと思いますが、ふと考えてみますと、私が30年間で初めてみた所見でも、裏を返せば30人の内視鏡医のうち1人は年間遭遇する可能性があるということになります。このような経験は内視鏡施行件数にもよりますが、おそらく年間2例ぐらいはあると思いますので、教室員約150人で約300例、10年間で3000例あれば、きっと類似所見は見つかるはずです。数例集まれば新しい所見、疾患として提唱することができると思います。

なかなか難しいプロジェクトですが、これまでにWilson病の胃病変や好酸球性胃炎に特徴的な所見などを見出せました。

臨床について

臨床に関しては、早期消化管癌の内視鏡治療ESDチーム、胆膵の内視鏡治療チーム、炎症性腸疾患(IBD)チーム、小腸内視鏡チーム、臨床腫瘍チーム、機能性消化管疾患チームが専門性を活かして、それぞれの分野で日々活躍しており、臨床的に国内でもトップレベルと思います。消化器内科の分野では内視鏡が中心にはなります。新しい技術をいち早く導入することの重要性を感じております。これまでに食道アカラシアに対するPOEM、直腸肛門機能検査、胆膵の新しい診断治療などを導入できました。これらは国内留学した先生の成果によるものと思います。

消化器内科を考えている学生たちへ

消化器疾患は最も臨床的に遭遇する病気です。消化器内科は内科的な側面のみならず、救急(緊急内視鏡など)や外科(早期癌の治療や胆膵の治療処置)的な一面もあります、自分にあった、興味のある分野に専門的に進むことができます。また上部・下部消化管内視鏡検査はまだまだニーズの高く、一定の技術が必要な検査です。入局後おおむね3年間程度でできるようになります。

学生時代、卒業後はどの専門分野に進もうか悩んだ時期も少しありましたが、本当に消化器内科を選んで良かったと思います。ぜひ、一緒にしていきましょう!お待ちしております

最後に

教室員一丸となって消化器内科学における研究・教育・臨床に邁進していきたいと思います。

2021年2月

2017年2月