診療と研究

消化管癌領域における内視鏡診断・治療

近年、本邦における食道癌、胃癌、大腸癌などの消化管癌は男女ともに増加の一途をたどっています。消化管癌は早期で発見すると良好な長期予後が期待できるため、早期発見、早期治療が重要ですが、そのためには内視鏡検査が欠かせません。

当科では消化管癌に対する内視鏡診断・治療を積極的に行っています。対象臓器は、咽頭、食道、胃、十二指腸、大腸に及びます。NBI(Narrow band imaging)などの画像強調内視鏡と拡大内視鏡を併用して、癌や前癌病変の拾い上げ診断、質的診断、深達度診断を行います。内視鏡治療適応と判断した病変に対しては、ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection; EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection; ESD)などを行っています。近年では、胃のみならず食道や大腸のESDが増加し、年間計456件(食道161・胃195・大腸100例、2015年実績)と日本でも有数の件数に到達しています。また最近では、消化器外科と共同で腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopy and endoscopy cooperative surgery; LECS)なども行っております。治療適応、術後の病理組織学的評価についてはカンファレンスで話し合い、適切な治療方針を決定します。安全で確実な内視鏡診療を目指し、時代のニーズに応じた最善の医療を提供できるよう努力しています。

また研究面では、臨床での疑問点を解決できる研究テーマに取り組んでいます。その内容は多岐にわたり、NBIなどの画像強調内視鏡による診断や、食道・胃・大腸ESDの治療成績・長期予後、食道癌ESD後の狭窄予防治療(研究的治療)、消化管瘻孔に対するPGA(polyglycolic acid)シートを用いた閉鎖(研究的治療)、食道癌ESD時のプロポフォール静脈麻酔の有用性、大腸ポリペクトミー時のヘパリン置換の影響などについて研究成果を報告しています。