診療と研究

上部消化管基礎研究

上部消化管および小腸の炎症について(大谷 恒史)

私達はこれまでマウスを用いて、主に消化管(胃・小腸)の炎症についての基礎研究を行ってきました。
胃については、Helicobacter pylori感染性胃炎に対する免疫応答や胃癌における高度メチル化遺伝子について研究を行ってきました。私達はInterleukin-17AがH. pylori胃炎に対してTh1細胞の分化を抑えて抗炎症的に作用することを発見し (Otani K, et al. Biochem Biophys Res Commun, 2009)、H. pylori感染性胃炎の初期過程においてToll-like receptor 9 シグナルが抗炎症的に作用することを証明しました (Otani K, et al. Biochem Biophys Res Commun, 2012)。さらに、胃癌における様々な腫瘍抑制遺伝子について網羅的に研究し (Otani K, et al. Expert Rev Mol Diagn, 2013)、転写因子であるodd-skipped related 1が胃癌において腫瘍抑制遺伝子として機能することを報告しました (Otani K, et al. J Pathol, 2014)。

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小腸については、主に低用量アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬 (non-steroidal anti-inflammatory drug: NSAID) による小腸粘膜傷害の免疫機構について研究を行ってきました。これらの薬剤による小腸粘膜傷害発症には、腸内細菌叢や自然免疫系が深く関与していると考えています (Otani K, et al. Digestion, 2017)。私達は痛風やベーチェット病、家族性地中海熱に対して有効とされるコルヒチンが、マウスにおいてnucleotide-binding oligomerization domain-like receptor family pyrin domain-containing 3 (NLRP3) インフラマソームの活性化阻害を介してNSAID起因性小腸傷害を抑制することを見出しました (Otani K, et al. Sci Rep, 2016)。さらに、NSAID起因性重症小腸傷害を有するヒトを対象としてコルヒチンの有効性について検証したところ、高い完全治癒率が得られました (Otani K, et al. Digestion, 2020)。

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