特徴的な治療法

ロボット支援手術

2014年4月に最先端医療機器である手術支援ロボット『ダヴィンチ』(da Vinci Si Surgical System)が当院に導入され前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除手術(RARP)を開始しました。ロボット支援手術は2012年に前立腺がんに保険収載された後急速に普及し2015年には本邦で13000件以上の手術が行われるまでになりました。その後2016年4月1日の診療報酬改定により腫瘍径7cm以下の腎癌に対しロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)が保険適応となり、2018年4月からはロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術(RARC)が新たに保険収載されました。当院では3疾患の手術すべてを行っております。これらの手術は保険適用となり高額な負担はありません。
現在当科には、日本泌尿器内視鏡学会および日本内視鏡外科学会が認定している腹腔鏡手術技術認定医が9名在籍しており(ダヴィンチ手術 Certificate保有医師は8名)腹腔鏡手術の豊富な経験をロボット支援手術に生かしています。

ロボット支援手術とは

ダヴィンチは米国Intuitive Surgical社製で、三つのパーツから成り、術者が手術操作をするサージョンコンソール、ベッドサイドで手術時に体腔内に挿入されるカメラと3本のアームを動かすペイシェントカート、この両者をつないで画像をサージョンコンソールや周辺のモニター・録画装置に送り、術者からの指令をペイシェントカートに伝えるビジョンカートがあります。
患者さんの身体に5~10mmの穴を数か所開け、カメラや外科医の手の役割をする3本のロボットアームに接続される鉗子や鋏が体内に挿入され外科医の手の動きを忠実に再現し手術が進行します。術者は操作用のコンソールに座り、3Dビューアの3D画像により、術者は解剖構造を10倍まで拡大して、高解像度かつ自然な色調で見ることができます。3本のロボットアームに接続される鉗子や鋏は可動域が人間より多いためあらゆる方向の切開や縫合が可能となり複雑な操作も自然に行うことができます。また手ぶれ防止機能やモーションスケーリング機能により、顕微鏡下手術のような繊細な手術が可能となります。

ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除手術(RARP)

  • 転移のない前立腺がんに対する手術方法で前立腺と精嚢腺の摘除後、尿道と膀胱を吻合し尿の通り道を再建します。開腹手術に比して、傷が小さく痛みが軽度で、手術後の回復が早い、手術中の出血量が少ないなどの利点があります。癌の治療実績は従来の手術とほぼ同等です。図のように臍周囲から下腹部にかけて合計6か所の0.5〜2.0cm程度の皮膚切開を置き、ポートと呼ばれる筒状の器具を使用してロボット専用手術器具により手術を行います。前立腺を摘出後は、術前の前立腺癌の悪性度(PSA値や生検検体の病理結果など)により、リンパ節転移の有無を検討するために、前立腺周囲、骨盤内のリンパ節を摘出します。 2014年4月に開始以降2018年4月時点までに300例以上の症例を経験しています。
  • 癌の状態により前立腺周囲に走行している神経(性機能や排尿に影響する神経)を温存することにより、術後の性機能の維持や尿失禁からの回復が早くなる傾向があります。当院では積極的に神経温存手術(片側のみでも)を施行しております。
  • 手術後は大半の方は翌日から歩行を開始し水分摂取が可能となり翌々日には食事が開始されます。尿を膀胱から取り出す管(尿道バルーンカテーテル)を尿道から膀胱に留置した状態ですが、手術後4~7日ほどで造影検査を行い、膀胱と尿道が漏れなく繋がっていることを確認できればカテーテルを抜きます。入院期間は10~14日間となります。
  • 手術は全身麻酔下に頭の位置が床に対して約30度の低位の角度で行います。したがって、重度の心臓疾患や脳血管障害、また緑内障などの既往のある方は適応が困難な場合もありますので適宜お問い合わせください。

ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)

  • 7㎝までの腎がんに対する治療方法になります。癌のある腎臓の正常な部分を温存する腎部分切除術は腎臓機能を保つことができ、癌の治療成績も腎臓を全て摘出する従来の根治的腎摘除術と同等なため早期腎癌に対する標準治療です。当院では腹腔鏡下での腎部分切除術をこれまで2012年から2015年までに170例以上年以上行ってきました。腹腔鏡手術の経験に加えロボット支援手術の正確・繊細・柔軟な動きを利用することで、これまで以上に正確な腫瘍の切除、出血量の減少、合併症の防止、腎機能の温存が可能となりました。難易度の高いとされる埋没腫瘍(腎臓の表面からは確認できない)、5-6㎝と大きめの腫瘍や両側に癌が発生した症例にも積極的に腎部分切除術を行い腎機能の温存に取り組んでいます。2015年に開始後、2018年5月時点で104例の症例を経験しています。
  • 写真のように6か所に5~10mmの穴をあけポートと呼ばれる筒状の器具を使用してロボット専用手術器具により手術を行います。手術後は大半の方は翌日から歩行を開始し水分摂取が可能となり翌々日には食事が開始されます入院期間は7~10日間となります。

6㎝の腎細胞癌

完全埋没腫瘍(腎臓の表面から確認できない)

ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術(RARC)

  • 膀胱全摘除術は膀胱の筋層や周囲の脂肪に進展した浸潤性膀胱癌に対する治療方法です。尿道から挿入した内視鏡で行う経尿道的膀胱腫瘍切除術ではすべての癌の切除が困難な症例が対象となります。 開腹手術による膀胱全摘除術は出血量が1000ml前後と比較的多く、手術後に起きる合併症(腸閉塞や創感染症など)も比較的多いことが問題点でした。これまでは出血量が少なく傷も小さな腹腔鏡下膀胱全摘を当院では2014年より導入して行っていました。2018年4月に新たにロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術が保険収載され当院でも更なる低侵襲性と安全性も目指し開始しています。
  • 25度~30度の頭低位で手術を行います。腹部には6か所の穴を開け内視鏡用トロカーを留置してロボット支援手術を行います。(前立腺全摘除術とよく似た配置です)ロボット手術では高解像度の3D画像を見ながら人間の手以上に自由度の高い鉗子を用いて手術を行うことで精密な切開や縫合を素早く行うことが可能となります。
     膀胱全摘除術に関しましては、膀胱を摘除した後の尿の排泄経路を再建する尿路変向術が必要となります。
    ①回腸利用新膀胱造設術、②回腸導管造設術、③尿管皮膚瘻造設術などの術式がありますが、①はご自分の尿道から自然に排尿できるタイプで、②③は腹部にストーマを造設するタイプです。膀胱を摘出した小切開の傷を用いてで行っています。症例によってはすべての操作をロボット支援下に行うこともあります。入院期間は2~3週間程度になります。

膀胱摘出(直腸との剥離操作)

体腔内尿路変向(糞路の再建)

詳細につきましては泌尿器科外来 山崎(火、金曜日)までお問い合わせください。