本院に入院される患者様の食事は、社会医療保険入院時食事療養費の規定に沿って提供いたします。
その際、特定の食品により重篤な食物アレルギー症状等が懸念される場合は、主治医にお申し出ください。
食物アレルギーに対する対象食品の除去、代替食品の選択等については、「厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養指導の手引き2017」を参考としてご提供いたします。
なお、食物アレルギーの調理作業については、器具の洗浄、調理時間帯の調整等を考慮し慎重に行いますが、本院調理場には食物アレルギー専用の調理環境はございませんので、通常の調理作業では環境内における意図せぬ微細な原因食品の混入(コンタミネーション)は否定できません。
特別な対応が必要な場合は、必ず入院前に主治医までお申し出ください。
本院では、患者様の状況にあわせ、食物アレルギーへの対応は主治医が判断いたします。
対象となる食品には「つなぎは〇」や「つなぎも×」等の指示表記にて情報を共有し対応いたします。
(表示例)食事に添付する「食札」等
次の食品について、食物アレルギーに対する本院での対応をご説明いたします。
@ 鶏卵アレルギー(鶏卵、うずら卵、マヨネーズ等、これらの食品を使用した料理の取り扱い)
A 牛乳アレルギー(飲み物としての牛乳、乳製品やこれらの食品を使用した料理の取り扱い)
B 小麦アレルギー(小麦粉を使った料理や小麦を含む加工食品等の取り扱い)
C 大豆アレルギー(大豆並びに大豆加工品 [豆乳、豆腐、味噌、醤油等] の取り扱い)
D 魚アレルギー (魚料理ならびに魚を原材料に含む加工食品の取り扱い *魚種別に対応)
E 魚卵アレルギー(イクラやタラコ等の取り扱い)
F 甲殻類、軟体類、貝アレルギー
(えび、かに、貝柱等を使った料理やこれらを原材料に含む加工食品の取り扱い)
G ピーナッツ(落花生)アレルギー(ピーナッツを使用した料理やこれを原材料に含む加工食品の取り扱い)
H 種実(ナッツ)類アレルギー(種実類を使用した料理やこれらを原材料に含む加工食品の取り扱い)
I ゴマアレルギー(ゴマを使用した料理やこれを原材料に含む加工食品の取り扱い)
J 野菜、果物アレルギー
(野菜や果物を使用した料理やこれらを原材料に含む加工食品の取り扱い *食材別に対応)
K そばアレルギー(そばを使用した料理やこれを原材料に含む加工食品の取り扱い)
L 肉アレルギー (肉類を使用した料理やこれらを原材料に含む加工食品の取り扱い *肉の種類別に対応)
M その他の食品 (@〜Lに含まれない食材の対応)
【本院の対応】
●鶏卵の除去には、全卵、卵黄、卵白、うずら卵を含む。
●鶏肉や魚卵は除去の対象外とする。(除去が必要であれば主治医にお申し出ください)
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇鶏卵アレルギーは卵白のアレルゲンが主原因であり、卵黄から除去解除されることが多い。
〇鶏卵は加熱により、アレルゲン性が低下する。アレルゲン性は、加熱温度や、加熱時間、調理方法によって異なる。このため加熱卵が摂取可能でも、生卵や半熟卵などの摂取には注意する。
〇鶏肉や魚卵は、鶏卵とアレルゲンが異なるため、基本的に除去する必要はない。
〇加工食品の原材料である卵殻カルシウム(焼成・未焼成製品)は、摂取することができる。
〇うずらの卵は、食品表示法において特定原材料「卵」の範囲に含まれる。
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【本院の対応】
●除去は牛乳と乳製品等を分けて対応する
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇牛肉は、牛乳とアレルゲンが異なるため、基本的に除去する必要はない。
〇牛乳以外のやぎ乳やめん羊乳などは、アレルギー表示の範囲外であるが、牛乳と強い交差抗原性*があり、使用できない。
〇乳糖には、ごく微量(数μg/g)のたんぱく質が含まれる場合があるが、加工食品中の原材料レベルでの除去が必要な場合はまれである。摂取可否については医師に確認する。
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【本院の対応】
●醤油、大麦、ライ麦は除去の対象外とする。(除去が必要であれ主治医にお申し出ください)
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇大麦やライ麦などの麦類と小麦は、交差抗原性*が知られている。しかしすべての麦類の除去が必要となることは少ない。
〇麦茶は大麦が原材料で、タンパク質含有量もごく微量のため、除去が必要なことはまれである。
〇米や他の雑穀類(ひえ、あわ、きび、たかきびなど)は、摂取することができる。
〇醤油の原材料に利用される小麦は、醸造過程で小麦アレルゲンが消失する。したがって原材料に小麦の表示があっても、基本的に醤油を除去する必要はない。
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【本院の対応】
●大豆以外の豆類は当該指示の対象外とする。(除去が必要であれば主治医にお申し出ください)
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇大豆アレルギーで、他の豆類の除去が必要なことは非常に少ない。このため豆類をひとくくりに除去する必要はない。
〇大豆油は精製されており、基本的に除去する必要はない。
〇醤油や味噌は、醸造過程で大豆アレルゲンの大部分が分解されるため、摂取可能なことが多い。
〇豆腐が摂取可能であっても、納豆や豆乳のみ症状が誘発されることがまれにある。
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【本院の対応】
●魚種ごとの除去とする。
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇魚は魚種間で交差抗原性*があるが、すべての魚の除去が必要とは限らない。このため、問診や経口負荷試験で摂取可能な魚を見つけることが望ましい。
〇魚は、鮮度が低下すると魚肉中にヒスタミンが作られ、かゆみ、じんましんなどの症状をもたらすことがある。これは食物不耐症であり、食物アレルギーとは異なる病態で、区別して考える。
〇小児はまれであるが、魚に寄生したアニサキスが原因のアレルギーが報告されている。
〇青魚、赤身魚など、魚皮や身の色などの区別による除去には根拠がない。
〇かつお、いりこなどのだしの除去は、不必要なことが多い。
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【本院の対応】
●使用する頻度が極めて低い(正月料理のみ使用する)ため、フリーコメントでの指示とする。
・魚卵の提供を行わない。また、加工食品の原材料として、微量程度含む食品の提供も行わない。
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇乳幼児期では初めてイクラを摂取して症状が誘発される場合がある。
〇魚卵類(イクラ、タラコ、シシャモの卵、ワカサギの卵、カズノコ、とび子など)は、ひとくくりにして除去をする必要はない。
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【本院の対応】
●各食品ごとの除去とする。
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇甲殻類(特にエビ)は食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として頻度が高い。
〇エビ・カニなどの甲殻類間や、イカとタコなどの軟体類間、貝類間に交差抗原性*がある。エビアレルギー患者の65%は、カニにも症状を示すが、甲殻類と軟体類、貝類の交差反応性*は20%程度である。
〇甲殻類、軟体類、貝類をひとくくりにして除去をする必要はない。血液検査、食物経口負荷試験などで個々に症状の有無を確認する必要がある。
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【本院の対応】
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇ピーナッツは豆類であり、種実(ナッツ)類とまとめて除去する必要はない。食物経口負荷試験などによって個々に症状の有無を確認する。
〇ローストする(炒る)ことでアレルゲン性が高まる。
〇ピーナッツオイルを含めた除去が必要である。
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【本院の対応】
●各食品ごとの除去とする。
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇種実(ナッツ)類(クルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツなど)は、ひとくくりにして除去をする必要はない。個別に症状の有無を確認する。
〇カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンナッツの間には強い交差抗原性*がある。どちらかにアレルギーがあれば、両者を除去する必要がある。
〇クルミとカシューナッツは、アレルギー表示の推奨品目であり、表示されない場合があることに留意する。他のナッツ類は推奨品目にもなっていない。
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【本院の対応】
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇他の種実(ナッツ)類、ピーナッツなどとひとくくりにして除去をする必要はない。
〇ごま油は使用可能な場合が多い。除去の必要性は主治医に相談する。
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【本院の対応】
●食材ごとの除去とする。
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇花粉症をもつ患者の一部が、生の果物や野菜を摂取した時に、口の中やのどの痒みなどを感じることがある。これを花粉-果物アレルギー症候群 (PFAS)という。
〇PFASの原因となる野菜や果物の多くは、特定の花粉と交差抗原性*がある。主なものに、シラカバ花粉とバラ科果物(リンゴ、モモ、スモモ、サクランボ、西洋ナシなど)、ブタクサ花粉とウリ科果物・野菜(メロン、スイカ、キュウリなど)がある。
〇PFASの多くは、加熱調理した野菜や果物は摂取可能である。違和感を感じたら摂取を中止することで症状がおさまるので、厳密な除去は必要ないことが多い。
〇微量でアナフィラキシーを呈する別の病型もあり、注意が必要である。原因となる食物は、キウイ、バナナ、モモ、リンゴなどが多い。
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【本院の対応】
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇そば殻を吸い込むことで、喘息症状を誘発する場合がある。
〇そばアレルゲンは、水に溶けやすく熱に強い性質がある。このため、そばと同じ釜でゆでたうどんなどは、そばのコンタミネーション(混入)が生じうる。
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【本院の対応】
●肉の種類ごとの除去とする。
【手引き2017の見解(抜粋)】
〇肉アレルギーの患者は少なく、全ての獣肉(牛肉、豚肉、鶏肉など)の除去が必要になることは極めてまれである。
〇肉アレルギーがあっても肉エキス(だし)は食べられる場合が多い。
〇まれであるが、マダニの成分が咬傷(こうしょう)により感作され、交差反応*よる肉類アレルギーが報告されている。
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特定の食品に食物アレルギー症状が明確である場合やアレルゲンとなる対象食品が多種にわたる場合は、早期
に主治医にお申し出ください。状況をお伺いし、患者様個別の対応とさせていただきます。
施設認定など
日本病態栄養学会認定
「栄養管理・NST実施施設」
日本静脈経腸栄養学会認定
「栄養サポートチーム専門療法士
認定教育施設」