研究内容

環境中化学物質の発がんリスク評価および短期包括的評価モデルの開発
ヒトは日常生活の中で様々な低用量の環境発がん性物質に暴露されながら生活している。また、ヒト発がんの原因の多くは喫煙や医薬品・食品添加物などであることから、それら物質の安全性あるいはリスクを評価するために、発がん性あるいは毒性影響について詳細な情報が必要である。当教室ではこれまでにいくつかの新規合成あるいは天然由来の化学物質について、動物実験モデルを用いて種々のリスクを報告している。
また、我々はより短期間でかつ包括的にリスク評価可能なモデルの開発を行なっている。

有機ヒ素化合物による膀胱がん発生機序の解明
当教室ではこれまでに有機ヒ素化合物ジメチルアルシン酸のラット膀胱への発がん性を明らかにしている。しかし、その詳細な機序については不明である。我々は分析化学的手法によるジメチルアルシン酸の生体内代謝物質の検索、さらに病理組織学的解析の結果から真に発がんに寄与する物質を同定している。現在、同定した物質の遺伝毒性の有無、種々の影響およびその機序について動物実験系を用いて解析を行なっている。

臨床への取り組み
動物実験系における発がん機序の解析あるいは遺伝子・蛋白の網羅的解析によって得られた機能遺伝子・蛋白およびマーカー遺伝子・蛋白について、その有用性についてヒト臨床材料を用いた解析を行い、腫瘍発生過程における早期診断マーカーあるいは予後予測マーカーの開発に寄与するデータの蓄積を行なっている。

 当教室では毒性病理学を基盤にし、分子生物学および統計学的手法を駆使して
1)有機ヒ素化合物による膀胱がん発生機序の解明
2)環境中化学物質の発がんリスク評価および評価モデルの開発
3)腫瘍の浸潤・転移における分子機序の解明
について取り組んでいる。
研究室では病理組織学的解析、分析化学的解析および分子生物学的解析手法を用いてin vitroin vivo双方から研究を行なっている。