留学報告

平成19年卒 脊椎グループ 林和憲

大学院在籍中の、平成29年9月より11月までの3ヵ月間、インド・タミルナードゥ州コインバトール市にあるGanga Hospitalに留学して参りました。Ganga Hospitalは、年に15万人の外来患者、1万件を超える整形外科手術、うち2500件を超える脊椎外科手術件数を誇る病院です(日本国内でこの症例数に匹敵する病院はないと思います)。私はAO Spineの主催するfellowship制度も利用して、脊椎外科部門の留学生フェローとして滞在させて頂きました。

研修内容ですが、手術がほぼ毎日ありますので、原則毎日手術室に行きます。興味のある手術がない日は外来を見学します。月曜から土曜まで、朝は6時半から1日が始まります(インド人は朝早くから夜遅くまで働き、さらに土曜もweekdayと同じ通常業務をこなします)。手術室の患者入室は朝5時半!で、 6時半には麻酔導入も完了して一件目執刀開始です。脊椎後方手術に関しては、現地人フェロー(インド国内から集まる超精鋭の若手集団)が執刀を開始し、我々留学生軍団が手伝います。椎弓が展開されたら執刀医が登場し、固定術や後側彎の矯正などを行う、といった具合で1日5-15件の手術をこなしていきます。患者は、インド全土はもちろん、他の南アジア諸国より集まってくるので症例は多彩です。Cobb角で100度を超える先天性側弯、さらにはdiastematomyeliaという脊柱管内に骨の隔壁が出来て二分脊椎になっている例など、正直日本では見たこともないような難症例を経験できます。また、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎、脊損症例も多数あり、そのsurgical controlは非常に勉強になります。一方、手術設備としては、アジアで1台?しか導入されていない高性能術中CTナビゲーション、さらには各手術室にC-armと脊椎手術用顕微鏡があり、日本より充実している部分もありました。手術室の掲示板に、「インドで一番の技術・設備・患者ケアを持つ、世界に誇れる病院にしよう!」という張り紙があったのが印象的でした。この標示は、我々の手術室にも掲げなければなりません。

インドでの生活は、正直、戸惑う部分も多くあります。常宿としていた2つ星ホテルは、温水も使えトイレに紙があり快適でしたが、外では野犬がたむろし、道もあまり衛生的とはいえません。食事は毎食カレー味の何かを食べて、間欠的にお腹を下します(話のネタは他にもあります。興味があれば私に直接聞いて下さい)。しかし、仲良くなった現地人フェローがバイクで宿舎まで迎えに来てくれたり、飲み会に誘ってくれたり、滞在してみなければわからないインド人のHospitalityも感じることができました。

何を得て帰ってきたか、と聞かれれば、1にもちろん、surgical tips。3ヵ月、手術室漬けになって書いた日記とオペレコは合わせて84000字に上りました。これらは私の今後の手術において、血となり肉となると思います。さらに日本ではそれほど多くない脊椎感染症に関しても多くを学ぶことができました。2つ目には、今後世界のどこでも医師として滞在できるのではないかという自信、3つ目には世界各国の友人、を得たと思います。

今回、非常に貴重なインド留学経験となりました。しかし院生の間に留学を許可していただけた中村教授、不在の間、私の仕事を引き継ぎバックアップしてくれた大学院生を始め市大医局の先生方の支えがあって可能であった留学であったと思っています。今後は、私の経験を、医局に還元すべく精進して参ります。

~今後について~ 海外留学生活は続きますが、住む場所が変われば視点も変わり、施設を転々としている私にとってはちょっとした事でも刺激的です。帰国後は、私が今後留学を考える先生の何か役に立てるようになれればと考えております。

 最後になりましたが、留学の機会を与えて下さいました中村博亮教授をはじめ、同門の先生方、またお力添えいただきました多くの先生方にあらためて厚く御礼申し上げます。

  • Ganga Hospital外観Ganga Hospital外観
  • 手術に参加する私手術に参加する私
  • 現地人フェローとの交流現地人フェローとの交流

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