留学報告

平成17年卒 肩関節グループ 市川耕一

みなさんこんにちは。
2018年4月から米国フロリダ州にある、フロリダ大学に留学中の市川耕一です。
なぜフロリダ大学なのかというと、アウトドアとディズニーが趣味の私が勝手にフロリダに行きたくてそこの研究室と話をつけてしまったことが全ての始まりでした。これまで当教室と縁もゆかりもないフロリダ大学と話を進めたので、中村教授に報告した際には怒られるかなとも内心では思っていたのですが「フロリダか!いいところやないかー!俺も行きたいわ!頑張ってこいよ!しかしいいなー!!」と、怒られるどころか子供の修学旅行先を喜ぶ父親のように後押しして頂きました。医局長の星先生に報告に行った際には「頼むから帰ってきてよ!ホンマに帰ってきてよ!辛かったら3日で帰ってきてもいいで!」と、冗談交じりに笑いながら送り出していただきました。そんな、堅苦しさとは無縁な感じで留学を許可して頂いたのが私の留学生活の始まりになります。

さて、フロリダというと皆さんはどんな風景を想像されるでしょうか?碧い海から白波が打ち寄せる美しい海岸でしょうか?それとも世界のディズニーワールドでしょうか(笑)。私が御世話になっているフロリダ大学は、そんな美しい海岸からは50マイルほど、夢のディズニーワールドがあるオーランドからは100マイルほど離れた、フロリダ半島中央のGainsvilleという人口13万人ほどの小さな街にあります。住人の約半分の52000人がフロリダ大学の学生さんであり、その他の住人もかなりの割合でフロリダ大学関連の仕事をしているという、絵にかいたような大学中心の田舎町です。街を出れば全米でも有数の湿原が広がっており、ありとあらゆるところにアリゲーターが寝そべっている、よく言えば自然に囲まれた(悪く言えば何もない・・・)環境にあります。そんなGainsvilleにあるフロリダ大学ですが、全米でも有数の巨大な大学でその敷地はとてつもなく広く、徒歩ではとても移動できないので無料のバスか自家用車での移動になります。敷地内には湖があったり9万人の観客が収容できるアメリカンフットボールスタジアム(長居競技場より立派です)があったりと、あまりの規模に圧倒されます。湖にはフロリダ大学のシンボルであるアリゲーターも当然のように住んでおり、渡米した当時はおっかなびっくりしておりましたが、もう慣れてしまいました。

そんなワイルドなフロリダ大学での私の留学先は、Department of Mechanical and Aerospace Engineering, University of Floridaという医学部ではなく工学部の研究室です。工学部に行って何をしているのか?ということなのですが、専用のソフトやプログラムを組んで肩関節の動態解析を行っています。これまで膝関節や股関節では同様の解析は進んでいるのですが、私が専門とする肩関節ではまだまだ未踏の領域が多く、現在、世界中で色々な手法を用いて研究がすすめられています。私の留学先の研究室ではCTデータと透視画像を組み合わせ、生体内での関節動作を可視化することで、より詳細な関節動作を解析することを以前から行っております。研究室の長であるScott Banks博士の名前は関節の動作解析を勉強すれば一度は目にする名前で、これまでの実績は数え上げればきりがないくらいです。私が人物評をするのも恐縮なのですが非常にフランクな方で、第一印象は「ほんまにこの人がScott Banks?」というくらい、柔和に接してくれています。これまでも世界中から多数の留学生を受け入れてこられています。日本人の留学生も常に受け入れておられ、今は私の他には札幌医科大学から御一人(肩関節専門)、並びに福岡工業大学からも工学部の先生が御留学されています。また韓国からも肩専門の先生が来られており、さらに大学生、大学院生も多国籍でアメリカ中は勿論、アジアやアフリカからも学生が集まってきています。Scottの人柄によるところが大きいと思いますが、研究室も和気あいあいとしており、急にやってきた英語もろくにしゃべれないおっさんである私に、一回り以上若い学生や大学院生たちが一生懸命、色々なことを教えてくれています。ちなみに彼らはとんでもなく優秀な上に、非常にgentle!! おかげで良し悪しはさておき、完全にごまめとしての地位を確立してぬくぬくとした環境で私は過ごしています。また、彼ら自身の医学に関する興味も非常に強く、実際の解剖や手術の内容に関しての質問をされる際には、なんとか医者の片鱗を見せることができるように精一杯の背伸びをしながら、お互いにとってよいディスカッションを常にできるようにしています。

工学部留学中ではありますが、当研究室では整形外科との共同研究や企業との共同研究も多数あるために、大学病院に行ってカンファレンスに出たり、手術の見学をしたりしています。その際に学生が臨床研究をするのでそれを手伝ったり(日本ではちょっと考えられないことですが彼らが自分で倫理委員会の書類を作っていました)、若い先生のプレゼンを聞いてコメントをしたり、そのようなお手伝いもしています。また、他大学からも新しい知識の講演に来て頂いたりと、活発に色々な分野の人々と交流することが出来ています。 海外での生活は日本とは違うことが多くて当たり前ですし、実際に困ったことも多々ありますが、幸い私の住んでいるGainsvilleでは人種差別もさほどなく(あるかもしれませんが露骨にされたことはありません。むしろ日本人は色々な場面で喜ばれるようです)、困った際には現地のアメリカ人や日本人の方々に色々なことを助けてもらっています。まだ3ヶ月しか経過していないので、留学すれば何が得られるとか、留学したことを日本に帰ればどのように生かせる、といったようなことは現段階では何一つお伝えすることはできませんが、それは他の先生方の報告にお任せしたいと思います。私も1年経過すればそれなりに話をできるようになるかと思いますので、またご質問がありましたら帰国後に気兼ねなく声をかけてください。誰よりも日焼けしてうろうろしている人物がいれば、きっと私です(笑)。

  • カンファレンス中。私はカメラマンですカンファレンス中。私はカメラマンです。
  • Denver大学の先生がいらした際に行われた、Scott宅でのホームパーティー。整形外科のThomas Wright先生もお越しになられました。Denver大学の先生がいらした際に行われた、Scott宅でのホームパーティー。整形外科のThomas Wright先生もお越しになられました。
  • 大学正面入り口。多分、一番古い入口の一つです。大学正面入り口。多分、一番古い入口の一つです。
  • 大学のアメリカンフットボール場。9万人収容!!大学のアメリカンフットボール場。9万人収容!!"
  • アリゲーターは身近な存在です。アリゲーターは身近な存在です。
  • ディズニーワールドは主たるの研究テーマです。ディズニーワールドは主たるの研究テーマです。

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