センター長 挨拶

疲労クリニカルセンター長
大阪市立大学医学部教授

稲葉 雅章

大阪市立大学医学部附属病院において、2004年12月より試行し、2005年5月12日正式に世界に先駆けて国内施設で最初の「疲労クリニカルセンター」を立ち上げ、「慢性疲労外来」の運用を行うことになりました。 「疲労」を学術的に研究し、診療するという全く新しい試みであります。

「慢性疲労外来」は2004年度の文部科学省による21世紀COEプログラムに採択された大阪市立大学大学院医学研究科のプロジェクトである「疲労克服研究教育拠点の形成」の一環として開設されました。COE拠点リーダーであるシステム神経科学の渡邊恭良教授を中心に、医学研究科全体で取り込む体制を整えました。

すでに文部科学省による21世紀COEプログラムは2009年3月で終了いたしましたが、大阪市立大学医学研究科として社会からの大いなる要請にお応えしてさらに発展的に当センターの運営を継続し、慢性疲労さらには疲労のメカニズムの解明、治療法の開発に努力しております。2009年度からは、当センターの担当医であります、倉恒弘彦(関西福祉科学大学教授・当大学客員教授)を代表とする厚生労働省科学研究費補助金「自律神経異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労評価方法の確立と診断指針の作成」研究班が立ち上がり、診断基準や治療のための研究にも一層の努力をしております。
前任者の西澤良記(現本学理事長・学長)の後任として、臨床部門での責任者として私がセンター長を拝命することになりました。想像医療センターの廣橋一裕教授、神経精神医学の切池信夫教授をはじめ、附属病院の全面的な協力連携体制で診療を行っております。

なお、当外来において「疲労ラボ」を併設し、多方面からの疲労度の測定評価を行い、慢性疲労の診断・治療の学術的なサポートを行っております。現在は主として慢性疲労症候群の診断・治療を行っておりますが、今後は疾患に付随した疲労や様々な難治性疲労についても診療対象に取り組むことを目指しております。

今後も病診連携・病病連携をもとにしながら診療と研究・教育の場として活動いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

倉恒客員教授 挨拶

関西福祉科学大学教授
大阪市立大学医学部客員教授
厚生労働省「慢性疲労症候群の病因病態の解明と
画期的診断・治療法の開発」
研究班

代表研究者 倉恒 弘彦

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome; CFS)とは、健康に生活していた人が風邪などに罹患したことがきっかけとなり、それ以降原因不明の強い全身倦怠感、微熱、頭痛、筋肉痛、精神・神経症状等が長期に続いて健全な生活が送れなくなるという病態であり、CDC(米国疾病対策センター)により1988年に提唱された比較的新しい疾患概念です。その病因としては、これまでウイルス感染症説、内分泌異常説、免疫異常説、代謝異常説、自律神経失調症説などさまざまな学説が報告されてきました。

私たちは、1991年より厚生省CFS研究班を組織してCFSの病因・病態の解明を目指した臨床研究を進めてきましたところ、CFS患者にみられる種々の異常は独立して存在しているのではなく、お互いに関連してカスケードを形成していることを見出してきました。そこで、「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその制御に関する研究」(文部科学省:生活者ニーズ対応研究、1999年~2004年)の中でCFSに陥るメカニズム(仮説)を提唱し、多くの共同研究者と共に包括的な疲労研究を進めてきましたところ、これまでは雲をつかむような存在であったCFSの病因、病態がかなり明らかになってきています。

その後、この研究成果は文部科学省による21世紀COEプログラム「疲労克服研究教育拠点の形成」(2004年~2009年、大阪市立大学医学研究科)として受け継がれ、国公立の施設では初めて「疲労」を診療の対象とする疲労クリニカルセンターを開設することができました。これまでに疲労を主訴として全国から1万人近くの方が外来を受診してきておられます。

尚、現在の疲労診断基準は症状に基づく操作的診断法であり、客観性に欠けるため多くの医師からの信頼を得ることが出来ていません。このため、各地の疲労診療はうまく稼動しておらず、数百万人に及ぶ慢性的な疲労で苦しむ患者さんが早急な疲労診療体制の見直しを切望しています。

そこで、私たち厚生労働省における疲労研究班の必要性を申請してきましたところ、幸い2009年度には「自律神経異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労評価法の確立と診断指針の作成」を目的とした厚生労働省の疲労研究班(代表研究者:倉恒弘彦)が採択されました。この研究班では、日本において疲労の研究や診療を行っている代表的な医師、研究者が集まり、これまでに見出されてきたいくつかの疲労バイオマーカーを用いて疲労病態を評価し、疲労の全体像を客観的に評価できる診断法を策定することを目的にしています。
日本のどこにおられても、プライマリケアを担っている医療機関により客観的な疲労評価法により疲労病態が評価・診断され、適切な治療がおこなわれることを心より願っております。