大阪市立大学薬理学教室

研究内容  現在の主なテーマ

生体の低酸素ストレス応答に関する研究
概要

私たちは、常に多量の酸素を体内に取り込んでいますが、生体内局所における酸素分圧は各組織により異なり、また状況により常に変動しています。 生体内で、細胞の酸素供給が低下、あるいは酸素需要が増加した場合に低酸素環境が形成されます。酸素は細胞内において、エネルギー産生、殺菌など 異物や生体不要物の処理、細胞内シグナル伝達などに利用され、ストレスなどの外部環境の制御を通じて、ホメオスタシスの維持に寄与しています。 虚血性疾患、炎症性疾患や代謝性疾患を含む多くの疾患において、この生体応答が破綻することが病態の形成と進展に関与していることが考えられていますが、 詳細な分子機序の解明とその臨床応用は今後の課題となっています。私たちはこの問題点について、臨床応用を見据えた、試験管レベルから動物モデル実験までの研究を展開しています。

腫瘍のストレス環境適応機構の解析
概要

腫瘍組織が形成する微小環境は低酸素、低栄養であると言われ、がん細胞は、これらの環境に対するストレス耐性能を亢進させることで、 過酷なストレス環境に適応していると言われています。このストレス耐性能の亢進は、腫瘍の悪性化の一因とも言われています。 そこで、ストレス応答タンパク質HSP70の病態生理機能の解明を目指し、膵がん、胃がん、前立腺がん細胞を用いて、ノックアウト細胞の作製、 プロテオーム解析といった分子生物学的手法を基盤としたin vitro、in vivoレベルでの解析を行っています。また、抗がん剤耐性がん細胞を樹立し、 その表現型や耐性の分子機序を明らかにすることで、新たな創薬標的の探索を展開しています。

循環代謝疾患に伴う組織再構築の分子機序の研究と臨床応用
概要

生体は、炎症性疾患をはじめとする様々な病態において、細胞障害や外部ストレスに対する応答として、組織の修復や再構築を行います。 その過程では、組織を構築する実質細胞と間質細胞の種類や性質、周囲の細胞間との相互作用が変わり、その配置が変化します。 一端大きく変化を起こすと組織中に線維化などを生じて組織機能に障害を起こすこともあります。基本的な組織学的変化は普遍的で、 これまで多くの研究者によって研究が進められましたが、未だ、進行した病態に対して効果的な治療法は確立されていません。 私たちは再生医療研究の一環として、組織を構成する細胞群がどのように組織再構築に関わるかについて、その分子機序を明らかにすることを 目指しています。

腫瘍内血管の正常化と治療応用
概要

がんの科学療法において、様々な抗がん剤が日進月歩で開発され、治療成績が向上しています。これまで多くの抗がん剤の標的はがん細胞 そのものでしたが、近年、がん細胞が存在している環境が、がんを育む場であり、この環境を変えることでその増殖を抑制するという、 がんの生育環境を治療標的とする考え方があります。これまで私たちが行ってきた血管生物学研究の成果をもとに、がん組織を栄養する血管に注目し、 組織内血管を制御することにより、がん組織への栄養・酸素供給および、抗がん剤の効率的な送達を制御することを目的とし、血管から見たがん組織、 がん病態というアプローチにより、新たながん治療法の開発を目指した研究をおこなっています。 

新規血中微量タンパク質同定法によるバイオマーカーの創出
概要

血中に存在する微量タンパク質は、腫瘍マーカー、薬効評価マーカーとして有用ですが、病勢を反映したバイオマーカー開発は困難を極めます。 これは血中の微量タンパク質の単離・同定法の技術的な限界に起因しています。私たちは、腫瘍が放出するHSP70が、ペプチド複合体として細胞外 に放出されていることに着目し、HSP70複合体の効率的な捕捉・同定技術を応用した、血中微量タンパク質同定法を新たに作出しました。 現在、本学腫瘍外科学と共同で、膵がん患者血清を使用し、膵がんの腫瘍マーカーの開発を行っています。

腫瘍モデル中のがん幹細胞の動態解析と制御機構の解明
概要

腫瘍細胞は多様な細胞から構成されており、それぞれの内的/外的変化への応答性が異なることから薬剤耐性や再発の原因になるなど、 治療上の問題点となり得ることが実験的に分かってきていますが、この細胞の不均質性(heterogeneity)の実態やその制御のメカニズムは、 まだよく分かっていません。これまでに、「がん幹細胞」と呼ばれる細胞群が不均質性を生み出し、また腫瘍形成において中心的役割を 果たしていることが提唱されています。私たちは、肺がん細胞をはじめとした動物モデルを用い、生体内でがん幹細胞様の性質を示す細胞を検索し、 主に生体内での環境変化への適応や、薬剤への応答性、さらには転移への寄与まで含めた包括的な解析を進めています。

研究成果

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

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