代謝は、英語でmetabolismと呼びます。代謝は、もう少し正確に言うと、新陳代謝です。つまり、古いものを捨てて、新しいものを取り込む、もしくは、古いものを壊して、新しく作り直すことです。別の観点から考えると、代謝には、エネルギーを消費する代謝と、エネルギーを産生する代謝があります。前者を同化(anabolism)、後者を異化(catabolism)と呼びます。
 具体例としては、アミノ酸を組み合わせて蛋白を作る場合を同化、蛋白を分解してアミノ酸を作る場合を異化と呼びます。原則としては、分子量が小さいものから大きいものを作る場合を同化、その逆を異化と呼びますが、実際には区別できない場合もあり、両方がいっぺんに起こっている場合もあります。

ダイナミズムと恒常性(dynamism and homeostasis)

 人間の体は、常に入れ替わっています。物質的には、数日で大半が入れ替わっています。もちろん、全てではなく、入れ替わりの激しい組織と緩慢な組織があります。一方で、見た目上はほとんど変わったようには見えません。「ゆく川の流れは絶えずして、もとの川にあらず」です。我々の体は、常に入れ替わることによって恒常性を保っています。これを物質的に支えているのが、代謝の役割の一つとも言えます。「フィードバック」という仕組みもあります。フィードバックにはポジティブフィードバックとネガティブフィードバックがあります。ポジティブフィードバックとは、一旦反応が起こり始めると、それをさらに加速させるフィードバックです。これによって、ダイナミズムが生まれます。ネガティブフィードバックとは、過剰にならないように、一定程度に変化を抑制するフィードバックです。これによって、恒常性が保たれます。これらのフィードバックがよく知られているのが、女性ホルモンです。
 女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という二種類のホルモンがあります。視床下部から、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモン (GnRH)というホルモンが分泌され、脳の下垂体を刺激しゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促します。ゴナドトロピンは卵胞刺激ホルモン(FSH)とも呼ばれます。FSHとLHの働きにより、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されます。血中のエストロゲンとプロゲステロンの濃度が上昇すると、視床下部や下垂体に抑制をかけることで、エストロゲンとプロゲステロンの濃度を抑制します。逆に、エストロゲンとプロゲステロンの濃度が低下すると、抑制が外れ、エストロゲンとプロゲステロンの濃度を上昇させようとします。このようにして、エストロゲンとプロゲステロンの濃度を一定に保とうとします。  一方、血中のエストロゲンが一定以上継続すると、LHが急激に放出され、排卵が誘発されます。これがポジティブフィードバックで、排卵を誘発するためのLHの上昇をLHサージと呼びます。あえて、ある条件下でのみ恒常性を崩すことで、特殊な現象を起こすことができます。つまり、恒常性のみでは、人類が存続できないということになります。

復元力と脆弱性(resilience and vlunerability)

 生物は、ダイヤモンドのような頑強性をもっていませんが、柔軟性や可塑性があり、多少の傷であれば、復元することが可能です。特に、小児は復元力が高いことが知られています。例えば骨。骨は成長につれて徐々に硬く丈夫になる一方で、柔軟性や可塑性が失われます。なお、レジリエンスという言葉は、身体に限ったことではなく、精神的なものにも用いられます。

代謝各論

 代謝によって作られる主な化合物は、炭水化物、脂質、蛋白質、核酸です。