留学報告

平成16年卒 寺井彰三郎

2018年4月よりドイツに臨床留学をしている寺井彰三郎です。私は現在ミュンヘンから北東に100キロ程離れたところにあるシュトラウビングという人口4.7万人の小都市に住んでおります。ドイツは移民の数が現在世界で一番多く、そのためかこの小都市でもアフリカ系や中東系をよく見かけます(東欧系も非常に多いですが外見上は分かりません)。しかしアジア系はかなり少なく未だにこの町で日本人に出会ったことはありません。

私が勤務しているSporthopaedicumという整形外科専門クリニックはこのシュトラウビングにあり、ここには国内外から多くのスポーツ外傷患者が紹介されて来ます。ハンブルクのFCザンクトパウリに所属しているサッカーの宮市亮選手は2017年に当院で前十字靭帯(ACL)再建術を施行され、その後の活躍はご存知の通りです。当院にはChefarztと呼ばれるスタッフが10名おり、膝・股・肩肘・脊椎・手・足に分かれて診療にあたっています。それぞれのChefarztは、クリニックで外来し、手術は近隣の病院や医療施設のオペ室を借りて行っています。私はACL再建術で有名なProf. Thore Zantopのもとでフェローを開始しました。日本で最もACL再建術を行っている関東労災病院とほぼ同じ件数をProf. Zantop一人で執刀し私はそこで多くの手技を学ぶことができました。

ドイツの医療を見て感じたのはその徹底した効率化です。執刀医の技術も非常に高いのですがオペナース、麻酔医、掃除のおばちゃんまでチームワークがすばらしくオペの回転が早いため多くの手術症例をこなすことが可能となっています。日本のきめ細かい医療もいい点がたくさんあるのでどちらの方がいいというわけではなく一長一短です。最終的に私はそれらの長所を融合させた形を日本で実現できればと考えております。

ドイツの生活について、治安に関しては日本と同様安全で物価に関しては平均すると日本より少し安い印象です。ただ、近くに日本料理屋やおいしい中華料理屋が無いのが残念です(大きい街に行けばあります。)気候は夏は湿度が低いため過ごしやすく、冬は寒いですがどの建物もセントラルヒーティングを24時間稼働しているためそれほどつらくはありません。日本の猛暑や台風、地震のニュースを見るたびに申し訳ない気持ちになります。

ドイツ臨床留学のいいところは、アメリカと違ってその国の医師免許を持っていなくても執刀医の裁量で手術を執刀することができて外科医としてスキルアップできるところだと思います。また新しい医療器具やデバイスの開発も盛んなのでハイボリュームセンターにいれば試作品に多く触れることも出来ます。それに治安もよくてヨーロッパの文化に触れる機会も多いので私は長期滞在することにしました。

フェローという形でSporthopaedicumに来た私ですが現在の環境が自分にとって有意義であることと家族がドイツでの生活を気に入っていることよりドイツ語と医療面接の試験をパスし、医師免許(労働許可)を取得しました。ドイツは医師不足なので外国人医師の受け入れに比較的寛容で今後も増えると思われます。

最後に、今回の臨床留学にあたりドイツへ快く送り出し長期滞在を許可していただいた中村教授および留学支援制度によって生活費をサポートしてくれた医局に厚く御礼申し上げます。

  • 学会場がサッカースタジアムのVIPルーム学会場がサッカースタジアムのVIPルーム
  • ACL再建術を執刀する私ACL再建術を執刀する私

ページ先頭へ