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実習生へ贈る言葉

教員は、学生に「智・仁・勇」の全てを期待している

 細菌学で、皆さんを本気で落とそうと、思っていると思いますか。実は少し思っています。でも、教員は落とすために授業をしているわけではありません。なぜなら、落とす方が面倒だから。でも、落とした方がその学生のためになる、ということであれば、落とします。中間アンケートで、評価方法を明確にした方がよいというのが過半数、というよりも90%以上でした。あえて評価方法をあいまいにしている教科もあると思います。なぜかというと、何とかして、「上げたい」ということが理由の一つです。でも、皆さんは評価を明確にした方がよいという。おそらく、明確にしてほしい学生は、自分は安全圏にいる学生なのかもしれません。
 智仁勇という素晴らしい理念があります。どういう意味か分かりますか?実習は単に技術を身につければよい、知識がつけばよいということではない。真面目に取り組んでいるか、きちんとコミュニケーションが取れるか、ということも見ています。今回、注意された学生も何人かいます。また、注意されてはいないけれども、こっそり減点している学生もいます。加点した人もいますが。携帯持ってきてばれてないと思う人。こっそり減点しています。 声が小さいといわれたら、うるさいといわれるくらい大きな声で話しなさい。5分遅れたら、他人の2倍働きなさい。そんなことも知らんのか、といわれたら、そこまで勉強したのか、といわれるくらい勉強しなさい。それくらいでちょうどいい。

あらゆる意味で成長を助けたい

 皆さん、大学に入ってから、高校時代よりも成長したと思う人?皆さん高校時代成績優秀な方が多いですよね。おそらく私なんぞ足元に及ばないくらい。なのに、皆さんに教えているなんて、不思議です。本当はあまり厳しくしたくないんです。学生だった頃の自分を思い出すと恥ずかしいから。でも、教えるという立場上仕方がありません。皆さんのために、嫌われてでも皆さんの成長を助けたい。
 成長といえば、先日6年生が教室に来ました。最初に担当した学年ですので思い入れがありますが、立派になったと感心しました。なぜだと思いますか。きちんと挨拶できていた。元々優秀な学生だったのかもしれませんが、全員教室に来た時に学年と名前を名乗った。これがどれくらい素晴らしいことだと思いますか。3年生が、何回か私の部屋に来ました。最初に自分の名前を名乗った人が何人いると思いますか。最初は皆無でした。そのうち、金子のところに行くときには学年と名前を言うこと、というのが定着したようですが、社会人として当然のことですよね。勉強だけでなく、社会人としても成長を期待しています。

表面的な理解にとどまってはいけない

 全般的に、細菌学の講義が分かりやすかった、と思う人?分かりにくかったと思う人。私も学生時代がありましたが、まず、大学に入って、大学の教育で思ったこと、なんだと思いますか。教えるのが下手な先生が多いな、というのが印象です。今教える立場になって、教えることが難しいのを痛感していますが、皆さんもご存知の通り、教えるのが下手な教員が多い。でも、それを理由に勉強をしない、という選択は大学ではありません。大学は、教えることを専門にしている教員はいません。だから下手くそでもいいという気はありませんが、そんな教え方であっても、理解できるような学生を採用しているのです。皆さんには、そのように期待されているのです。もし私の講義が簡単すぎると思ったら、私の講義は間違いだった、皆さんのせっかくの成長のチャンスを奪った、ということかもしれません。
 最近は、研究よりも教育の方にかなり傾倒してしまっていますが、それなりに楽しんでいます。学生時代、哲学とか法学とか勉強して、分からないなりに面白いな、と思っていました。それがなぜなのか、最近までよく分からなかったのですが、最近読んだ本に書かれていることを読んで気づきました。「これまでの自分の理解の前提となる枠組みや価値観を解体するような、本当にイノベイティブな授業は、非常に理解困難で、これまでの自分を否定されるかのような苦しいものになる」と書かれていました。それで、なるほど、と思ったんです。つまり、哲学や法学を理解できた先にある自分を想像して、成長できた自分を想像して楽しんでいたんだろうな、と。
 皆さん、大学に入ってから大学の勉強に苦しんできたと思います。でもそこから逃げずに、苦しんだ先に新たな成長した自分がいることを想像してください。私自身、学生時代細菌学が苦手で、教える時にはできるだけ分かりやすく教えようとしました。でも、一方でそれだけでよいのだろうか、という葛藤もあります。先ほどいったように、理解に苦しむことを苦労して理解できるようになって初めて成長できるのだろうと。もちろん、分かり易いことをわざわざ分かりにくくするつもりはありませんが、たまにはもう少し難しいこともやってもよかったかな、と思います。例えば、こんな問題覚えていますか。ブドウ球菌で、コアグラーゼが陽性なら黄色ブドウ球菌と同定できる、○?×?
 授業中は、コアグラーゼ陽性は黄色ブドウ球菌といいました。でも、それはあえて単純化するために、例外を除いたんです。でも、実際には、そうではない。最初に理解する時に、ある程度単純化して考えることは重要です。しかし、例外はつきものです。例外のない場合も例外的にはありますが、多くの場合、原則と例外があります。皆さん大学生ですので、最後は例外も含めてきっちり勉強しましょうね。物事はそれほど単純ではない、ということ。
 細菌学の詳細をおぼえてほしいと思っているわけではありません。詳細ではなくて、考え方を伝えたい。細菌学を学んでほしいではなく、細菌学に学んでほしい。たとえば、非結核性抗酸菌の分類法にラニョン分類というのがあります。別に、ラニョン分類という言葉を覚えてほしいわけではありません。考え方を知ってほしい。非結核性抗酸菌として一まとめとして、全て同じではないのです。菌種に行く前に、発育の仕方や色のつき方で昔の人は分類したんだな、とか。もし、皆さんが、なにかの病気を見つけたり、病態を見つけたときに、分類の仕方を勉強することは悪くないと思います。

最後に

 皆さんの成長を心から応援しています。細菌学を再履修しなくて済むことをお祈り申し上げます。
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