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HOME > 診断と治療 > グリオーマ疾患について 目次 > グリオーマ疾患について4

グリオーマ疾患について

4) カルムスチンによるグリオーマの再発防止

カルムスチンは、1955年に米国で見出されたニトロソウレア系アルキル化剤という薬で、脳腫瘍患者の化学療法に用いられるお薬です。
その働きは、腫瘍細胞内のDNAを異常結合させて、核酸合成を阻害することで、細胞周期の停止やアポトーシス(細胞の自死)という形で腫瘍の増殖を抑制します(抗腫瘍効果)。
ただ、この薬で脳腫瘍細胞を死滅させるためには高用量で使用する必要があるため、骨髄抑制や肺毒性などの重篤な全身性の副作用が懸念されてきました。また薬効の持続時間(血中半減期)が約15分と短いことも、この薬の使いにくいところでした。
しかし、近年、この薬を特殊な樹脂に包んで、脳内に留置する方法が考案され、良い成績を残しています。
腫瘍摘出手術でできた脳内の空洞に、カルムスチンを封入したカプセルのような脳内留置用徐放剤(BCNU wafer)を留置しておくと、体の中の水分によって、徐々にカプセルが加水分解され、カルムスチンが継続的に適量ずつ放出されるという仕組みです。
2015年Chowdharyらは、BCNU waferが神経膠芽腫を含めた悪性度(グレード)の高いグリオーマに対して有効性を持つという論文を発表しました。(Survival outcomes and safety of carmustine wafers in the treatment of high-grade gliomas: a meta-analysis. J Neurooncol. 2015 Apr;122(2):367-82.)

当院でも術中迅速診断で悪性度の高いグリオーマが疑われた症例にはBCNU waferの留置を施行しています。

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悪性度が高いグリオーマ(HGG)や膠芽腫(GBM)にBCNU waferを用いた場合の生存率