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芽を出す細菌
春ですね。新生活が始まる方も少なくないでしょう。動物たちは冬篭りから目覚め、植物たちは芽を出し、花を咲かせる、そんなメルヘンチックな想像をしてしまいますね。
というわけで、今回は、芽を出す菌をご紹介します。芽胞(がほう)と呼ばれる特殊な状態になる菌がいて、そのような細菌を芽胞形成菌と呼んでいます(図1)。
「胞」というのは、簡単に言うと「卵」で、「芽胞」というのは、芽を出す前の卵、といった意味になります。芽胞から、通常の状態に戻ることを「発芽」と呼んでいます。
植物と違って、春に芽を出すわけではありません。厳しい環境になると芽胞を形成し、状況が戻ると発芽します。芽胞形成中は、冬眠している熊のようにカロリー消費を抑えます。
熊の場合、カロリーを消費しすぎると、厳しい冬を乗り切れませんからね。菌も同じような作戦で、厳しい環境で何とか生き延びようとします。
そして、周囲の環境が発育に適した状態になると発芽し、再び活発に発育を始めます。厳しい環境の具体例としては、熱があります。一般的な菌は、
70℃くらいで死滅してしまいますが、芽胞は100℃で茹でても耐え忍ぶことかできます。
さて、どのような菌が芽胞を形成するかというと、大きく2種類に分けることができます。一つはバチルス(Bacillus)属で、もう一つはクロストリジウム
(Clostridium)属です。そんな難しい菌の名前を覚える必要はありませんが、納豆菌や炭疽菌は知っている人も多いでしょう。
納豆菌や炭疽菌は、それぞれBacillus subtilis var. nattoとBacillus anthracis
というのが正式名称で、どちらもバチルス属の仲間です。また、お腹を壊した時に処方される宮入(ミヤリ)菌は、Clostridium butyricum MIYARI株で、
クロストリジウムの仲間です。芽胞形成菌の中には、炭疽菌のように恐ろしい菌もいれば、納豆菌や宮入菌のように体に優しい菌もいるんですね。